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第77話 領主さんは困った人だった

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 候爵様は灰皿に置かれた葉が燃えていくのに萌えており、その顔の崩れ方を俺はほっこりと見ていた。

「すごいぞ!見たか?見たよな?魔法が使えたんだぞ!おおおおおお!」

 挙句の果てにカノープスさんの手を取りくるくると回り出したのだ。

 流石に服を整えたメイドさんが止めに入る。

「旦那様、そちらの方はともかく、冒険者の方が呆れ、いや、驚かれております。ソロソロ・・・止めなさい!」

 なんとメイドさんは止める気配のない候爵様に止めなさいと言ったんだよ。
 流石に唖然となったが、候爵様はハッとなったように手を離しメイドに向き直った。

「ご、ごめんよ!わ、分かるよね?嬉しくてつい・・・フ、フィールちゃん?怒っている?」

 メイドさんはまるでゴミを見るような冷たい目で見ていた。

 カノープスさんは特に驚いた様子もなく見守っていた。

「私が怒っているのは、私の胸を他の男に触らせて興奮している変態にです。言っておきますが、もう他の男に抱かれるのは嫌ですからね!」

 チラッと候爵様の股間が膨らんでいるのを確認した。

 どうやら悪い人じゃないけど、困った人のようだ。
 このメイドさんは候爵様のお気に入りの愛人か何かで、寝取らせて悦ぶ性癖の持ち主の候爵様へ苦言をしているのか・・・ぐふ。

「ハーニャさん、先程のは真面目な商談になりますからその辺で許してあげませんか?それに私はもうスキル付与で女の人の胸を見たり触れる事に対して性的に何も感じないように訓練しております。それと、私の能力は今は他言無用でお願いします。勿論ここで今行われた事全てで」

 カノープスさんが咳払いをした。

「この一行を率いているアッテンボローさんは信頼するに値する方です・・・」

 これまでの経緯を話して行った。

「うむ。アッテンボローさん、先程の事は他言無用でお願いしますぞ。さて、その能力は素晴らしいですね・・・」

 ドアがノックされ、魔石が届いた。

「候爵様、紙とペンはありますか?早速鑑定します。お話はその後でどうですか?」

「ハーニャ、渡してくれ。私も気になって仕方がないから先に頼むよ」

 鑑定結果をルシアスに伝え、書いて貰う。

 スキル
 剣豪(剣術の上級だと思う)
 五月雨突き
 真言

 魔法スキル
 ファイヤ
 ウォーター
 ブリザード
 アイスランス

 スキルについて分かる事と、予測を述べると候爵様は少し考えた。

「うむ。付与師の店を開きたいのだったな。私の公認としよう。ただ、1度一緒に王都へ行って欲しい。流石に国王陛下へ知らせ、許可を頂かねばだ。どのようなスキルなら良いかとかだ。で、早速剣豪と真言を私に付与して欲しい。ファイヤとウォーターをハーニャへ。残りは付与して貰う対価としてお主らに渡そうと思うがどうだね?割が合わないか?それと真言のようなのは一般人に付与するのはまずかろう」

「どうでしょう。付与の値段はこれからカノープスさんへ相談しようとしていました。基本的に私が集めた魔石にて付与するのを前提にしています。ですが、王族や貴族の場合自前の魔石にて行う事も有りますね。今回は損得をお互い考えず、候爵様の申し入れで行きましょう!」

 そして候爵様とハーニャさんへスキルを付与した。

「それとハーニャ、子爵をその子息と共にここに来るよう手配してくれ。今直ぐにと」

 服を着るとハーニャさんは一旦出ていった。

「よし、イリーヌを私がメイドとして買った事にして子爵を問い詰めるとするか。イリーヌや、メイドの真似事は出来るか?」

「お茶を運ぶ事位しか出来ません・・・」

「候爵様、個室を貸して貰えますか?メイドの嗜みというスキルが有ります」

「うむ。客間を使うと良い。では10分程カノープスと2人にして欲しい」

 そうして部屋の外にいた執事の方に案内され客間にてイリーヌにメイドの嗜みを付与した。

 また、イリーヌは彼女を身請けした時に着ていたメイド服に着替えさせ、即席だが、メイドに化けさせたのだった。
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