上 下
1 / 197
序章(探索者スタート編)

第1話 プロローグ(物語の背景についての説明回)

しおりを挟む
 1999年7月4日、世界各地に隕石が落ちた。
 日本は夜だったが、昼のような明るさが暫く続いたと記録されている。
 運悪く隕石が落ちた場所に有ったビルが倒壊したり、家屋があったりと少なからず犠牲が出た。

 予兆はあった。
 隕石が落ちる前の7月1日に地球から少し離れた所で発光現象が観測された。
 その位置は7月4日に地球が通過する公転軌道付近と推測された。
 また、月の裏側にも発光現象が観測されていた。

 解釈は諸説あるが、有名となった話としてノストラダムスの大予言がある。
 予言では恐怖の大王が地球を滅ぼすとされる月であり、予言通りだと世界は恐れ慄いた。
 しかし、隕石による直接の犠牲が幾分か有りはしたが、クレーターが出来たわけでもなく肩透かしを食った形だった。

 20XX年、世界各国に突如としてダンジョン(迷宮)が発生した。
 通称ラビリンス。
 正確にはダンジョン自体は確認されていたのだが、そこから異界の生物、通称魔物が湧き出したのだ。

 その前兆は1999年7月に隕石が地球へと降り注いだが、各地にその隕石が落ちた事が今となってはそうだと言われている。
 理由は隕石が落ちた事が確認された全ての場所にダンジョンが発生したからだ。

 最初は人口100万~300万人につき1つの割合で隕石が落ち、隕石が落ちた後数年ほどしてダンジョンが発生した。
 最初期にダンジョンが発生した場所は例外なく隕石が落ちた場所だったが、隕石が落ちた記録の無い所にも発生した。

 入り口は馬に乗った人が出入り出来る程度の大きさで、異次元?に繋がっている。
 1階層のみがあったり、複数階層ある等大きさは様々だ。
 その為、自動車以上の物を持ち込めなかった。
 
 初期に発生したダンジョンは岩がゴツゴツした洞窟型だったが、定期的に増えるダンジョンは今では砂漠、森、平原、湿地帯、海岸等様々な種類のエリアがあり、人工太陽まである。
 なんでもありだ。

 そして最初のダンジョンが発生した当初はそこからファンタジー世界の魔物が湧き出し、人々を襲い多くの者が犠牲となった。
 そしていつの頃かラビリンスと呼ばれるようになった。

 ゴブリンやオーク等小説やアニメでお馴染みの魔物が現れたが、市民が抵抗するもまるで歯が立たなかった。

 包丁、木刀、バット等を手に撃退しようとするも刃物は欠け、木刀は折れた。
 警察官が小銃、猟師が持つ散弾銃で交戦するも皮膚を傷付ける程度で倒す事は出来なかった。
 車で突っ込む位しか倒す事が出来ず、車で突っ込んで2、3匹を倒したとしても、その人達は他の魔物に取り囲まれて直ぐに殺されてしまった。

 そんな中自衛隊が状況を変えた。
 駐屯地近くではあったが自衛隊が交戦し、ラビリンスの外へと出た魔物を倒して押し返す事が出来たのだ。

 重機関銃以上の火力でようやく倒す事が出来た。
 散弾銃は銃口を魔物に触れるような至近距離のみでしか役に立たなかった。

 そこから何とか外に出た魔物を倒しきり、自衛隊や各国の軍隊が逆に迷宮の中へと入っていった。
 魔物は死ぬと魔石と言われる不思議な石を残し霧散する。
 又は時折有益なアイテムを落とす。

 魔石は今や色々な物を作る希少金属の代替え品となり取引されている。

 魔石と言ってもいつの頃かそう言われている通称であり、正式に名称は定められてはいない。
 また、魔法を使う時の触媒や魔力供給源ではない。
 工業的には砕いて使うのだが、魔石を砕いて出来た粉を魔法の粉と言う。
 魔石の代わりにカードが残る。
 当初はそのカードが何なのか理解できなかったが、そのカードに血を垂らすと、主人になりカーヴァントという、カードになった魔物を召喚して使役できる。

 魔石は同ランクならばカードより少し値が高い程度だ。
 例えばミキサー車1台分のセメントにゴブリン程度の魔石100個ほどを砕いた粉を入れると、強度が10倍になるとか。

 アルミ100kgに1つ入れるとジュラルミンの倍の強度になるなど、その価値はかなりのものだ。

 一部の希土類と同じような性質があり、そのような意味もあり魔法の粉と言われるが、呼び方について魔石が先か魔法の粉が先なのか意見が分かれる。
 しかし一般人からすれば魔石を砕いたのが魔法の粉であり、それ以上でも以下でもない。
 これもいつの間にか魔粉と言われるようになった。

 また、魔物の討伐について特筆すべきなのは、100体に1枚程魔石の代りにその魔物の写真やステータスが掲載されたカードを落とす事だ。

 最初は何だこれは?となった。
 謎のカードであり、科学者が色々調べるも不明だった。

 ラビリンスも下層には行けなかったが、最初の層にてある程度の魔物を殺せば外に出てくる事が無くなる事が分かり、各国がこぞって調査するも芳しくないどころか、どれ1枚として同じ個体が無い事位しか分からなかった。

 戦闘を録画したフィルムからそのカードは死んだ個体の姿が写っている事だと判明したのだが、唯一その事が科学者達が解明した事実だったが、大した意味はなかった。

 変化があったのはラビリンスから魔物が出て来てから3ヶ月した時だ。
 偶々銃身を短くしたスナイパーライフルで魔物を倒した時に、倒した隊の自衛隊員がカードを拾おうとして躓いて転倒した。
 転倒時にかすり傷を負って出た血が偶々カードに垂れた。

 するとカードが光り、その場にゴブリンが現れて皆が腰を抜かした。
 そしてその血を流した者を助け起こし恭しく礼をした。

「オレシジマヅ」

 実際は聞き取れなかったが、そのような意味だと捉えた。
 また、一字一句覚えていた隊員がおり、後に指示を!と言っていた事が分かった。
 翻訳アプリができたのだ。
 ただ、ラビリンス内は電子機器が使えないので、出入り口にてメモをしたのを入力し、ゴブリン語で会話ができなくもなかったが、結局こちらの意図は通じるので手振り身振りが中心となっていく。

 敵意がなく、周りにはまだ瀕死の魔物がいたが、その自衛隊員の男ははっとなりこの魔物が己の配下にあると理解した。
 ものは試しと魔物を殺して来いと命じたのが始まりだった。

 そのカードから現れたのはゴブリン。
 そのゴブリンはラビリンスにいる同種の魔物と明らかに様子が違った。
 目が違ったのだ。
 魔物は目が赤いが、カードから現れた魔物の目は薄い金色だった。

 その日その男は他にもゴブリンのカードを拾っており、試しにカードへ血を垂らしてみた。
 すると先程と同様にゴブリンが現れ、2体目のゴブリンを顕現させる事に成功したのだ。

 それから分かったのはカードに血を垂らした者が主となり、隷属した状態の魔物、つまり眷属化した魔物の召喚が可能だという事だ。
 但し召喚出来るのはラビリンスの中でのみ。
 科学者はラビリンスの中に入らないから、どのような科学者にも分からなかったのだ。
 また、血を掛けると血の持ち主が主として登録されるが、少なくとも1度はラビリンスの中に入っていないと主にはなれなかったのもそうと分かるまで時間が掛かった要因だ。

 また、魔物は決して主に危害を加えない。
 性格は各々違っており個性が見られた。
 また、知性も個体差がある事が直ぐに分かった。

 ラビリンスから得られたカードから眷属が得られ、それらに命ずれば他の魔物を倒す事が出来た。

 ただ、ラビリンスからは出られず、出ようとするとカードに戻ってしまった。

 カードには名前が書かれており、眷属化したカードに対し「出でよxxx」等とカードにある名前を唱えると顕現する。
 そして「戻れxxx」と命ずるとカードに戻る。

 意味さえ同じなら「出て来い!」「出ろ」「出て来て下さい」何でも良かった。

 そうやって現代兵器以外での対処方法が発見され、最初の使い手となった自衛隊員は0号と呼ばれた。

 後にカードから発生した魔物はカーヴァントと呼ばれたが、カードとサーヴァントを掛け合わせた造語だ。
 ただ正式な呼称ではなく、いつの間にかそう言われるようになったにすぎない。

 そして月日は流れ、今は隕石が落ちてから20年以上経過している。
 世代は1世代変わっており、その間に1度大きな災厄が起こったが、今ではすっかりラビリンスと共存している世界となり、そこが物語の舞台である。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

追放もの悪役勇者に転生したんだけど、パーティの荷物持ちが雑魚すぎるから追放したい。ざまぁフラグは勘違いした主人公補正で無自覚回避します

月ノ@最強付与術師の成長革命/発売中
ファンタジー
ざまぁフラグなんて知りません!勘違いした勇者の無双冒険譚  ごく一般的なサラリーマンである主人公は、ある日、異世界に転生してしまう。  しかし、転生したのは「パーティー追放もの」の小説の世界。  なんと、追放して【ざまぁされる予定】の、【悪役勇者】に転生してしまったのだった!  このままだと、ざまぁされてしまうが――とはならず。  なんと主人公は、最近のWeb小説をあまり読んでおらず……。  自分のことを、「勇者なんだから、当然主人公だろ?」と、勝手に主人公だと勘違いしてしまったのだった!  本来の主人公である【荷物持ち】を追放してしまう勇者。  しかし、自分のことを主人公だと信じて疑わない彼は、無自覚に、主人公ムーブで【ざまぁフラグを回避】していくのであった。  本来の主人公が出会うはずだったヒロインと、先に出会ってしまい……。  本来は主人公が覚醒するはずだった【真の勇者の力】にも目覚めてしまい……。  思い込みの力で、主人公補正を自分のものにしていく勇者!  ざまぁフラグなんて知りません!  これは、自分のことを主人公だと信じて疑わない、勘違いした勇者の無双冒険譚。 ・本来の主人公は荷物持ち ・主人公は追放する側の勇者に転生 ・ざまぁフラグを無自覚回避して無双するお話です ・パーティー追放ものの逆側の話 ※カクヨム、ハーメルンにて掲載

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

処理中です...