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第13話 ボス部屋の洗礼

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 ゴブリンとオーガを倒し、ドロップを拾うと直ぐに先へと進んだが、5分程で階段が見えた。

 あれ?階層主はおらんのか?
 階段の近くに魔石が落ちていたけど、ビー玉位の大きさだったから階層主のか?

 ひょっとしたらさっきのオーガは2階層から来ていて、階層主はサクッと殺られたのか?その可能性があるよな。

 唸っていても仕方がないので階段を登ると、2と掘られた石板がある。
 多分触わるんだよな?
 という事でおっかなびっくりとしながら触れると、頭の中に何階に行きますか?
 と聞こえたような気がする。
 1と呟くと次の瞬間1階層の入り口にいた。
 そこには先程見過ごしたが、1と掘られた石板があり、それに触れるとやはり何階に行くか聞こえた。

 取り敢えず2と呟いた。

 すると先程の階段の所にある石板の前に出たので、そのまま2階層を進んで行く。
 おかしい。
 1本道を進むと所々小さい魔石やナイフ等が落ちていて、それを拾っていたが・・・良いのか?稼ぐ事が出来るのだろうが、自分が倒してもいない分の魔石を拾っても良いのか分からない。
 魔物と戦わずして楽をして進んでいるよな・・・まあいっか。

 多分さっきのオーガが道すがら魔物を倒していたお零れだろう。

 魔物はリポップするんだろうか?
 そうだとしたらいつだ?
 良く分からないが、楽が出来るなら楽をするさ。

 そうやって5階層まで来た。
 5階層を抜けた時に漸く部屋があり、何も考えずにそこにあった扉を開けて中に入ると、地下5階層と同じで扉が閉まった。

 かれこれ3時間程歩き詰めだったのもあり、かなり疲れていて判断力が落ちていたのだと思う。

 バタンと音がして慌てて扉を開けようとするも、扉は閉まると同時にすうっと消えていった。
 まずいまずいまずい!
 これは地下5階層の時と同じでボスが出るんだよな?
 どんなボスが出るのか?

 事前にどんなボスが出るのかの確認をする事も、ダンジョンについて調べる事すらろくにしなかった。
 いや、全くしなかった。
 もしも分不相応な相手だったらどうしよう?
 焦りから冷や汗が出る。
 恐らく1列が3ブロックで、それが3列だ。
 要は9ブロック分の面積で、高さも3ブロック。
 つまり1辺9mの正立方体だと思う。

 フラガラッハを持つ手は汗が滲み出ており、体の方は震えが止まらない。
 ゲーム感覚でお気軽に来ていたが、ドアの閉まるバタンという音で急激に現実に引き戻され、己の軽率さに後悔の念しか出なかった。

 ボス部屋の壁寄りに立ってキョロキョロとしていると、ふと魔物の気配がしたのでそちらの方を向くと、そこには双頭の犬がいた。
 角があり魔物だというのは鑑定するまでもなく分かる。

 だが、距離があるので鑑定をする。
 オルトロスだった。
 ケルベロスとは違うが何かで見た名前だな。

 グルルルと敵意むき出しに唸っており、足で地面を引っ掻き威圧しているな。何だったか?前掻きというのだっけ?

 成犬のドーベルマンを少しメタボにした感じだ。顔はドーベルマンに近い。
 メタボと言ってもドーベルマンはかなりシャープな体型なので、適度に肉が付いているという感じだ。

 果たして敵意剥き出しのドーベルマンと向き合ったとして、俺に勝ち目があるか?
 高校の時に剣道はしていたが、インターハイの後引退してからは運動をしておらず、はっきり言って体が鈍っている。

 高校で頑張ったのもあり、大学に入ったらゲーム三昧だ!
 そんな感じだったから大学に入ってからは殆ど体を動かしていなかった。

 そんな俺だったがそれでもフラガラッハを両手で持ち、剣先を後に向ける形で身構え、一気に振り抜くつもりで溜に入った。
 正体に構えるのにはフラガラッハは重く、そして大きい。
 細身の剣ならば剣道と同じ構えで行ける。

 だがフラガラッハは強力だが幅が広く刀より重い。人型なら上段からの振り下ろしで行けるだろうが、獣だと自信がない。
 今までフラガラッハを持って素振りをしていないから、どのように振れるかよく分かっていなかった。
 そこで横に振り抜き、薙ぎ払う事に賭けて貯めに入る。

 しかし威圧するのみで中々来ない。
 睨み合いになり俺が先に音を上げる事になる。
 緊張に心が持たず、痺れを切らせてしまった。

 指先をオルトロスへと向けてファイヤーボールと呟く。

 すると指先からファイヤーボールが生成され、オルトロスに向かって飛んでいく。

 オルトロスはそれを見てこちらに向かって猛スピードで駆け出し、軽々とファイヤーボールを躱した。

 そして剣の間合いに入る直前に視界からオルトロスが消えた。
 そっちだ!咄嗟に左を見たが、そこにオルトロスが飛んで来ているのが見えた。

 そう、剣の間合いに入る直前に向かって左側に跳ぶように地面を蹴り、着地と同時に再び地面を蹴り、俺へ襲い掛かるべく跳躍したのだ。

 俺も左側に気配を感じたので、顔を向けるのと同時に咄嗟にフラガラッハを振り抜いた。

 奴は俺の左肩に深々と牙を突き立てたが、その代償は下半身だった。
 ガブッと牙を突き立てた為一瞬動きが止まり、安々と斬り裂いた。

 キャイイイインと鳴きながら口を離したので、痛む左腕はだらんとなっているが俺は痛みに歯を食いしばりながら、フラガラッハをオルトロスの頭に突き刺して決着した。

 ハァハァハァ・・・

 俺はフラガラッハを落とし、痛む左肩を右手で触れながらヒールと半ば叫んだ。

 すると徐々に痛みが引き、血も出なくなってきた。

 ハァハァハァと呼吸は荒かったが、徐々に落ち着いてきた。
 やばかった。
 実力からすると今の俺1人だけで相手にしてはならなかった。
 勘が働いたからか、左から来るのが分かったから剣を振ったが、そうでなければ首を噛まれて即死していたかもだ。

 震えが止まらない。
 物凄く痛かった。
 生まれてこの方これ程の痛みを感じた事はない。

「不味いな。仲間が欲しい!外で募集していたな・・・頼み込むか?でも今は駄目だ。こんな血塗れの奴を仲間にと思う奴はいないよな。取り敢えず今日はこれまでだな。1度宿に戻ろう」

 俺は自分にそう言い聞かせると、ドロップを拾う。
 魔石と皮肉な事に肩当てと何かの肉だった。
 肉は何かの皮に包まれていた。

 食べ物も出るのか・・・・と思うが、開いている扉を出ると6階層へ続く階段があり、それを登ると転移の石板があった。
 そのままちらりと6階層をチラ見したが、相変わらずのマス目構造ではあるものの違いがあった。
 そう、通路の幅が2ブロックになっていたのだ。

「これならフラガラッハで行けるな・・・」

 そう呟くと階段まで戻り、転移の石板に触れ入り口へと戻るのであった。
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