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第16話 野営
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大抵のゲームにはHPやMPはあるが、疲労度はまずない。
あっても動きが遅くなるとか、司会が狭くなったり、操作を上手く受け付けてくれなくなるような事はない。
この世界をモチーフにしたゲームでも同様だった。
現実世界では疲れもすれば眠気もあるし、お腹も空けば、排泄もする。
現実はゲームとは違う・・・
特に排泄は厄介だ。
片手鍋に魔法で水を張ると、リリアに鍋を持ってもらい、俺は火魔法を鍋の底に向けて発動する。
使うのは初級魔法ですらなく、その属性を持つ者なら誰でも使える魔法で、火属性の【ウォーター】、水属性の【ファイヤー】だ。
生活魔法とも言われているプチ魔法だ。
注ぎ込む魔力次第だが、火炎放射器並みに出せなくもない。
しかし、今必要なのはガスバーナー程度の炎を指先から出す事だ。
グツグツと煮えてきたので豆等の乾物を水で戻し、調味料を加えて温かい豆のスープを作る。
豆や調味料の投入とかをするのは勿論俺じゃない。
アリスに警戒をお願いし、シーナが調理をする。
調理が終わるとシーナが各自のお椀によそおってくれた。
警戒をする都合、背中を向け合い全方位を見渡して食する。
「これくらいの物しか出来ず申し訳ありません」
「いや、これ以上を望んだら罰が当たるよ。それに食材を用意したのは俺だからね」
まだ大して町から離れていないので、3人共一刻も早く離れたいとの思いからだろうが焦りが見える。
休憩時間が少し短いが、3人の精神衛生上早目に出発した。
地下水や雨天時に多少流れる程度で、チョロチョロとしか水は流れていないが、これから向かう所の方が標高が高く、ゲームでは水路の先にある川が大雨で氾濫し、その後この水路に水が流れるはずだ。
だからもしも次に来るとしたら、ここは腰まで浸かる程の水路になっていると思う。
疲れからか3人の口数が段々少なくなっていった。
この水路は強力な魔物が闊歩する森の地下を通っており、安全に森を迂回する形になる。
半日程で通過できて安全なはずだけど、3人は不安から歯を食いしばりながら歩くしか無かった。
時折休憩するが、俺はその度に3人の脹脛を撫で回すのではなく揉み解した。
それはそれとして、最後に優しく1撫でする事は必要なんだけどね。
女の子特有の柔らかさは、旅に慣れていない町の人特有のものだ。
シーナには時折町中を一緒に歩かせて体力をつけてきたが、リリアとアリスはそうではない。
シーナは俺の勝手に付き合わせる事が出来たが、2人はそうではない。
3人共マッサージを遠慮したが、少しでも楽になれば歩く速さが維持出来るからと有無を言わせなかった。
ポチャン・・・ポチャン・・・
時折湧き水等だろうか、染み込んだ水が上から落ちる音以外、俺達の足音と息遣いの音しか聞こえない。
静寂の中歩き続けていた。
ようやく水路を抜けたが、外はもう暗くなっていた。
危険な森の中の藪の中に入口があったので、一旦水路の中に戻ってそこで野営をする事にした。
俺1人ならともかく、今の俺達では相手にするのが厳しい魔物がいる森の中を1時間以上歩くのは自殺行為以外の何物でもない。
少なくとも1時間は歩く事になる。
本来だとどう頑張っても12時間以上森の中を進むはずだった。
歩き難いし、獣道しかなく警戒しながらだと踏破するのに3日は掛かると言われている。
それを半日程で進んだし、元々水路の中で野営をする事は想定しており、今は夜から朝に掛けてそれなりに冷え込むので毛布を2枚持ってきていた。
又もや豆を煮た食事になるが、それでも暖かい食事に皆満足だ。
2班に別れ、見張りと休息を取る。
俺はアリスと一緒だ。
アリスが1番体力がないからだ。
最初の見張りを俺とアリスがする為、2人用の小さなテントを出した。
2人は毛布を床に敷き、マントを掛けて横になるとすぐに寝息を立てた事が分かった。
俺は壁にもたれ掛かると、アリスを前に座らせた。
「ライ?ひょっとして私を?」
「うん。寒いからさ、こうやってアリスを抱きしめると、暖かいんだ。どう?」
「えっ?あっ、はい。そうね。うん、暖かいわ」
勿論アリスが何を言おうとしていたのかは分かる。
性的に求める、例えば胸を揉みしだいたりするのか?と言い掛けたのだと分かる。
それを促したまでもある。
残念ながら俺は鈍かったり、3人が俺に本気で惚れている事に気が付いていない訳でもない。
俺は大人の女しか抱くつもりはない。
例え今、3人が裸になり股を開いてきても相手にしない。
愛しているのではなく、俺に縋っていかないと生きられないから、俺に依存しているだけであってフェアじゃない。
シーナは好いてくれているけど、主人と奴隷、仕える者と主の延長でしかない。
敬語を禁止させたのは、普通の男女として接し、それでも好いてくれるならその時は俺も全力でその気持ちに応えたいからだ。
ボロが出るとかは無理矢理理屈をつけたに過ぎない。
でもこうやってだけど、女の子を抱きしめるのも悪くはない。
柔らかく暖かい。
この冷え込みに人の温もりというのは何にも代え難く、まるで湯たんぽのようだ。
俺が前に抱えているアリスは、船を漕ぎ始めると直に寝ていった・・・
あっても動きが遅くなるとか、司会が狭くなったり、操作を上手く受け付けてくれなくなるような事はない。
この世界をモチーフにしたゲームでも同様だった。
現実世界では疲れもすれば眠気もあるし、お腹も空けば、排泄もする。
現実はゲームとは違う・・・
特に排泄は厄介だ。
片手鍋に魔法で水を張ると、リリアに鍋を持ってもらい、俺は火魔法を鍋の底に向けて発動する。
使うのは初級魔法ですらなく、その属性を持つ者なら誰でも使える魔法で、火属性の【ウォーター】、水属性の【ファイヤー】だ。
生活魔法とも言われているプチ魔法だ。
注ぎ込む魔力次第だが、火炎放射器並みに出せなくもない。
しかし、今必要なのはガスバーナー程度の炎を指先から出す事だ。
グツグツと煮えてきたので豆等の乾物を水で戻し、調味料を加えて温かい豆のスープを作る。
豆や調味料の投入とかをするのは勿論俺じゃない。
アリスに警戒をお願いし、シーナが調理をする。
調理が終わるとシーナが各自のお椀によそおってくれた。
警戒をする都合、背中を向け合い全方位を見渡して食する。
「これくらいの物しか出来ず申し訳ありません」
「いや、これ以上を望んだら罰が当たるよ。それに食材を用意したのは俺だからね」
まだ大して町から離れていないので、3人共一刻も早く離れたいとの思いからだろうが焦りが見える。
休憩時間が少し短いが、3人の精神衛生上早目に出発した。
地下水や雨天時に多少流れる程度で、チョロチョロとしか水は流れていないが、これから向かう所の方が標高が高く、ゲームでは水路の先にある川が大雨で氾濫し、その後この水路に水が流れるはずだ。
だからもしも次に来るとしたら、ここは腰まで浸かる程の水路になっていると思う。
疲れからか3人の口数が段々少なくなっていった。
この水路は強力な魔物が闊歩する森の地下を通っており、安全に森を迂回する形になる。
半日程で通過できて安全なはずだけど、3人は不安から歯を食いしばりながら歩くしか無かった。
時折休憩するが、俺はその度に3人の脹脛を撫で回すのではなく揉み解した。
それはそれとして、最後に優しく1撫でする事は必要なんだけどね。
女の子特有の柔らかさは、旅に慣れていない町の人特有のものだ。
シーナには時折町中を一緒に歩かせて体力をつけてきたが、リリアとアリスはそうではない。
シーナは俺の勝手に付き合わせる事が出来たが、2人はそうではない。
3人共マッサージを遠慮したが、少しでも楽になれば歩く速さが維持出来るからと有無を言わせなかった。
ポチャン・・・ポチャン・・・
時折湧き水等だろうか、染み込んだ水が上から落ちる音以外、俺達の足音と息遣いの音しか聞こえない。
静寂の中歩き続けていた。
ようやく水路を抜けたが、外はもう暗くなっていた。
危険な森の中の藪の中に入口があったので、一旦水路の中に戻ってそこで野営をする事にした。
俺1人ならともかく、今の俺達では相手にするのが厳しい魔物がいる森の中を1時間以上歩くのは自殺行為以外の何物でもない。
少なくとも1時間は歩く事になる。
本来だとどう頑張っても12時間以上森の中を進むはずだった。
歩き難いし、獣道しかなく警戒しながらだと踏破するのに3日は掛かると言われている。
それを半日程で進んだし、元々水路の中で野営をする事は想定しており、今は夜から朝に掛けてそれなりに冷え込むので毛布を2枚持ってきていた。
又もや豆を煮た食事になるが、それでも暖かい食事に皆満足だ。
2班に別れ、見張りと休息を取る。
俺はアリスと一緒だ。
アリスが1番体力がないからだ。
最初の見張りを俺とアリスがする為、2人用の小さなテントを出した。
2人は毛布を床に敷き、マントを掛けて横になるとすぐに寝息を立てた事が分かった。
俺は壁にもたれ掛かると、アリスを前に座らせた。
「ライ?ひょっとして私を?」
「うん。寒いからさ、こうやってアリスを抱きしめると、暖かいんだ。どう?」
「えっ?あっ、はい。そうね。うん、暖かいわ」
勿論アリスが何を言おうとしていたのかは分かる。
性的に求める、例えば胸を揉みしだいたりするのか?と言い掛けたのだと分かる。
それを促したまでもある。
残念ながら俺は鈍かったり、3人が俺に本気で惚れている事に気が付いていない訳でもない。
俺は大人の女しか抱くつもりはない。
例え今、3人が裸になり股を開いてきても相手にしない。
愛しているのではなく、俺に縋っていかないと生きられないから、俺に依存しているだけであってフェアじゃない。
シーナは好いてくれているけど、主人と奴隷、仕える者と主の延長でしかない。
敬語を禁止させたのは、普通の男女として接し、それでも好いてくれるならその時は俺も全力でその気持ちに応えたいからだ。
ボロが出るとかは無理矢理理屈をつけたに過ぎない。
でもこうやってだけど、女の子を抱きしめるのも悪くはない。
柔らかく暖かい。
この冷え込みに人の温もりというのは何にも代え難く、まるで湯たんぽのようだ。
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