ザ・タワー 〜俺にしかできない魔石を鑑定する能力!魔石を使っての魔法&スキル付与!この力で最強を目指す〜

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第35話 瀕死

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 俺は慌ててイリーヌの元に駆け付けた。

 イリーヌは俺の姿を見て安堵したのか歩みを止め、フラフラとなり崩れ落ちるように倒れた。
 幸い地面に頭を打ち付ける前に抱き留めたが、全身血塗れだ。
 腕の方は血が止まっているが、顔の傷からはまだ血がどくどくと出ている。

「主殿・・・申し訳ありません。このような体になってしまった・・・」

「今ヒールを掛けるから喋るな!ヒール!」 

 直ぐに魔力切れで発動しなくなった。先程魔力や鑑定のレベルを上げた為に魔力が枯渇したのだ。

「済まないが体を触るぞ」

 体を弄り収納カバンを探し当てた。
 中を確認すると回復ポーションは無く、中にあったMPポーションを取り出すと迷う事なく一気に飲み干した。

 すると感情が昂り、魔力に満ち溢れてきた。

 何度かヒールを掛けると顔の傷はなくなり、呼吸も落ち着いてきた。

 人が集まってきたので俺はイリーヌをお姫様抱っこして人があまりいない所に行った。

 地面におろし、上半身を抱き上げている。

 左腕がない・・・
 顔の傷はなくなり、綺麗な顔が戻ったが、片目は濁っており失明したのだとひと目で分かる。

「もう大丈夫です。ありがとうございます」

「何があったんだ?」

「はい。地下5階層のボスがオークジェネラルで、レベルリセットされた今の私には荷が重かったのです。何とか倒したものの、見ての通り左腕と片眼を喪った。ただ、装備や魔石などはちゃんと回収しているので安心して欲しい」

「そんなもんどうでも良いんだ!イリーヌさえ生きていれば良いんだよ!しかし、そんな強敵相手によく生きて帰ってきたな!辛かっただろう?こちらも5階層でケルベロスが出たんだ」 

「イ、イリーヌさん?」

 買い物から戻ってきたルシアスが駆け寄り、イリーヌの状態に口を押さえた。

 はっとなりミドルヒールを掛ける。

「ルシアス、もう傷は塞がっている。取り敢えず宿に戻り着替えよう。今後の事等はその後だ。それとイリーヌ、君が嫌がっても俺の仲間として一緒にいて貰うからな。絶対に売らないから心配するな」

 ルシアスは涙を流すイリーヌを優しく抱きしめた。
 少ししてルシアスが歩けるようになると、取り敢えず宿に戻る事にした。

 宿に戻る道中服屋があったのでルシアスにお願いし、イリーヌの予備の服や下着やら肌着等を買って来て貰う。

 ふとイリーヌが呟いた。

「どうか私を娼館に売り払ってください。どう足掻いても主殿の足を引っ張るだけだと思う。その、その前にお情けを、思い出をくだされば有難いのだ。駄目だろうか?」

 俺はデコピンをした。

「2度とその手の事を口に出すなよ!君は類稀な女性だ。近接戦闘が駄目なら魔法を使えば良い。それに盾なら肘まであれば装着できるのがあるはずだから、明日見に行こう」

「しかし、私は攻撃魔法が使えないのだぞ!」

「大丈夫だ。魔石に魔法付与があったからな」

 タワーに入らせないという手は駄目だ。
 それをすると自殺しかねないから戦う術を与え、俺の役に立たないとの思い込みを消せばなんとかなるだろう。

「ですが・・・」

 俺は口に指を当てて先を言わせなかった。

「心配するなと言っても不安だろうが、見捨てたりしないよ。こんないい女を売るバカはいないよ」

「イリーヌさん。取り敢えず1度宿に戻って落ち着いてから3人で考えませんか?」

 渋々だがイリーヌが頷いたのでその場を離れた。

 重苦しい雰囲気の中、ルシアスはイリーヌの替えの服を急ぎ買いに行ってくれた。

 待っている間にイリーヌは血塗れだったのでコートを掛けてやった。
 真面目だが楽観的で明るい女騎士なのだが、沈んでおり憂いを秘めたその顔に少しどきりとした。
 美少女?美女?17歳でもうすぐ18歳なのだが、色気があり妙に大人びて見える。

「そんなに落ち込むな。俺は今のイリーヌを受け入れるから。生活に支障が出る部分は俺も協力するからさ。イリーヌは明るくしているのが似合うんだから、今日は仕方がないけど明日からは笑顔を見たいな。でも今日は遠慮するなよ」

 彼女はぐすんとなりコクコクと頷き涙を手で拭っていた。

「ず、ずるい・・・そ、そんな事、優しくされたら本気で惚れてしまうではないか・・・ううう」

 そっと肩を抱きよせ涙を拭う。

 暫くするとルシアスが店から出て来て、俺が涙を拭いている所を目撃した。

 イリーヌはルシアスに気が付き慌てて俺から離れた。

「ち、違うのだ。これは目にゴミが入り、片腕だと拭けないからと主殿が拭いてくれただけなのだ!」

「ええ。分かっているわ。やはりアロン様は優しいのですね。イリーヌさん、アロン様に買って頂いて良かったですね。さあ宿に行きましょうか」

 ・
 ・
 ・

 宿に着くと風呂場に直行した。
 昼間の為誰も入っていなかったが、事情を説明し装備を外すまでは俺も脱衣場に入る為、掃除中の看板を立てて貰った。

 血で外し難いので、一旦俺も下着のみになりルシアスも下着のみになり浴場でイリーヌにお湯を掛けながら装備や服を外し、装備を収納カバンに入れる。

 目の前には下着のみでボディーラインがくっきりだが、誰も恥ずかしがらず行っていた。
 流石に下着にまでなればルシアスだけで何とかなるので、俺が脱衣場から去ってから下着を脱ぐように伝えた。
 流石にこのような状況でも、生のおっぱいがぷるるんしていたら鼻血を出してぶっ倒れる自信がある。

 何も言わなくても良いと伝えてはいるが、勿論もどかしいだろう。
 噂だとタワーにて手に入るボスドロップの中に、エリクサーなる欠損部位を含めた完全再生の秘薬があるらしいが、年に数個しか出ず極めて高価なのだとか。

 俺はその後男風呂で体をさっと流し部屋に先に行った。
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