異世界の約束：追放者の再興〜外れギフト【光】を授り侯爵家を追い出されたけど本当はチート持ちなので幸せに生きて見返してやります！〜

KeyBow

文字の大きさ

大中小

139 / 173

第139話　使い魔

しおりを挟む

　セルカッツはドナルドに近づくとドナルドの顔を見た。
　少し考え込んでから眼光を鋭くし、まるで睨むかのようにドナルドの目を見た。

　国王が即決で死刑を宣告しかねないため、時間を稼ぐ。
　何とも言い難い違和感があった。
　アイリーンから聞いた人となりと違いすぎるからだ。
　最初は裏と表があり、表では良き護衛として模範的な振る舞いをし、夜になると本性を現わす。

　しかし、それも違和感がある。
　信託の儀の前とはまるで別人だからだ。
　ゲームでも時折イベントで狂人に襲われたりするのが有り、それと似通っていると思ったのと、話に一貫性がなかった事だ。

　ドナルドはセルカッツの顔に驚いた。
　彼はセルカッツが自分の命を助けてくれたことに戸惑った。
　国王が死刑を宣告すると思われるそのタイミングで機先を制したからだ。

　しかし、その表情からセルカッツが自分に何を言うのか不安になった。
　潮時か？痛くて気持ち悪いから、ねぐらを変えるのはやなんだよな・・・
　そんな事を頭の中で思う。

　セルカッツはドナルドに話しかけた。　
　彼はドナルドに厳しく声をかけ、真実を問いただした。

「ドナルド、お前は何者だ？お前はどうしてこんなことをした？お前は誰に命令された？目的はなんだ？」

　セルカッツはドナルドに背筋が凍りそうなほど冷徹に問うた。
　回答次第では殺す！と目が訴えていた。

　ドナルドはセルカッツに答えられなかった。
　彼は自分の行動に正当性を見出せなかった。ただ自分勝手な欲望に駆られていただけだった。
　しかも何をしたのかよく分かっていなかった。
　それに体が言うことを聞かないし、喋れない。

「私は・・・私は・・・」

　ドナルドは言葉に詰まった。

　セルカッツはドナルドの様子に気づいた。
　彼はドナルドが自分の意志で行動していないと感じ、やはり何かに操られているのだなと確信した。

　セルカッツはドナルドの体に２つの魔力を感じた。
　ドナルドの体に異質な魔力を感じたのだ。
　この感覚は知っている！魔王の魔力だ。

　セルカッツはドナルドに魔王の使い魔が憑依していると気づいた。
　彼はドナルドに魔王の使い魔が記憶を吸い取り、ドナルドっぽく振る舞っていると理解した。
　魔王の使い魔がドナルドの身体を使って国王を殺す機会を伺っていたのだと推測した。

　かつてゲームのイベントで偶々似たような状態の者を見たから、気がつけた。

　セルカッツはドナルドに憑依している魔王の使い魔を説き伏せようとした。
　ドナルドに魔王の使い魔が憑依シていることを暴露しようとし、使い魔を脅そうとした。

　しかし、今のセルカッツではドナルドに憑依している魔王の使い魔に対処できないと悟った。
　
　セルカッツ自体はドナルドを殺す以外、対処できない。
　まだ能力が開花していないのだ。
　彼はドナルドに憑依している魔王の使い魔が強力であると知っているし、魔王の使い魔が抵抗すると予想した。

　セルカッツはドナルドから魔王の使い魔を取り出せる人物を思い出した。

　使い魔をドナルドから追い出せる人物を呼び出すしかないと、ドナルドから魔王の使い魔を引きずり出せる人物を頼ることにした。
　引きずり出しさえすれば、ギフト光でどうとでもなる。

「国王陛下、どうかこの国の最高司祭様を呼んでください。ドナルドは魔王の使い魔に憑依され、体の自由を奪われています。司祭様ならばドナルドに憑依した魔王の使い魔を取り出せるはずですし、救う唯一の手段であります。使い魔から魔王の情報を引き出すことができるかもです」

　セルカッツは国王に深々と頭を下げて頼んだ。

　国王はセルカッツの説明に、ドナルドに魔王の使い魔が憑依しているのだと確信し、信じた。

　国王はセルカッツの願いを聞き入れ、最高司祭を呼ぶとドナルドの様子を見てもらうよう手配した。

　数分で最高司祭が到着した。
　卒業時期に参列しており、校長と話をしていたのだ。

　彼は白いローブを着て、金色の杖を持っており、正装だった。
　この司祭は神々の声を聞くことができると言われている。

　最高司祭はドナルドの前に立った。　彼はドナルドの体に手をかざすと、ドナルドの体に祈りを捧げた。

「神々よ、この者にある邪悪な存在を見せてください。この者にある邪悪な存在を浄化するお力をお貸し下さい。そしてこの者にある邪悪な存在を追放させてください」

　最高司祭はドナルドの前に片膝をつくと祈りはじめた。

　すると、ドナルドの体から黒い煙かもやのようなのが噴き出した。　
　それは魔王の使い魔から発する瘴気で、それはドナルドの体を乗っ取っていたものから発せられたものだと皆理解した。

　瘴気が集まりだし、１つの塊になると、存在そのものが卑猥としか言えない淫魔が姿を見せた。

　使い魔は最高司祭に怒鳴って威嚇し、更に噛みつこうとした。

「くそっ、邪魔するな！あきちは魔王の命令でここに来たのだ！あきちは魔王様の命令を果たすのだ！魔王様の忠実なしもべであり、魔王様のために生きる者だ！」

　魔王の使い魔は最高司祭に叫んだ。

　最高司祭は魔王の使い魔に動じなかった。
　彼は魔王の使い魔に神々の力を示し、神々の裁きを下した。

「魔王の使い魔よ、お前は神々の怒りを買った。お前は神々の法に背むき神々の恵みを踏みにじった。お前は多くの罪を犯した。お前は神々から審判を受け、神々の光に焼かれるだろう」

　最高司祭は魔王の使い魔に告げると杖を振った。　
　すると杖から使い魔に向かって白い光が放たれた！

しおりを挟む