異世界の約束：追放者の再興〜外れギフト【光】を授り侯爵家を追い出されたけど本当はチート持ちなので幸せに生きて見返してやります！〜

第154話 倍返しとは

　馬車の中でセルカッツへのいぢられは続いた。 
　セルカッツは妻達に囲まれ色々と質問された。 
　これから迎えるであろう初夜の話はもちろん、ウルナとの関係やアルカン王国での生活など、興味のあることは何でも聞いてくる。 
　セルカッツは正直に答えることにしたが、それが逆に火に油を注ぐことになった。
　しかし、意趣返しを考えてしまった・・・

「セルカッツ様、ウルナさんとはどうやって知り合ったのですか？」

「それはね、彼女が俺を助けてくれたからだよ。俺はアルカン王国に逃亡してきたんだ。元々は別の国の貴族だったんだけど、その国は魔王に滅ぼされてしまったんだ。俺はアイリーン、メイヤ、タニスの４人で何とか生き残って、アルカン王国に辿り着いたんだ」

「へえ、そうなんですか。じゃあ、ウルナさんはセルカッツ様のことを助けてくれたんですね」

「そうだね。彼女は俺が宿に泊まっていたときに、部屋に忍び込んできて俺を暗殺しようとしたんだ。彼女は暗殺者の一味だったんだよ」

「えっ、ウルナさんは暗殺者だったんですか？」

「そうだね。彼女は俺のいたの国の敵だったんだ。俺を殺すことで、魔王に仕える者たちから報酬をもらおうとしたんだ。彼女は孤児で、更に他の孤児のリーダーだったから、お金が必要だったんだよ」

「それでどうなったんですか？」

「それでね、襲ってきた彼女と戦ったんだ。彼女の攻撃をかわして、彼女を捕まえたんだ。そこで彼女になぜ俺を殺そうとしたのかと問いただしたんだ。観念して真実を話したんだよ」

「それでセルカッツ様はどうしたんですか？」

「それでね、俺は彼女を許したんだ。彼女の事情を理解したんだ。俺を殺すことで、自分や仲間の孤児たちの生活を守ろうとしただけで悪意はなかったんだよ」

「それでウルナさんはどうしたんですか？」

「それでね、ウルナは俺に感謝したんだ。彼女は謝り俺についていくことにしたんだ。そして部下になってくれたんだ。俺の騎士になったんだよ」

「それでいつから恋に落ちたんですか？」

「出会ってすぐかな？孤児たちの面倒を見る彼女に惹かれたんだ。彼女も支援する俺をね」

「えっ、ウルナさんはセルカッツ様のことを好きだったんですか？」

「そうだね。彼女は俺に想いを告げてくれた。最初は驚いたけど、彼女の気持ちに応えることができた。もちろん皆と結婚する気持は変わらなかったけど、ウルナも妻になってくれるはずなんだ」

「えっ、それはどういうことですか？」

「それはね、アイリーンが許してくれたからだ。アイリーンは俺とウルナの関係を知って、喜んでくれたんだ。彼女は俺のことを愛してくれていたから、幸せを願ってくれたんだ。彼女はウルナを姉のように迎え入れてくれたんだよ」

「それは素敵ですね。ウルナさんは優しいですね」

「そうだね。アイリーンに感謝している。彼女は最初の妻だからね。いや、君か？もちろん彼女もヤーマと大切にするよ」

「それでウルナさんとはどうなったんですか？」

「それでね、ウルナは俺達と一緒に鏡作りをすることになり、段々彼女に惹かれ、どちらからともなく愛を誓ったんだ。彼女はアイリーン達と結婚することを許してくれたんだ。それは彼女が平民だから、貴族の本妻になることを頑なに拒否した為なんだ。彼女を大切にするけど、望まぬことはしないよ」

「それは良かったですね。セルカッツ様は幸せ者ですね」

「そうだね、幸せだよ。妻に恵まれたんだ。愛しているよ」

　セルカッツはそう言って、妻達に笑顔を見せた。
 　妻達も彼に笑顔を返した。
　しかし、作り話だと暴露し本当の話をしたが、ヤーマに一泡吹かせる事が出来たとほくそ笑む。
　しかし、倍返しという言葉をセルカッツは身を以て体験することになるが、今は知らない。

 　バカバカとポコポコ叩かれるも、馬車の中は和やかな雰囲気に包まれた。

　そんな中、セルカッツは何となく窓から外を見ていたが、 アルカン王国の景色が目に入った。 
　彼は屋敷に近づいていることを感じ妻達に言った。

「もうすぐ国境に着くよ。アルカン王国だ」

　妻達は興味津々に窓から外を見た。 　ヤーマはセルカッツ達が住む、いや、アイリーンの故郷を見るのを楽しみにしていた。

　セルカッツは妻達の手を握って、新しい生活に期待した。