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第132話 ドナルドとヤーマ

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 前書失礼します。予約投稿失敗していました。その為本日2話に鳴ります。


 その後は大きな問題もなく、俺達は予定通りに王都に到着した。
 流石に王都だけあり、国境を超えた後通ったどの町よりも大きく、華やかで賑やかだった。 
 とりあえずヤーマが泊まっている宿に向かう。

 宿に着くと俺達は馬車から降りて、各部屋に別れ荷物の整理は後回しにし部屋へ運び入れるだけにした。

「さて、これからどうしましょうか?」

 リリアナさんが俺達に尋ねたが、彼女は俺達と一緒に魔法学校へ行くつもりだった。

「魔法学校へ行きましょうよ」

 アイリーンが明日卒業する予定なのもありメイヤが告げた。

「そうですね。魔法学校へ行こう」

 俺も言った。
 俺はハーニャ(アイリーン)と一緒に卒業式に出席するつもりだった。
 領主からの書状もあり、手続き的には問題ない。

「では、魔法学校へ行きましょう」

 リリアナさんが言って、馬車を進めようとしたが・・・その時、馬車の前に人影が現れた。

「お待ちください!」

 その者は声を上げて、手を振った。  人影は男性で、長い髪と無精髭を生やしていた。
 彼は俺達に向かって走ってきた。

「誰だ?何の用だ?」

 隊長の騎士が声を張り上げて、剣を構えた。 
 彼は馬車から飛び降りて、男性に向かって立ち塞がった。

「落ち着いてください!私は敵ではありません!私は味方です!」

 男性は手を上げて見せ、更に彼は剣を帯ていなかった。

「誰の味方だというのだ?」

「あなた達の味方ですよ。私は魔法学校の生徒です」

「魔法学校の生徒?」

 俺達は驚いて男性を見た。
 彼は本当に魔法学校の生徒なのだろうか?

「そうです。私はドナルドと言います。怪しい者ではありません」

 男性は笑顔み向け俺達に親しげに言った。

「ドナルド?」

 俺達は声を揃えて疑問形で名前を聞き返したが、俺達はドナルドという名前を聞いたことがなかったからだ。

「ええ、ドナルドです。誰も私の事を覚えていませんか?私は貴方達が来るのを待っていました。

 ドナルドはそう言って、首を傾げたが、俺達は不思議そうに彼を見るしかなかった。

「ごめんなさい、私には見覚えがありません」

 リリアナさんが謝った。
 彼女はドナルドに申し訳なさそうに言った。

「私も覚えていません」

 俺もドナルドに申し訳なさそうに言った。

「私も・・・」

 ハーニャ(アイリーン)も言おうとしたが、その前にドナルドが口を挟んだ。

「あなたは覚えているでしょう?ここではヤーマ様とお呼びした方がよろしいか?」

 ドナルドはハーニャ(アイリーン)を見つめた。
 彼はハーニャ(アイリーン)に深い感情を込めて言った。

「では・・・アイリーン様!」

 俺達は驚いて、ハーニャ(アイリーン)を見た。
 彼女の本名はアイリーンだ。

「あなたは誰?どうして私の名前を知っているの?」

 ハーニャ(アイリーン)は、ドナルドを睨んだ。彼女はドナルドに警戒心を抱いた。

 俺達はドナルドに疑いの目を向け、警戒度を高めた。
  彼は本当に魔法学校の生徒なのだろうか?彼は本当にアイリーン様かヤーマを知っているのだろうか?  彼は本当に俺達の味方なのだろうか?

「ドナルドさん、どうしてあなたはヤーマやアイリーン様の名前を知っているんですか?」

 俺はドナルドに尋ねた。

「それは・・・実は私はアイリーン様の護衛なのです」

 ドナルドは告げた。

「護衛?」

 俺達は驚いて、ハーニャを見た。  彼は本当に護衛だったのだろうか?

「ええ、護衛です。私はアイリーン様の父上、つまり国王陛下から頼まれて、彼女の代わりに魔法学校に通っているヤーマの護衛をしています。今は隠れ潜み助けに来る方をお待ちし、見極めていました」

 目が!?となっているリリアナが質問した。

「そうだったんですか?でも、どうしてそんなことをしたんですか?」

「それは・・・アイリーン様に危険が迫ってきているからです」

 ドナルドは経緯を説明した。
 彼は俺達に真剣に言った。

「アイリーン様は王族の血筋で、王都では有名な人物です。彼女は王族であることを隠して魔法学校に通っていましたが、それでも暗殺者や敵対者から狙われることがありました。彼女は自分の身を守るために、影武者を雇うことにしたのです。それにあの見た目ですから、バレていたでしょう」

「なるほど・・・それであなたが護衛になったのですね」

「はい。私はアイリーン様の分家筋の従兄妹に当たります。ヤーマは背格好が近いからと、騎士見習いの中から影武者に選ばれました。私はアイリーンの護衛として魔法学校に通っていました。ヤーマはアイリーン様の代わりに魔法学校に通っていました」  

「ドナルドさん。ヤーマさんは今近くにいるのですか?」

「はい」

「これを彼女に見せ、馬車に連れてきてください」

 俺はアイリーンの直筆の札を渡した。
 当たり障りのない文字が書かれている。

「筆跡から分かるでしょう?」

「分かりました。ではお待ち下さい」
  
 ドナルドが宿に入り、間もなくドナルドがハーニャの姿をした少女と現れた。
 俺、アイリーン、リリアナ、騎士隊長が乗っていたが窓越しでも間違いない。

「リリアナ様、姿を確認しました。間違いなく探していた人物です」

 俺は急ぎ馬車に乗せた。

 リリアナが即時に質問攻めにした。

「どうして2人は制服姿になったのですか?」

「それは・・・卒業式だからです」

 ドナルドは答えた。彼は俺達に申し訳なさそうに言った。

「卒業式だから?」

「はい。卒業式はアイリーン様が出席しなければならない大事な行事です。彼女はこれからアイリーン様の姿に変わります。魔道具で変えられます」

「魔道具で姿を変えることができる?」

「はい。姿を交換し、変身するのです。それにより姿や声や匂いを自在に変えることができます。背丈は無理ですが、彼女はアイリーン様の姿に変わって、再び学校に戻り卒業式に出席しなければなりません」

「でも、どうして卒業式に出るまで行方をくらませたのですか?」

「それは・・・アイリーン様の婚約者たるセルカッツさん達と合流するためです」

 ドナルドはそう言って、俺を見た。  彼は俺に優しく微笑んだ。

「セルカッツさんと合流するため?」

「はい。セルカッツさんはアイリーン様の婚約者ですよね?私はアイリーン様からセルカッツさんのことを聞いていました」

「リリアナ様、今まで黙っていて申し訳ありませんでした。いままで彼女の姿を見られないようにしていましたが、彼女が本物のアイリーンで、彼女はアイリーンの影武者のヤーマさんです」

「お初にお目にかかります。アイリーン様の影武者をしておりますヤーマと申します。貴方がセルカッツ様ですね?アイリーン様、お元気そうで何よりです」

「ヤーマ、今まで苦労を掛けました。しかし、それも今日で最後です。卒業式の後は指輪を外し、姿を変えて宿まで逃げなさい。ダイランド家に着いたらその後の事を考えましょう」

 そう言うと更にリリアナさんの混乱に拍車が掛かった・・・
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