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第37話 AEDはないのだよ
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巨躯の割に素早い動きだったが、タニスは冷静に対処し、自ら後ろに倒れ込みながらその腕を掴むと、巴投げを決めた。
ミジックルはリングの外に出るどころか、闘技場の壁に激突して力なく崩れ落ちたが・・・息をしていなかった・・・
タニスは柔よく剛を制するがごとく、相手の勢いを利用して投げ飛ばしたが、体重もそうだがタニスのレベルも相まってミジックルは盛大に飛んでいった。
倒れているミジックルの様子は明らかにおかしく、同じような風体の仲間がミジックルに駆け寄る。
審判も駆け寄り慌てている感じだな。
俺も見に行くが口から泡を吹いており、胸は上下していない。
「回復魔法持ちです。見させて下さい」
そう言ってミジックルに駆け寄るも、やはり息をしていない。
その生命の灯火は刻一刻と消えて行くのが分かる。
俺は初級だが治療魔法を行えるので、頭から血を流しているミジックルへ治療魔法を掛ける。
しかし依然として息を吹き返さない。
仕方がないのでナイフで胸当てを止めるバンドを切り裂き、左胸を露出した。
「雷魔法を使える人はいませんか?」
すると1人の女性と言うか、少女が名乗り出て来た。
「なるほど、AEDの代わりね」
そう呟いたが、俺にはその呟いた内容まで聞こえなかった。
「行けますか?」
「胸に当てれば良いのね?」
「察しが良くて助かります!皆さん離れて!」
その少女の手に魔法陣が浮き上がると、その手をミジックルに向けた。
するとバリバリバリバリと耳を劈く轟音がし、ミジックルが雷に打たれ胸に火傷を負った。
俺は急ぎ治療をする・・・
しかし駄目だ。
「もう1発行けますか?」
「でもこれで終わりですよ!」
「お願いします!」
上品な少女だ。
魔力の限界か?試合に出ていて魔力を温存しようとしたのか?
武闘大会の参加者か付き人だろうか?
どの道、闘技場の競技場所に入っていた者だ。
バリバリバリバリ!
轟音が轟くと再び肉の焼ける臭いがし、胸が焼けただれたがミジックルはゴホゴホと咳き込んだ。
競技場の回復師も駆け付け、以後の治療を引き受けてくれた。
観客席の下にあるスペースに救護所があり、本来はそこに怪我人を運び入れる。
顔をよく見ていなかったが、お礼を言おうと振り向いた時には既にその少女は消え失せていた。
ただ、何となくゲームで見た事があるような気もしなくはなかったが、縁があればまた遭遇するだろうから、その時にお礼をすれば良い。
「いや~スンゴイ音でしたねぇ!ミジックルさんは死んだのかなと思いましたがあ!治療師さんのお陰で一命を取り留めたぁぁ!勝者ぁ!氷艶の魔眼所属タニスぅ!」
タニスが俺の所に来た。
「セル様?あれは何を?」
「ああ。ミジックルが死んだんだよ。正確にはあのままだと死んでいたな」
「えっ?でもセル様は死者蘇生なんて出来ませんよね?」
「ああ。だけどまだ心臓が動く可能性があったし、あの少女があそこにいたのは本当に奇跡と言うか、僥倖だなと言うか、あの少女がいなかったらミジックルは死んでいたはずだ。だからもしあの少女を見掛けたらお礼を言うんだよ」
「も、申し訳ありません!」
「済んだ事だし、死ななかったんだから良いよ。にしても巴投げなんていつ練習したんだ?隠れ家でやり方を教えただけだったのに」
「いえ。練習した訳じゃないの。咄嗟に投げただけなのに盛大に飛んだのよ!」
「よし。頑張ったな!」
俺はタニスの頭を撫でたが、不意に振り向いた。
誰かに見られている?気がしたが、これだけの観客の中だと良く分からない。
さっきの少女か、ミジックルの関係者だろうか?
もう少し話をしていたかったが、ネイリスの番が来た。
約1週間立ち回りだとか、ナイフの扱いだとか教えてきた。
無手の戦いや足技も少し教えたが、短期間ではあまり詰め込めなかった。
実戦経験も必要だからと魔物を狩りに行ったりもした。
お陰でナイフ部門の決勝トーナメントに残ったし、他の者と強さは遜色はない・・・はずだ。
あっ!いた!あの少女が!
棍、杖部門に出ていて、背丈程の杖を持っている。
この次がナイフだ。
斧とかじゃなくて良かったと思う。
初戦は圧巻だった。
勿論ルールありきだから分からないが、雷魔法を使う事から魔法使いなのだろう。
杖も如何にも魔法使いです!と言った物だ。
腰までの金髪をポニーテールにまとめており、メイヤと似たようなスタイル。
身長は多分俺より握りこぶし1つ近く低いが、この世界のこの年齢の女の子では普通と言われる身長だ。
キリッとしており、中々の美形だ。
いや、あと5年したらこの子を巡り戦争が起きても驚かないぞ。
俺に気が付いたのか会釈をし対戦相手に向き合う。
開始と共にその姿が消えた。
いや、その瞬間相手の男の子の眼前におり、杖の先の丸くなっている部分で棍を絡め取る。
「エイっ!」
その状態で杖の真ん中を左手、先を右手に持ちながら身体ごと回転した。
すると観客席まで相手の棍が飛んで行く。
「えっ?あれっ?そんな!僕のは?」
情けなく呟いていた。
「勝者、黒き薔薇所属 アルテイシア!」
おいおい、こいつ転生者だな!
隠すつもりはないのか?
まずこの世界に薔薇は存在しない。
またアルテイシアと言う名はどう考えてもアルテイシア・ソム・ダイクンの事だろう。
日本を代表する大昔のアニメだが、未だに話題に事欠かず超有名だ。
見た事がなくとも、主要登場人物の名を知っている日本人は多いだろう。
ネタか?
多分日本人だと反応するかもだからか?
お父さん世代が子供の頃に本放送をしていたから、その人達でも知っていて今の若者でも知っている可能性のある名前だ。
ミライとかヤシマ、フラウとか?
いや、人気からセイラ1択か?
総合で当たる可能性のある相手だが、縮地を使ったな?
分かっていれば対処は可能だ。
強い相手だが、素人だな。
あざといとしか思えないが、可愛らしい遠慮気味なガッツポーズを取る辺りは、歳相応の女の子だろうが。
他の手の内があるから縮地を使っているのか?
それとも彼女なりの勝つ為の作戦か?
俺なら縮地は可能なら決勝か、やばくなるまで使わない。
俺も温存している手や奥の手はあるがそう簡単には晒さないつもりだ。
声を掛けたかったが、ネイリスの試合を見ないといけないので断念した。
日本人と話をしてみたかったし、彼女に俄然興味が出てきた。
メイヤ達には悪いが、まだ子供とは言え、同郷の女に興味がある。
前世が売女だったり子持ちだったらどうしよう?と思わなくはないが・・・
コホン、ネイリスの試合を見ないとだ。
ミジックルはリングの外に出るどころか、闘技場の壁に激突して力なく崩れ落ちたが・・・息をしていなかった・・・
タニスは柔よく剛を制するがごとく、相手の勢いを利用して投げ飛ばしたが、体重もそうだがタニスのレベルも相まってミジックルは盛大に飛んでいった。
倒れているミジックルの様子は明らかにおかしく、同じような風体の仲間がミジックルに駆け寄る。
審判も駆け寄り慌てている感じだな。
俺も見に行くが口から泡を吹いており、胸は上下していない。
「回復魔法持ちです。見させて下さい」
そう言ってミジックルに駆け寄るも、やはり息をしていない。
その生命の灯火は刻一刻と消えて行くのが分かる。
俺は初級だが治療魔法を行えるので、頭から血を流しているミジックルへ治療魔法を掛ける。
しかし依然として息を吹き返さない。
仕方がないのでナイフで胸当てを止めるバンドを切り裂き、左胸を露出した。
「雷魔法を使える人はいませんか?」
すると1人の女性と言うか、少女が名乗り出て来た。
「なるほど、AEDの代わりね」
そう呟いたが、俺にはその呟いた内容まで聞こえなかった。
「行けますか?」
「胸に当てれば良いのね?」
「察しが良くて助かります!皆さん離れて!」
その少女の手に魔法陣が浮き上がると、その手をミジックルに向けた。
するとバリバリバリバリと耳を劈く轟音がし、ミジックルが雷に打たれ胸に火傷を負った。
俺は急ぎ治療をする・・・
しかし駄目だ。
「もう1発行けますか?」
「でもこれで終わりですよ!」
「お願いします!」
上品な少女だ。
魔力の限界か?試合に出ていて魔力を温存しようとしたのか?
武闘大会の参加者か付き人だろうか?
どの道、闘技場の競技場所に入っていた者だ。
バリバリバリバリ!
轟音が轟くと再び肉の焼ける臭いがし、胸が焼けただれたがミジックルはゴホゴホと咳き込んだ。
競技場の回復師も駆け付け、以後の治療を引き受けてくれた。
観客席の下にあるスペースに救護所があり、本来はそこに怪我人を運び入れる。
顔をよく見ていなかったが、お礼を言おうと振り向いた時には既にその少女は消え失せていた。
ただ、何となくゲームで見た事があるような気もしなくはなかったが、縁があればまた遭遇するだろうから、その時にお礼をすれば良い。
「いや~スンゴイ音でしたねぇ!ミジックルさんは死んだのかなと思いましたがあ!治療師さんのお陰で一命を取り留めたぁぁ!勝者ぁ!氷艶の魔眼所属タニスぅ!」
タニスが俺の所に来た。
「セル様?あれは何を?」
「ああ。ミジックルが死んだんだよ。正確にはあのままだと死んでいたな」
「えっ?でもセル様は死者蘇生なんて出来ませんよね?」
「ああ。だけどまだ心臓が動く可能性があったし、あの少女があそこにいたのは本当に奇跡と言うか、僥倖だなと言うか、あの少女がいなかったらミジックルは死んでいたはずだ。だからもしあの少女を見掛けたらお礼を言うんだよ」
「も、申し訳ありません!」
「済んだ事だし、死ななかったんだから良いよ。にしても巴投げなんていつ練習したんだ?隠れ家でやり方を教えただけだったのに」
「いえ。練習した訳じゃないの。咄嗟に投げただけなのに盛大に飛んだのよ!」
「よし。頑張ったな!」
俺はタニスの頭を撫でたが、不意に振り向いた。
誰かに見られている?気がしたが、これだけの観客の中だと良く分からない。
さっきの少女か、ミジックルの関係者だろうか?
もう少し話をしていたかったが、ネイリスの番が来た。
約1週間立ち回りだとか、ナイフの扱いだとか教えてきた。
無手の戦いや足技も少し教えたが、短期間ではあまり詰め込めなかった。
実戦経験も必要だからと魔物を狩りに行ったりもした。
お陰でナイフ部門の決勝トーナメントに残ったし、他の者と強さは遜色はない・・・はずだ。
あっ!いた!あの少女が!
棍、杖部門に出ていて、背丈程の杖を持っている。
この次がナイフだ。
斧とかじゃなくて良かったと思う。
初戦は圧巻だった。
勿論ルールありきだから分からないが、雷魔法を使う事から魔法使いなのだろう。
杖も如何にも魔法使いです!と言った物だ。
腰までの金髪をポニーテールにまとめており、メイヤと似たようなスタイル。
身長は多分俺より握りこぶし1つ近く低いが、この世界のこの年齢の女の子では普通と言われる身長だ。
キリッとしており、中々の美形だ。
いや、あと5年したらこの子を巡り戦争が起きても驚かないぞ。
俺に気が付いたのか会釈をし対戦相手に向き合う。
開始と共にその姿が消えた。
いや、その瞬間相手の男の子の眼前におり、杖の先の丸くなっている部分で棍を絡め取る。
「エイっ!」
その状態で杖の真ん中を左手、先を右手に持ちながら身体ごと回転した。
すると観客席まで相手の棍が飛んで行く。
「えっ?あれっ?そんな!僕のは?」
情けなく呟いていた。
「勝者、黒き薔薇所属 アルテイシア!」
おいおい、こいつ転生者だな!
隠すつもりはないのか?
まずこの世界に薔薇は存在しない。
またアルテイシアと言う名はどう考えてもアルテイシア・ソム・ダイクンの事だろう。
日本を代表する大昔のアニメだが、未だに話題に事欠かず超有名だ。
見た事がなくとも、主要登場人物の名を知っている日本人は多いだろう。
ネタか?
多分日本人だと反応するかもだからか?
お父さん世代が子供の頃に本放送をしていたから、その人達でも知っていて今の若者でも知っている可能性のある名前だ。
ミライとかヤシマ、フラウとか?
いや、人気からセイラ1択か?
総合で当たる可能性のある相手だが、縮地を使ったな?
分かっていれば対処は可能だ。
強い相手だが、素人だな。
あざといとしか思えないが、可愛らしい遠慮気味なガッツポーズを取る辺りは、歳相応の女の子だろうが。
他の手の内があるから縮地を使っているのか?
それとも彼女なりの勝つ為の作戦か?
俺なら縮地は可能なら決勝か、やばくなるまで使わない。
俺も温存している手や奥の手はあるがそう簡単には晒さないつもりだ。
声を掛けたかったが、ネイリスの試合を見ないといけないので断念した。
日本人と話をしてみたかったし、彼女に俄然興味が出てきた。
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