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第98話 あそこを食いちぎられた!

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 俺はカレンと並んでおり先頭でボス部屋へ足を踏み入れた。
 その途端背後から誰かに突っ込まれ俺とカレンは部屋の中央付近まで吹き飛ばされた。

 カレンは態勢を整えようとミナモンの石付きを地面に擦り付けながら踏ん張り、中央付近で止まった。

 俺はと言うと踏み留まれずに転げてしまい、無様な姿を晒した。

「イテテテ!いったいなんなんだよ!」

 俺は悪態をつきつつ起き上がり、騒ぎのする方を向いた。
 それは入って来たドアの方だ。

 自分の目を疑った。
 2人が倒れ、ボスと戦っている。
 倒れているのはルシアスとトルネアだ。
 体が分断されており、どう見ても死んでいる。
 現実味が薄い。
 いや、信じたくない光景を受け入れられず、現実逃避したのだと思う。

 そこにいたのはヒュドラだった。
 体高10m程で9つの頭を持つ化け物だ。
 俺ははっとなり、カレンの所に行く。

 どう見てもまともに戦って今の俺達に勝ち目はない。

「カレン、時間を稼ぐからアルマゲドンを。俺達が倒れても助けに来るな。君が生きていさえすれば皆助かる」

「無理しないでね」

 カレンは俺にキスをした。

 俺は名残惜しいがカレンから離れると、左腕を掲げてヒュドラに斬り掛かった。

 テレポートを使い首の付根の1つに転移して首を刎ねる。

 ギャオオオオオオオオオオー!

 他の首が俺に敵意を向けて来た。
 俺を噛もうと襲い掛かって来たがテレポートで離脱し、ミリアの所に行く。

 シルフィスが必死に魔法の詠唱をしている。

 最上位の魔法を放とうとしているのだ。

 ヘイトがシルフィスに向いた。
 正確にはシルフィスにも向いただ。
 ミリアは2つの首の攻撃を必死に躱している。

 飛び跳ねたり、横っ飛びになったり。
 ぎりぎりで躱しているが、ミリアは大丈夫だろう。

 また、イリーヌは既に3本の首と戦っていた。
 シルフィスの方に向かった首が頭に迫っていた。
 俺はトルネアとルシアスの事を見ないようにした。

 ミリアとイリーヌは必死に戦っているが、今のレベルだとジリ貧だ。

 俺はシルフィスが頭を噛まれる寸前に彼女の所にテレポートで転移し、シルフィスを抱えて壁よりに転移した。

 そして俺は再び転移・・・出来なかった。

 今のレベルでのスキル使用回数制限を超えてしまったようだ。
 検証していなかった。
 甘かった・・・

「うおおおおおおおおお!」

 俺は叫びながらヒュドラに向かう。

 ミリアが吹き飛ばされた。
 右腕がない。
 グハッ!と唸り倒れ込んでしまい、起き上がれないようだ。

 全ての首がイリーヌに襲い掛かる。
 流石のイリーヌもひとたまりもなく、脚を食われた。

「倒れなさい!ハリケーンストライク!」

 無数の風の刃がヒュドラに襲い掛かり、半分の首を切断した。
 俺はイリーヌを壁際に投げ飛ばすとフラガラッハで必死に戦った。
 アルマゲドンは発動に時間が掛かる。
 その時間が永遠とも思え、早く早くと心の中で叫ぶ。

 そしてイリーヌは気絶したようだ。

 シルフィスが初級と中級魔法で必死にサポートと言うより援護してくれている。
 俺は残り2本の首と戦っていたが、片腕では思うように戦えない。
 左肘より先を持っていかれているからだ。

 そして・・・下腹部を食いちぎられ、下半身が酷い有様だ。そう、脚は皮1枚でくっついているだけだった。
 もう自力では動けない。

「おいおい、未使用のまま大事な所を持っていくなよ」

 最後の力を振り絞りテレポートを試みると出来た。

 奴の頭の上に転移し、自由落下でフラガラッハを叩き込む。
 俺はボロ雑巾の如く床に叩きつけられた。

「死になさい!アルマゲドン!」

 それが俺が聞いた最後の言葉で、己の血溜まりに沈んでブラックアウトしたのだった。
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