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第20話 換金

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 ギルドに着くと昼休憩が終った辺りと、比較的空いている時間帯だったのもあり並ばずに応対して貰えた。

 冒険者の犯罪と告げると副ギルドマスターと言う立場のある人に報告をする事になった。
 30台半ばの女性で、引退した冒険者と言っていた。

 銀髪を束ねたいかにも魔法使いと言った優しい感じのマダムだ。
 小説やアニメでよく出てくるようなエロいお姉さんや、実は男の娘でしたという1癖も2癖もある者ではなく、普通に話せる当たり障りのない人でした。

 14階層のモンスター部屋に就いての情報を開示し、確認後タワーの入り口に刻字されている重要事項に記載をすると約束してくれた。

 調べて貰うとゾーイのパーティーは人の入れ替えが激しかったらしい。
 コンディションカードが偽装されていたのは、スキルだろうとなった。

 また、宿にある物は全て倒した俺の物らしい。

 討伐報酬は規則でレベル×5枚の金貨との事。

 ゾーイが65で、他は61、58、54なので金貨1190枚となるそうだ。
 賞金首ならもっと貰えるらしい。
 金貨1枚を1万円としたら1200万円程になる。
 高いのか安いのか分からないが、4人の命としたら安いのかな。

 しかし、俺の命が危うかったが、それでも大金が転がり込んできた。更に魔石のお金やこれから宿で回収する荷物の事もあるから、当面の資金には困らなくなると思う。

 魔石は一応確認してから売りたい。見落としがあると痛いからね。
 ルシアスさんにどう話したものか悩むな。

 でも隠しても仕方がないよな。行動を共にするんだったら絶対に隠し通す事は出来ない。
 まあ後で考えよう。

 次に宿屋か。
 ルシアスさんの案内で宿に向かうが、どう見ても俺が今朝まで泊まっていた所だぞ。

「アッテンボローさん、ここがゾーイ達の泊まっていた宿です」

 俺がギルドで貰ったゾーイ達の犯罪認定書を兼ねた討伐証明書、処理済みのコンディションカードをルシアスさんに渡していたが、それで部屋の鍵を2つ貰ってきた。

「事情を話してきましたが、アッテンボローさんもこの宿に泊まられていらしたんですね」

「詳しくは部屋に行ってからにしようか」

「畏まりました」

 何の因果か、俺が泊まっていた部屋の真下だった。

 見覚えのある部屋の作りだ。
 ベッドは2つだが、1つは使われた痕跡がない。

「部屋割りはどうなっていたの?」

「こちらがゾーイとフィールシーで隣がヌラリスとマーヤでした」

「ルシアスさんは?」

「私は奴隷ですよ」

「すまないが、俺は奴隷の事をあまり知らないんだ」

「奴隷部屋です」

 ため息しか出なかった。

「そうか。ルシアスさん、悪いけどドアに鍵を掛けておいて」

 返事と共にガチャリと音がした。
 武器等を床に置くと、ルシアスさんは俺の方に近付くとスカーフを外して首輪が見える様にした。

 そして土下座を始めたので俺は固まった。

「御主人様。タワーで私はとんでも無い事をしてしまいました。主からの命とは言え、何の罪もないアッテンボロー様を害しようとする行いに加担しました。私は償いきれない罪を背負いました。どのような扱いも甘んじて受ける所存です。私は性奉仕を拒否できる奴隷でございますが、御主人様を受け入れますので、私をお求めになられても受け入れますので、少しでも償わせて下さい。ただ、その場合乙女で無くなるので、回復師になってしまうと思います」

 床に頭をこすりつけて体で払うと告げてきた。

 俺は肩を掴むと立たせる。

「ルシアスさん。自分を大事にして下さい。確かその首輪の所為で性的な事以外は拒否出来ないのでしょ?奴隷の罪は主人の罪だと聞きました。ルシアスさんは悪くないよ。それに俺は生きている」

「いけません。私など生きる価値はありません。どうか怒りを私にぶつけてください。私の罪は決して償えるものではありません。死する時までお仕え致します」

 これはこうと決めた事を曲げない女性なんだな。

「ちょっと待って。今気になる事が聞こえたけど、回復師になってしまう?というのは?」 

「はい。回復師の上位職業にクレリックとモンクがあり、女性がクレリック、男性がモンクになります。ただ、条件の1つに処女と童貞というのがあり、私が御主人様に抱かれますと処女ではなくなり、クレリックから外れてしまいます」

「なるほど。ルシアスさんにはクレリックとして俺と一緒にいて欲しいから、俺は抱かないよ。勿論ルシアスさんは超魅力的な女性だけどさ」 

 ここは焦ってはいけない。
 即時に手を出すような事をするのは良くないフラグが発生するだけだ。
 罠だろう!?
 カッコつけたというか、小説とかの主人公は手を出す奴ばかりだけど、精神構造がおかしいんじゃないのか?と思う。
 贖罪の為に好きでもない俺に純潔を差し出そうと涙を堪えている女を抱いても股間以外気持ち良くないぞ!?いや、それよりそんな女相手に萎えるぞ!絶対無理だ!
 抱いたら軽蔑されるだけだ。
 軽蔑だけじゃない。一生後悔する。
 奴隷を買ってはいただきますをする奴は壊れているんだろう。
 危なかった。俺も人外の悪魔になる所だった。

 つまり目先の欲に駆られてはいけない。
 信頼の置ける仲間が欲しい。

「ルシアスさん、俺の事を助けて欲しい。俺の秘密を話すから口外しないで欲しいんだ」

「誓います。一生秘密を守り御主人様を支えます」

「いや、御主人様としてではなくて、1人の人として仲間になって欲しいんだ」

「でも私はアッテンボロー様の奴隷なんですよ」

「俺のいた所に奴隷なんていないんだ。それに俺に抱いても良いと言っているルシアスさんは震えているし、涙を流しているよ。贖罪はいらない。その代わり裏切らない仲間になって欲しい」

 ルシアスさんは目を拭った。
 本当に泣いている訳ではないが、間違いなく心が泣いている。

「ほら!やっぱり!お互いを尊敬しあえたらなと思うんだ。駄目かな?」

 ルシアスは今度は本当に泣きながら頷いた。
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