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第133話 ヤーマとハーニャとアイリーン

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 約3年前からドナルドはアイリーンの護衛として、魔法学校に通っていた。彼女の身を守るため、日々厳格に己を律し、歳不相応に老成して見えたり態度もそうだった。生真面目すぎ、面白みがない少年だった。

 アイリーンは王族の血筋、つまりアルカン王国国王の娘である。
 その存在は多くの敵対者に知られていた。
 彼女はルランド公国にある魔法学校で学ぶ一方で、身分を隠していたが、それでも暗殺者や陰謀者から狙われることがあった。
 名前は幼名のアイリーンとし、婚約者の家名を名乗っていた。

 彼女はアルカン公国に対し、ルランド王国から差し出された人質でもある。
 本人が留学を希望したので、人質のつもりで行くのではなかったが、人質の意味合いがある事を理解していた。
 魔法学校には常に何人かの王族が通っており、卒業するまで帰国を許されなかった。

 当初ヤーマは一般生徒として魔法学校に通っていた。 
 アイリーンの護衛はドナルドだけしか認められず、同性の護衛を認められなかった。
 これは寮が男女別で、護衛と分離させるためだった。
 そこで騎士団から護衛を選抜した。
 騎士見習いでかつ、魔法学校に通う王族の同性で同じ年齢。
 魔法適性があり、顔以外の背格好が似ている事が条件で、ヤーマは5年前からアイリーン付けの侍女兼護衛として仕えていた。
 ある事件の後、ヤーマは生涯の忠誠を誓っており、心から己の命より大事な人だと心酔していた。
 そこで魔法学校に入学できるように、試験を受ける前からルランド公国に住まわせ、豪商の養子にさえさせて備えた。
 他の国でもやっているが、1人や2人なら見て見ぬふりをしていた。

 当初こそアイリーンは本当に魔法学校に通っていたが、学校に通い始めてから半年が経過した頃に1度、第2王子の配下によると思われる刺客に襲われた。
 これにより身の危険を覚えたアイリーンは、偶々魔法学校を訪れた従兄妹のダイランド侯爵と再開する。
 事情を話すと侯爵の奴隷として身を隠し、ダイランド家にて過ごす事を提案された。
 一応怪しまれないようにメイドの扱いで、セルカッツとキルカッツに与える奴隷を買う為にこの国に来たと話していた。
 筆おろし用の奴隷を買うと言うと、アイリーンは悲しそうな顔をするも、そのような世界だとその奴隷に同情するしかなかった。
 元々国元を出る時に渡された姿を変える指輪を持っており、ヤーマを説得して彼女がアイリーンの身代わりとなった。

 ストーリーは、ヤーマ(この国ではハーニャと名乗る)親元がダイランド家に多額の借金があり、そのカタに娘を当てており、返済不能によりダイランド侯爵に差し出された形を取る。
 それに伴い、ハーニャは魔法学校を退学し、経済奴隷となった。
 奴隷商でメイヤとタニスを買い、合わせてハーニャ(アイリーン)を奴隷とした。

 護衛のドナルドと影武者となったヤーマに対し、性的に手を出さないし出させない、魔法学校を卒業し、ヤーマがダイランド家に来た時点で奴隷開放をする内容で誓いを立てた。
 誓いは魔道具を使い、魂に組み込まれる内容で行っていたので、アイリーンも全てを委ねていた。

 ヤーマ(アイリーン)は影武者として、アイリーンの代わりに魔法学校に通っていた。彼女は背格好が近いことから選ばれ、騎士見習いの中でも特別な存在だった。ドナルドはヤーマがアイリーン様として振る舞えるようにサポートしていた。

 アイリーン(ハーニャ)はセルカッツの父親の協力で奴隷として匿われていた。彼女は王女アイリーンとしての身分を隠し必死に生きていた。セルカッツは王国内で有力な家系であり、その結婚は政治的な意味合いも持っていた。

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 アイリーンと再会したヤーマは戸惑っていた。
 本来こちらからダイランド家に向かい、ダイランド家にアイリーンが嫁ぐ形で王位継承を放棄するまでの任務だった。
 しかし、自分を助けに来てしまった。 止めたかったが、魔道具による念話も、その方向の話をしようとしたら魔力が切れると一方的に話が終わってしまった。

 そんな中、卒業式を控えており、ヤーマはアイリーンに訪ねた。

「私はどうすれば・・・」

「卒業式の後、もしも私達と落ち合えなかったその時は指輪を外して姿を変え、宿まで逃げなさい。ダイランド家に着いたらその後のことを考えましょう」

 ヤーマ(アイリーン)は心臓が高鳴り、新たな未来へ向かう決意を固めた。
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