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第121話 決断の時

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 今更だが、俺とカレンは城に入ってから勇者と呼ばれていた事にあれっ?と思う。

 食事の時間まで少しあったので、あてがわれた客間でお茶タイムにしていた。

「なあイリーヌ。なんで俺とカレンは勇者と呼ばれていたんだ?」

「主殿・・・それを今聞くのですか?」

「お、教えて欲しい!」

「タワーを攻略した者を勇者と呼ぶのです。パーティーリーダーとサブリーダーのアロンとカレンが代表となっているだけで、私もトルネアも勇者と呼ばれている」

「成る程な」

 そんな話をしながら時間を潰していた。

 夕食は王族用の食堂に招かれており、領主の所での食事もそうだが、豪華なのは豪華で、フルコースだ。

 しかし、味付けが薄い。
 特筆するのは、コース料理にも関わらず全てが並んでいた。
 人数分より1人分多く、皆が適当に座り、最後の1席に見慣れぬおどおどした中年男性が座る。

 そして1礼すると、急いで食べて行く。

 唖然とするしかなかったが、イリーヌに教えられる。

「彼は毒見係だ。もし死ねば家族に高額な保証金が入るし、期間は1週間。勤め上げると報酬が貰えるのだ。席次が決まっていないのは毒殺を警戒で、その日の朝母君が決められ、その場で皆に伝えているのだそうだ。だから確実に毒殺をするならば全員の食事に毒を入れざるを得ないのだ」

 王族ってのも大変だなあと思う。
 この国も最近あまり明るい話がなかった。
 だから英雄が必要だと言われ、納得する。
 今まで自分の事と、パーティーの事にしか気が回らず、他の事に注意を向ける余裕がなく、この世界の国や大陸といった地理について気にする事がなかった。

 これまではタワーの事や、今後の事も付与について考えるだけで済んだ。
 これまでも政治に無関心で、総理大臣って誰?
 誰がやっても変わらないよね!
 そういった感じで無関心だった。

 だが、この国の国王と深く関わってしまった。
 俺TUEE出来て女の子にモテたらそれで良いと思っていたのに、場合によっては見知らぬ女に子種を注いでくれと言われて女に追い回されたりつきまとわれたりもする。

 断ったが、前国王妃の再婚相手になるところだった。
 綺麗で色気もありたおやかで淑女の鑑なのだが、国王の義父となってしまう。

 色々な感情が湧き上がったが、モヤモヤしている事を片付けたかった。
 おもむろに立ち上がりお願いと宣言をする事にした。

「突然すみません。今日ずっとモヤモヤしていたのですが、お願いがあります」
 
 不思議そうに皆が注目している。

「コアを使い異世界から誰かを召喚するのをやめてほしいんだ。その人の人生と運命が大きく変わる。突然これまでと違う所に連れてこられて辛いはずだ」

「しかし、もう我々は異世界人に頼らざるを得ないのです。求められればこの身を性奴隷として差し出したり、女性であればこの子の妻とする事も致します。それ程必要としているのです」

 俺は手を上げて遮った。

「因みに前国王様は何人召喚したのですか?」

「異世界召喚は5人となります」

 カレンと俺は驚きの表情を浮かべる。

「その人達の生死は分かるのですか?」

「残念ながら分かりません。成功したのかさえもです。誰1人として現れるはずの魔法陣に姿はなかったのです」

 もう1度カレンの顔を見たが、彼女は頷き、俺に全てを託してくれたのだった。
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