上 下
56 / 147

第56話 見える!

しおりを挟む
 皆の魔力を合計すると1100を超える。
 タワーに行っていたカレンが回復しきっていないが、特にシルフィスの魔力が全回復しているので、数回の欠損修復を行える。
 トップバッターを誰にするかくじ引きだな。
 いや、ミネアが最初か。
 両目が見えないのを何とかしたい。

 皆に1度は行えるし焦らなくても良い。
 部位毎ななのか、1度使うと全ての欠損が治るのか、やってみないと分からない。

 それと彼女達の顔の傷はどうなんだ?欠損修復で治るのか?

 俺が考えに耽っているとふと顔に息が掛かっている気がした。

 目を開けるとそこにはカレンの顔があり、俺は驚いた。
 慌てて椅子から立ち上がろうとして、後ろにあった棚に頭を打ち付けてしまい倒れてしまった。

 ぷにっ。
 右手に柔らかな感触と、唇に柔らかな感触が。

 目を開けるとカレンを押し倒していた。
 すると積極的に下を絡めたキスをし、背中に腕を回し・・・なんて事を妄想し始めていたが。

「アロン?大丈夫ですか?」

 実際は頭をしこたま打ち付けて悶絶していた。
 女に囲まれていてしかもウエルカムにも関わらず手を出せない事から、悶々としているのか?

「ちょっと考え事をしていたんだ。えっと、カレンはステータスを見たり補正を魔力に振ってみたか?」

「えっ?あっ!魔力が100を超えてるわ!」

「だろ。より、ミネアの目から始めるか。シルフィス、ミネアの魔力をカレンに送って。一応魔力切れにだけは気を付けてな」

「アロン、何をしようとしているのですか?」

「何って?カレンの魔力が100を超えたから君らの欠損修復に決まってんだろ。ミネアは目が見えないから最優先だけどな」

「もう出来るの?」

「ただ、初めてだから一度で全部なのか1箇所なのか分からないけど、先ずはやらないと先に進まないから」

 シルフィスは頷いたので、俺はミネアの手を取りシルフィスの隣に座らせ、向かいにカレンが座るようにした。

 するとシルフィス、カレン、ミネアの3人がリング状になり魔力がミネアからカレンに注がれるのが分かる。

 魔力が十分に譲渡されたのか、3人の手は離れた。

 そしてカレンはミネアの前に座り、その手を顔に当てた。

「じゃあ行くね。欠損修復・・・えっと、部位を指定しなきゃだわ。右眼、左眼だわ」

「よし、補正を入れたらミネアの魔力は200超えだから右、左の順で行こうか。先ずは右眼で、ちゃんと見えるのを確認だな」

「分かったわ」 

 カレンは俺に指示を求めてきた。

「右眼の欠損修復行きます!」

 ミネアは体を固くしてドキドキしているようだ。

 カレンの手がほんのり明るってホワワンといった感じになったが、数秒で終わった。
 今はトルネアは俺に寄りかかる形で見入り、全員固唾をのんで見守る。

 幸いな事に何故ミネアから先にするのかについては、眼を強調したからか誰からも何も言ってこなかった。

 皆が見守る中、カレンが手を離すと恐る恐るミネアは右眼を開けた。

 すると涙が滴った。

「見、見えます!はっきりと見えます!あああああ!見えます!うああああああん・・・」

 ミネアが泣いて抱き着いた。
 そっと頭を撫でるが、それをしたのはカレンだ。
 どうせなら俺に抱きついてくれよ。

「感激するのは良いが、まだ後がつかえているからささっと左眼も行こうか」

 先程のようにシルフィスがミネアから魔力をカレンに渡す。

 そして左眼も修復し、検証を兼ねてシルフィスからカレンに魔力を渡し、もう1度欠損修復を試みるが出来なかった。

「ミネアごめんね。欠損修復では顔の傷までは治せなかったの」

 ミネアは大粒の涙を流してカレンに抱きついた。

「謝る事等全くないわ。眼が見えるようになっただけでも十分よ。カレンは綺麗ね!」

 そしてちらっと俺を見てため息をついた。
 ちょっと待て!そのため息は・・・な、なんだよ?

「ミネア、どうしたの?」

「いや、その、私は期待をし過ぎたようだ」

「期待?」 

「その、アロン様が普通だなって・・・」

 ミネアの1言に皆が笑い出した。

「確かにアロン様の見た目は普通だけど悪くはないわよ」byシルフィス

「人は外観じゃなく、中身だぞ!そんな愛嬌がある顔をした主殿が好きだぞ!」byイリーヌ

「美男は3日で飽きるけど、そうでなはない男性は飽きないと言いますし、私はこの顔のアロン様が好きですわ」byルシアス

「アロン様、黒髪が格好良いです!」byトルネア

「私は英雄様らしい顔が好きです」
 byカレン

 俺は途中から普通の顔レッテルと、フォローされていないフォロー内容に項垂れており、皆が何を言っていたか頭に入って来なかったのであった。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

ざまぁから始まるモブの成り上がり!〜現実とゲームは違うのだよ!〜

KeyBow
ファンタジー
カクヨムで異世界もの週間ランク70位! VRMMORゲームの大会のネタ副賞の異世界転生は本物だった!しかもモブスタート!? 副賞は異世界転移権。ネタ特典だと思ったが、何故かリアル異世界に転移した。これは無双の予感?いえ一般人のモブとしてスタートでした!! ある女神の妨害工作により本来出会える仲間は冒頭で死亡・・・ ゲームとリアルの違いに戸惑いつつも、メインヒロインとの出会いがあるのか?あるよね?と主人公は思うのだが・・・ しかし主人公はそんな妨害をゲーム知識で切り抜け、無双していく!

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

処理中です...