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第73話 カミングアウト
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カノープスさんの所に行くと、やたら身なりが良いが不機嫌そうな奴がおり、そいつとするとすれ違った。
こちらを見ても避ける気配がなく、おいおいと思っていると、イリーヌに首根っこを掴まれ屈まされた。
「フンッ!」
と唸り避けていった。
「子爵の当主です」
「貴族か?」
「はい。アロンは知らぬようだが、避けられない時は平民はああやって跪くのです。すると貴族も避けるものなのです。しかし、そうしないと無礼者として斬り掛かられる事も有ったりするので気を付けた方が良いと思います」
「嫌な予感しかしないが、貴族ってあんなに偉そうなもんか?」
「大抵は選民意識を持ち、貴族こそ支配者だ!平民は貴族に生かされている愚か者だと言う者もおります」
面倒に巻き込まれたくないので適当にあしらうのが一般的であるらしい。
「イリーヌの機転で助かったよ」
「うふふ。アロンの役に立てたのなら嬉しいぞ!♪」
ニコニコしているので、つい頭を撫でた。
子供扱いするな!と言うかなと思ったら恥ずかしそうにしていた。
ふと奥を見ると、扉からこちらを覗いていたカノープスさんが顔を出し手招きしてきた。
「アッテンボローさん、間の悪い時に来られましたね・・・」
「取り込み中なら出直しましょうか?」
「いや。ちょっと待ってください。おい、葉っぱを破って撒いておけ!」
カノープスさんが珍しく語気を荒くして職員に指示をしているな。
この人が感情を表に出すのを初めて見たな。
「アッテンボローさん、みっともない所を見せてしまいました。今日はどうされましたか?」
「ああ。この前の賊を討伐した件で懸賞金が出たから家を買うなり、出店の準備をする相談をしに来たのです。でもカノープスさん、何かトラブルに?」
カノープスさんは少し迷ったようだった。
「ここではなんですから、こちらに」
カノープスさんの執務室に案内され、ソファーに腰掛けた。
俺の隣にはカレンが座り、イリーヌはカノープスさんの隣に座る。
他のメンバーは隣の部屋から持ってきた椅子に腰掛けている。
「実はですね、先程のアッテンボロー様がぶつかりそうになった子爵家の嫡男に目を付けられましてね」
ちらりとイリーヌを見た。
「彼女について、私が購入したとの噂を聞き付けたようでして、突然その親である子爵家の当主が現れ、イリーヌを売れと迫ってきたんです。もう売り払ってここにはいないと話したのですが、信じてくれなくて全ての奴隷を見て行き、いない事が分かり漸く諦めた所です」
イリーヌは俯いていた。
「主殿、申し訳ありませんでした。私の所為なのです・・・」
イリーヌが語り出したが、数年前から問題の子爵家から嫁に出せと迫られており、それが嫌で姫騎士団に12歳の時に入団し、そこからは1度も家に帰っていない。
時折両親が騎士詰め所に面談に来る時にしか会っておらず、兄の異変に気が付かないまま奴隷落ちになったと言う。
カノープスさんはイリーヌをいち早く買い付けたが、子爵の嫡男も狙っていたようだ。
子爵家が懇意にしている奴隷商と僅差の差で買い付けたそうだ。
カノープスさんに疑問をぶつける事にした。
「ひょっとしたらあの街道での襲撃は、その子爵家の仕業ですか?」
「今となってはそうでしょうね。急ぎ子飼いの賊を掻き集めて襲ってきたのだと思います。店が襲撃されたのも、そいつらの仲間でしたからイリーヌを狙ったのでしょう」
「わ、私が子爵家にこの身を捧げれば全て終わるのではないのだろうか?皆を危険に晒す訳にはいかない・・・」
俺は店を飛び出そうとしたイリーヌの肩を掴み行かせなかった。
「行くな。お前はもう俺の女だ。他の男にやらせない!なんとかするから短絡的な行動は控えろ!皆イリーヌを行かせるな!」
皆がはいと返事をし、イリーヌを行かせないように入り口を塞いだりする。
「アロン・・・ありがとう。うん。私はアロンの女だったな。私はアロンの子以外産む気はないぞ!」
俺ははっとなったが、皆俺を崇拝するような目で見ていた。やらかした・・・
「カノープスさん。その子爵より上位の貴族や敵対勢力に伝はありませんか?後ろ盾になれるような貴族はいませんか?俺達の力で後ろ盾になる貴族に協力する代わりに助けを求めたい。その、俺には新たにスキルを付与する力があります!助けてくれるなら、その力をその方に使う事を辞さないつもりです」
カノープスさんは、スキル付与?と唸り、俺の言った事を理解しようとしばらくブツブツと何かを発していたのであった。
こちらを見ても避ける気配がなく、おいおいと思っていると、イリーヌに首根っこを掴まれ屈まされた。
「フンッ!」
と唸り避けていった。
「子爵の当主です」
「貴族か?」
「はい。アロンは知らぬようだが、避けられない時は平民はああやって跪くのです。すると貴族も避けるものなのです。しかし、そうしないと無礼者として斬り掛かられる事も有ったりするので気を付けた方が良いと思います」
「嫌な予感しかしないが、貴族ってあんなに偉そうなもんか?」
「大抵は選民意識を持ち、貴族こそ支配者だ!平民は貴族に生かされている愚か者だと言う者もおります」
面倒に巻き込まれたくないので適当にあしらうのが一般的であるらしい。
「イリーヌの機転で助かったよ」
「うふふ。アロンの役に立てたのなら嬉しいぞ!♪」
ニコニコしているので、つい頭を撫でた。
子供扱いするな!と言うかなと思ったら恥ずかしそうにしていた。
ふと奥を見ると、扉からこちらを覗いていたカノープスさんが顔を出し手招きしてきた。
「アッテンボローさん、間の悪い時に来られましたね・・・」
「取り込み中なら出直しましょうか?」
「いや。ちょっと待ってください。おい、葉っぱを破って撒いておけ!」
カノープスさんが珍しく語気を荒くして職員に指示をしているな。
この人が感情を表に出すのを初めて見たな。
「アッテンボローさん、みっともない所を見せてしまいました。今日はどうされましたか?」
「ああ。この前の賊を討伐した件で懸賞金が出たから家を買うなり、出店の準備をする相談をしに来たのです。でもカノープスさん、何かトラブルに?」
カノープスさんは少し迷ったようだった。
「ここではなんですから、こちらに」
カノープスさんの執務室に案内され、ソファーに腰掛けた。
俺の隣にはカレンが座り、イリーヌはカノープスさんの隣に座る。
他のメンバーは隣の部屋から持ってきた椅子に腰掛けている。
「実はですね、先程のアッテンボロー様がぶつかりそうになった子爵家の嫡男に目を付けられましてね」
ちらりとイリーヌを見た。
「彼女について、私が購入したとの噂を聞き付けたようでして、突然その親である子爵家の当主が現れ、イリーヌを売れと迫ってきたんです。もう売り払ってここにはいないと話したのですが、信じてくれなくて全ての奴隷を見て行き、いない事が分かり漸く諦めた所です」
イリーヌは俯いていた。
「主殿、申し訳ありませんでした。私の所為なのです・・・」
イリーヌが語り出したが、数年前から問題の子爵家から嫁に出せと迫られており、それが嫌で姫騎士団に12歳の時に入団し、そこからは1度も家に帰っていない。
時折両親が騎士詰め所に面談に来る時にしか会っておらず、兄の異変に気が付かないまま奴隷落ちになったと言う。
カノープスさんはイリーヌをいち早く買い付けたが、子爵の嫡男も狙っていたようだ。
子爵家が懇意にしている奴隷商と僅差の差で買い付けたそうだ。
カノープスさんに疑問をぶつける事にした。
「ひょっとしたらあの街道での襲撃は、その子爵家の仕業ですか?」
「今となってはそうでしょうね。急ぎ子飼いの賊を掻き集めて襲ってきたのだと思います。店が襲撃されたのも、そいつらの仲間でしたからイリーヌを狙ったのでしょう」
「わ、私が子爵家にこの身を捧げれば全て終わるのではないのだろうか?皆を危険に晒す訳にはいかない・・・」
俺は店を飛び出そうとしたイリーヌの肩を掴み行かせなかった。
「行くな。お前はもう俺の女だ。他の男にやらせない!なんとかするから短絡的な行動は控えろ!皆イリーヌを行かせるな!」
皆がはいと返事をし、イリーヌを行かせないように入り口を塞いだりする。
「アロン・・・ありがとう。うん。私はアロンの女だったな。私はアロンの子以外産む気はないぞ!」
俺ははっとなったが、皆俺を崇拝するような目で見ていた。やらかした・・・
「カノープスさん。その子爵より上位の貴族や敵対勢力に伝はありませんか?後ろ盾になれるような貴族はいませんか?俺達の力で後ろ盾になる貴族に協力する代わりに助けを求めたい。その、俺には新たにスキルを付与する力があります!助けてくれるなら、その力をその方に使う事を辞さないつもりです」
カノープスさんは、スキル付与?と唸り、俺の言った事を理解しようとしばらくブツブツと何かを発していたのであった。
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