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第115話 影武者
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アイリーンは奴隷に偽装していた。
今思えばハーニャが父の手を握っていたのは不安からだろう。
兄と言っていたが、年の離れた従兄妹だからのようだ。
実は少しだけど、父に嫉妬した。ハーニャも父もお互い親子とか、兄妹に対する愛情しか持ち合わせていないことが分かりホッとした。
しかし、婚約者とは中々会えないなと思っていたら、既に12歳の時に同じ屋敷にいたとは。
俺はハーニャに対して距離をおいていた。
父の慰み用か、政治的な駆け引きで、下半身で釣る相手に譲る奴隷とし、感情移入するとろくなことがないと殆ど顔も見てこなかった。
「セル様、髪の毛の色はね、高価なマジックアイテムを使えば変更出来るのよ。それこそ姿見サイズの鏡が買える値段なの」
「何でそんな事をする羽目になったんだ?」
「それはな、これからあの国は内戦に入るからだ。アイリーンはその内戦の折に暗殺されるんだよ。そろそろ影武者が殺されるはずだ」
「えっ?ちょっと待ってください!ヤーマが殺されるってどういうことなの?」
・
・
・
「儂が第3王子ならそうするからだ」
「ごめんなさい!ヤーマ!なんてことに!」
「今から助けに行けないのか?」
「正直ギリギリだな」
「顔は似ているのか?」
「今は分からないけど、影武者にするくらいだから似ているわ」
「よし!それじゃあ助けに行こう!俺には大義名分がある!婚約者を助けに行くだけだ!その後ハーニャと入れ替わり、ヤーマはハーニャとして生きればよいだろう?」
「セル様!ありがとう!間に合わなくてもその気持ちだけでも嬉しいわ。物心がついた時から双子のように育ったの!助けたいの!」
「皆はどう思う?」
「セル様の御心のままに!」
「助けるに決まっているでしょ!ハーニャの妹のような存在でしょ!」
「アルテイシアはどうする?」
「行きます!女の子が死にそうなのよ!行くに決まっています!」
「よし!幸いト馬車はダイランド家のがあるわ!」
懸念事項なども皆問題ないという。
「父さん、母さんの残した予知にはこの事は書いてあったのですか?」
「いや。儂がこの屋敷で呪いが解けるまで大人しくする事が唯一の生き残る道というのが最後だ。いや、この屋敷に来てお前の指示に従い、指示しろと。それがこの事かは分からぬが、お前が行くというのなら儂はお前を送り出さねばならぬ」
「分かりました。タニスとメイヤは食堂に皆を集めて!アルテイシアはイザベル、ネイリス、ヨルミクル、ウルナをここに呼んできてくれ。俺は父とハーニャと少し話すが、ここにはノック無しで来てくれ!」
そうして皆動き出した。
「父さんに1つお願いがあります」
「屋敷のことか?」
俺はふと机から鏡を持ってきた。
「はい。それもありますが、屋敷のを預けるのとは別に、商売というか、この鏡を目玉商品として扱う商会を立ち上げようとしているんだ。その準備をお願いしたい。また、領主様に懇意にしてもらっており、今から来るウルナが香水と鏡の作成のリーダーをしているから、彼女の助けを頼みたい。それと領主様の相手を。領主様も侯爵だけど・・・」
「うむ。この町の領主は知らぬ仲でもない。ただな、儂はこの屋敷に縛られておるから、領主を呼び付ける形になるぞ」
「はい。出発した時に立ち寄り、事情を話します。今のところ、まず大型の鏡を領主様にお譲りし、領主様にも利益を得てもらうので色々便宜を図ってもらっています」
「その路線を継続だな。他は?」
「洗濯板を作りました。香水も目玉商品となり、材料集めから作成までも秘密のレシピで行っています。それ以外の各種アイデアをウルナに託し、洗濯板の売上が落ちたら次の商品をとするのが、概要です」
「任せろ。居候ではなく、連れてきた者達の給金も賄えるよう儂が軌道に乗せてやる!」
そしてウルナ達が集まるまで詳細を話していった。
今思えばハーニャが父の手を握っていたのは不安からだろう。
兄と言っていたが、年の離れた従兄妹だからのようだ。
実は少しだけど、父に嫉妬した。ハーニャも父もお互い親子とか、兄妹に対する愛情しか持ち合わせていないことが分かりホッとした。
しかし、婚約者とは中々会えないなと思っていたら、既に12歳の時に同じ屋敷にいたとは。
俺はハーニャに対して距離をおいていた。
父の慰み用か、政治的な駆け引きで、下半身で釣る相手に譲る奴隷とし、感情移入するとろくなことがないと殆ど顔も見てこなかった。
「セル様、髪の毛の色はね、高価なマジックアイテムを使えば変更出来るのよ。それこそ姿見サイズの鏡が買える値段なの」
「何でそんな事をする羽目になったんだ?」
「それはな、これからあの国は内戦に入るからだ。アイリーンはその内戦の折に暗殺されるんだよ。そろそろ影武者が殺されるはずだ」
「えっ?ちょっと待ってください!ヤーマが殺されるってどういうことなの?」
・
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「儂が第3王子ならそうするからだ」
「ごめんなさい!ヤーマ!なんてことに!」
「今から助けに行けないのか?」
「正直ギリギリだな」
「顔は似ているのか?」
「今は分からないけど、影武者にするくらいだから似ているわ」
「よし!それじゃあ助けに行こう!俺には大義名分がある!婚約者を助けに行くだけだ!その後ハーニャと入れ替わり、ヤーマはハーニャとして生きればよいだろう?」
「セル様!ありがとう!間に合わなくてもその気持ちだけでも嬉しいわ。物心がついた時から双子のように育ったの!助けたいの!」
「皆はどう思う?」
「セル様の御心のままに!」
「助けるに決まっているでしょ!ハーニャの妹のような存在でしょ!」
「アルテイシアはどうする?」
「行きます!女の子が死にそうなのよ!行くに決まっています!」
「よし!幸いト馬車はダイランド家のがあるわ!」
懸念事項なども皆問題ないという。
「父さん、母さんの残した予知にはこの事は書いてあったのですか?」
「いや。儂がこの屋敷で呪いが解けるまで大人しくする事が唯一の生き残る道というのが最後だ。いや、この屋敷に来てお前の指示に従い、指示しろと。それがこの事かは分からぬが、お前が行くというのなら儂はお前を送り出さねばならぬ」
「分かりました。タニスとメイヤは食堂に皆を集めて!アルテイシアはイザベル、ネイリス、ヨルミクル、ウルナをここに呼んできてくれ。俺は父とハーニャと少し話すが、ここにはノック無しで来てくれ!」
そうして皆動き出した。
「父さんに1つお願いがあります」
「屋敷のことか?」
俺はふと机から鏡を持ってきた。
「はい。それもありますが、屋敷のを預けるのとは別に、商売というか、この鏡を目玉商品として扱う商会を立ち上げようとしているんだ。その準備をお願いしたい。また、領主様に懇意にしてもらっており、今から来るウルナが香水と鏡の作成のリーダーをしているから、彼女の助けを頼みたい。それと領主様の相手を。領主様も侯爵だけど・・・」
「うむ。この町の領主は知らぬ仲でもない。ただな、儂はこの屋敷に縛られておるから、領主を呼び付ける形になるぞ」
「はい。出発した時に立ち寄り、事情を話します。今のところ、まず大型の鏡を領主様にお譲りし、領主様にも利益を得てもらうので色々便宜を図ってもらっています」
「その路線を継続だな。他は?」
「洗濯板を作りました。香水も目玉商品となり、材料集めから作成までも秘密のレシピで行っています。それ以外の各種アイデアをウルナに託し、洗濯板の売上が落ちたら次の商品をとするのが、概要です」
「任せろ。居候ではなく、連れてきた者達の給金も賄えるよう儂が軌道に乗せてやる!」
そしてウルナ達が集まるまで詳細を話していった。
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