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第165話 フランジッド侯爵

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 屋敷を取り囲む私兵は、ブランジッド侯爵の手下だった。領主と仲が悪い、いや敵対する勢力の1人だ。
そして領主と懇意にしているダイランド家に敵対心を抱いてもいた。

 彼は鏡を売れとセルカッツの父親であるダイランド侯爵に迫ったが、高圧的に接したりと態度が悪いため、ダイランド侯爵に追い返された。それで恨みを持ち、鏡を奪おうと侯爵に気づかれないようにごろつきを雇って襲ってきたのだ。自らの屋敷の中からセルカッツの屋敷での戦闘の様子を眺めてほくそ笑んでいた。彼は自分の計画が成功すると思っていたが、それは大きな間違いだった。

 セルカッツの父親は、息子のところに身を寄せていた。キルカッツにより国を捨てざるを得なくなりセルカッツのところに身を寄せていたのだ。しかも魔王の尖兵にしようと掛けられた技により屋敷の敷地から出られない。

 屋敷を守るために国を出た時に引き連れてきた約20人の手練れの騎士達と共に自らも剣を取って戦った。敵の首を次々と刎ね、敵の血を地に染めその魂を地獄に送った。しかし、私兵の数は多く、ダイランド侯爵と騎士たちは次第に手傷を負い追い詰められていった。

 私兵はダイランド侯爵の剣に斬られたり、騎士たちの槍に突かれても屋敷に押し寄せてきた。鏡を奪うことができれば、高額の報酬がもらえると信じていたのだ。鏡は単なる鏡で、何の力も秘めていないとは知らず、鏡が自分たちの運命を変えるものだと思いこんでいた。

 ダイランド家にある鏡は、この世界のすべてのものを映し出すことができる不思議な鏡。この鏡は特殊な魔力によって作られたもので、本来この世界には存在しない分子でできていた。鏡を見ることで、自分の世界の情報を得たり、敵の世界の情報を隠したりすることができ、鏡の知識を利用して有利に立ち向かえると信じられていた。しかし、単に物を映し出す単純な鏡だ。


 ダイランド侯爵達が追い詰められ、囲まれた時にセルカッツ達が駆けつけた。セルカッツは、鏡の製造者であり、鏡の素材や作り方を知る者だった。

 ブランジッド侯爵はいよいよダイランド侯爵を捕えると見て屋敷から出てき私兵に指示を出していた。自分の計画が成功すると思っていた。しかし、異変を感じた。そう、自分の屋敷が炎上しているのを見た。別動隊としてタニスとアルテイシアが首謀者を突き止め、私兵と合流したのを見て魔法で屋敷に火を放ったのだ。そしてセルカッツ、ヨルミクル、イザベル、メイヤが戦闘に加わり一気に押し返し、逃げ遅れた侯爵を捕らえた。そして侯爵は自分の間違いに気づいた。

 ブランジッド侯爵は、捕らえられるとダイランド侯爵に責められた。ダイランド侯爵は、ブランジッド侯爵に冷たく言い放った。

「お前は何をしようとした?何故鏡を奪おうとしたのだ?お前は私利私欲のために私に敵対し、この国の平和を乱したのか?お前は私の敵だ。お前は私にとって脅威でもなんでもない」

 ブランジッド侯爵は、ダイランド侯爵に縋った。

「お願いします。許してください。私は鏡が欲しかったのです。私は鏡がこの世界のすべてのものを映し出すと聞いたのです。私は鏡が自分の世界と敵の世界の情報を操作できると信じたのです。私は私利私欲のためにあなたに敵対しませんでした。あの方に命ぜられたのです!」

「嘘だ。お前は私利私欲で鏡を奪おうとし、ダイランド家に敵対した。そしてこの国の平和を乱した。お前は私の、いやこの国の敵だ!」

 ダイランド侯爵は、ブランジッド侯爵に剣を突きつけた。ダイランド侯爵は、ブランジッド侯爵に死刑を宣告したのと同じだ。ダイランド侯爵は、ブランジッド侯爵に別れの言葉を告げず、首を刎ねようとしたが、ブランジッド侯爵が座りこんだ地面が濡れた事に眉をしかめ、セルカッツに指示を仰いだ。ブランジッド侯爵は、恐怖と絶望で失禁したのだ。
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