上 下
115 / 173

第115話 影武者

しおりを挟む
 アイリーンは奴隷に偽装していた。
 今思えばハーニャが父の手を握っていたのは不安からだろう。
 兄と言っていたが、年の離れた従兄妹だからのようだ。

 実は少しだけど、父に嫉妬した。ハーニャも父もお互い親子とか、兄妹に対する愛情しか持ち合わせていないことが分かりホッとした。

 しかし、婚約者とは中々会えないなと思っていたら、既に12歳の時に同じ屋敷にいたとは。

 俺はハーニャに対して距離をおいていた。
 父の慰み用か、政治的な駆け引きで、下半身で釣る相手に譲る奴隷とし、感情移入するとろくなことがないと殆ど顔も見てこなかった。

「セル様、髪の毛の色はね、高価なマジックアイテムを使えば変更出来るのよ。それこそ姿見サイズの鏡が買える値段なの」

「何でそんな事をする羽目になったんだ?」

「それはな、これからあの国は内戦に入るからだ。アイリーンはその内戦の折に暗殺されるんだよ。そろそろ影武者が殺されるはずだ」

「えっ?ちょっと待ってください!ヤーマが殺されるってどういうことなの?」

 ・
 ・
 ・

「儂が第3王子ならそうするからだ」

「ごめんなさい!ヤーマ!なんてことに!」

「今から助けに行けないのか?」

「正直ギリギリだな」

「顔は似ているのか?」

「今は分からないけど、影武者にするくらいだから似ているわ」

「よし!それじゃあ助けに行こう!俺には大義名分がある!婚約者を助けに行くだけだ!その後ハーニャと入れ替わり、ヤーマはハーニャとして生きればよいだろう?」

「セル様!ありがとう!間に合わなくてもその気持ちだけでも嬉しいわ。物心がついた時から双子のように育ったの!助けたいの!」

「皆はどう思う?」

「セル様の御心のままに!」

「助けるに決まっているでしょ!ハーニャの妹のような存在でしょ!」

「アルテイシアはどうする?」

「行きます!女の子が死にそうなのよ!行くに決まっています!」

「よし!幸いト馬車はダイランド家のがあるわ!」

 懸念事項なども皆問題ないという。

「父さん、母さんの残した予知にはこの事は書いてあったのですか?」

「いや。儂がこの屋敷で呪いが解けるまで大人しくする事が唯一の生き残る道というのが最後だ。いや、この屋敷に来てお前の指示に従い、指示しろと。それがこの事かは分からぬが、お前が行くというのなら儂はお前を送り出さねばならぬ」

「分かりました。タニスとメイヤは食堂に皆を集めて!アルテイシアはイザベル、ネイリス、ヨルミクル、ウルナをここに呼んできてくれ。俺は父とハーニャと少し話すが、ここにはノック無しで来てくれ!」

 そうして皆動き出した。

「父さんに1つお願いがあります」

「屋敷のことか?」

 俺はふと机から鏡を持ってきた。

「はい。それもありますが、屋敷のを預けるのとは別に、商売というか、この鏡を目玉商品として扱う商会を立ち上げようとしているんだ。その準備をお願いしたい。また、領主様に懇意にしてもらっており、今から来るウルナが香水と鏡の作成のリーダーをしているから、彼女の助けを頼みたい。それと領主様の相手を。領主様も侯爵だけど・・・」

「うむ。この町の領主は知らぬ仲でもない。ただな、儂はこの屋敷に縛られておるから、領主を呼び付ける形になるぞ」

「はい。出発した時に立ち寄り、事情を話します。今のところ、まず大型の鏡を領主様にお譲りし、領主様にも利益を得てもらうので色々便宜を図ってもらっています」

「その路線を継続だな。他は?」

「洗濯板を作りました。香水も目玉商品となり、材料集めから作成までも秘密のレシピで行っています。それ以外の各種アイデアをウルナに託し、洗濯板の売上が落ちたら次の商品をとするのが、概要です」

「任せろ。居候ではなく、連れてきた者達の給金も賄えるよう儂が軌道に乗せてやる!」

 そしてウルナ達が集まるまで詳細を話していった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?

さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。 僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。 そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに…… パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。 全身ケガだらけでもう助からないだろう…… 諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!? 頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。 気づけば全魔法がレベル100!? そろそろ反撃開始してもいいですか? 内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

練習船で異世界に来ちゃったんだが?! ~異世界海洋探訪記~

さみぃぐらぁど
ファンタジー
航海訓練所の練習船「海鵜丸」はハワイへ向けた長期練習航海中、突然嵐に巻き込まれ、落雷を受ける。 衝撃に気を失った主人公たち当直実習生。彼らが目を覚まして目撃したものは、自分たち以外教官も実習生も居ない船、無線も電子海図も繋がらない海、そして大洋を往く見たこともない戦列艦の艦隊だった。 そして実習生たちは、自分たちがどこか地球とは違う星_異世界とでも呼ぶべき空間にやって来たことを悟る。 燃料も食料も補給の目途が立たない異世界。 果たして彼らは、自分たちの力で、船とともに現代日本の海へ帰れるのか⁈ ※この作品は「カクヨム」においても投稿しています。https://kakuyomu.jp/works/16818023213965695770

ざまぁから始まるモブの成り上がり!〜現実とゲームは違うのだよ!〜

KeyBow
ファンタジー
カクヨムで異世界もの週間ランク70位! VRMMORゲームの大会のネタ副賞の異世界転生は本物だった!しかもモブスタート!? 副賞は異世界転移権。ネタ特典だと思ったが、何故かリアル異世界に転移した。これは無双の予感?いえ一般人のモブとしてスタートでした!! ある女神の妨害工作により本来出会える仲間は冒頭で死亡・・・ ゲームとリアルの違いに戸惑いつつも、メインヒロインとの出会いがあるのか?あるよね?と主人公は思うのだが・・・ しかし主人公はそんな妨害をゲーム知識で切り抜け、無双していく!

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

処理中です...