異世界の約束:追放者の再興〜外れギフト【光】を授り侯爵家を追い出されたけど本当はチート持ちなので幸せに生きて見返してやります!〜

KeyBow

文字の大きさ
上 下
1 / 173

第1話 プロローグ

しおりを挟む
 俺は現在、不思議な空間を漂っている。
 何だかよく分からないが、ふわふわとした感触があり、実際に見えている視界も上下しているようだ。

 俺の目の前には何かがいた。

 どうやら服装から俺の目の前に座っていたのは女性のようで、俺の位置からだと手に持っていた本か手帳のような物の為に顔が隠れていた。

 しかし、俺がその女性に気付いた途端に本がふっと消え、女性の顔が明らかになった


 そこにいたのは白いワンピースを着た生意気そうな美少女だ。
 その美しさはあり得ないほどだが、その存在自体がまるで非現実的なもののようだ。

 ほんのりしたピンク色の髪は神秘的なオーラのような何かを感じた。
 俺の存在に気が付いたのか、話し掛けてきた。

「私は女神テトラス。混乱していないで貴方の身に何が起ったのかを・・・思い出しなさい・・・」

 数秒間の沈黙の後、自分が死んだのだと思いだした・・・。

「貴方は死にました」

 俺は30歳のシステムエンジニアだ。

 井野口 孝志(いのぐち たかし)

 数年前から自社のサーバーの老朽化と、リプレイスの必要性について再三に渡り警告をして来たが、情報部門を軽視した経営陣が聞き入れる事はなかった。
 数年待たなければ予算は組めないから既存の物をなんとか工夫して延命しろと。
 しかし、破綻寸前のハードを無理やりソフト的に逃がす事で何とか稼働させて来たが、これ以上出来なくなっていた。
 
 ハードを一新するよう数年前から警告していたが、遂に危惧していたというか、警告していた原因でのシステムダウンが起こった。 
 社内ネットワークが繋がりにくくなり、丸1日以上業務が停止した。

 グループ会社を含め約3万人の業務が書類を使い、FAXも紙を流す前世代のやり方で急場を凌ぐ事になったはずだ。

 冗長性を持たせていたハードだが、よりによってこの数日の間に同じモジュールが3度も故障した。
 メーカーにもハードの在庫がなく、本来会社にあるはずの予備機はまだ修理から帰ってきていなかった。

 不具合を抱えたハードを使わざるを得ない為ログを追い、不具合箇所の特定と、ロジックを調べ上げて不具合箇所を切り離したり回避したりと急遽サーバーを稼働させる為のプログラムを無理矢理作りあげた。
 
 そして応急処置の為のプログラムが完成し、検証とテストを終えてシステムが全面復旧したのはサーバーがダウンしてから26時間程経過していた頃だった。
 社畜の俺は無茶な要請に逆らえず、不眠不休でやっていた。

 【超絶ブラックだ!
 もう辞めてやる!もう嫌だ!
 数年前から警告していたのに、ダウンが俺達システム屋の責任にさせられそうになったんだ!】

 ・・・酷いよな!?

 フラフラな状態で帰宅しようと帰路に就いていたが、交差点で信号待ちをしている所に・・・居眠り運転のトラックに突っ込まれ即死した。
 トラックに気が付いたがふらふらなのもあり、足がもつれて避けられなかった。

 思い出したのと、スプラッターになり自分が死んだ時の映像を見せられたりしたのもあり、俺は死んだんだなあ・・・と理解した。

「貴方には2つの選択肢があります。1つは何もせず通常死した者として輪廻転生の渦に飲まれ、魂が漂白されて別の魂として転生するか、私の求めに応じてこちらの指定する先に転生するかです。その場合は記憶を持ったまま転生する事が可能です。説明を聞きますか?」

「記憶をって、興味があります。もう少し詳しく聞きたいです」

 俺は異常事態だというのにこの女の言う事が真実なのだと信じ、応じる前提で話を聞いた。

 話はこうだ。
 俺がプレイしていたゲームは、死期の近い者でかつこれから行く世界で力を発揮できるポテンシャルを秘めた者が主に食いつくようになっており、これから行く世界の世界観をゲームにして歴史などを遊びながら学んだ。

 14歳前後で覚醒するが、それまでは前世の記憶が曖昧だとか。
 その世界の住人として生まれ変わる。
 魂が定着するのに通常は10~14年掛かり、定着すると前世の記憶が蘇る。

 ゲーム通りで剣と魔法のファンタジー世界に行く。
 魔王が勢力を拡大し、魔王を討ち滅ぼす事がこの自称女神の願いで、何百人かを送り込みたいと言う。

 行き先はゲームの舞台となるラージリオン。
  タイトルもまんまラージリオンオンライン。
 仮想現実を舞台にしたいわゆるVRMMORPG。
 そこ、つまりラージリオンの世界では1年に1度、14歳になった者にギフトが与えられる。
 転生者には本来のラージリオンの住人では得られない特別なギフト等の特典を与える予定だという。

 「そうねぇ。特典のない者が魔王を討ち滅ぼす事は無理だから、何かしらの特典を与えちゃうね!うふふ!チートを期待しても良いわよ!それにねぇ、魔王が死んだら皆もう自由にしちゃうわよ!俺THUEEEしてハーレムを作り、ウハウハな異世界ライフを堪能しても良いのよ!そうそう、一夫多妻だからって身の丈に合わない女の子を囲うと痛い目に遭うけど、強い男はモテるわよ!女の子には優しくね!」

 よく分からないが、話していた事は受託しなければ完全な死が待っており、女の求めに応じて受託すれば別の世界に転生し、魔王なる者を討伐する。
 それと急に口調が生意気な女のそれに変わった。

 その後はチート能力を使い、ハーレムを築く事も可能だとか、まるで媚びるかのような内容で、男にとって都合のよい事を並べ立てていたな。
 
 とは言え、現実問題として、胡散臭かろうが、死んでしまった俺に最早選択の余地なんか有りはしない。
 女性との性的な事については風俗でしか経験がなく、素人童貞の俺にハーレムなんて言われてもなあ・・・

 年齢=彼女いない歴な俺にそんな話をしてどうすんだよ!

 まあ新たな世界でやり直しが出来るのは悪くはない。

「よく分からないが分かった。転生を受入れてやるよ。だが、ちゃんとチート能力と恋人になる運命の女性と出会えるようにしといてくれよ。そうだなぁ、まあ1人で良いからさ。出来れば金持ちの家が良いな。行ってやるから有り難く思えよ!」

 俺は強気に出る事にした。
 こんな手の込んだ事をするのだから困っているのだろう。

「あら行ってくれるのねぇ。勿論チートはあげるけどぉ、お前は私に向かって生意気よねぇ。お前以外にも同じ状況の人がいるのよぉ。だからお前は苦労すると良いわ。精々私の為に頑張って死なないように足掻きなさいね!じゃあ行ってらっさ~い。プププ!」

 何がプププだよ!舐めやがって!しかも行ってらっさいだと!そんな事を心の中で毒づいた次の瞬間、俺の意識はブラックアウトした。




後書き失礼します。
新作の【忘却の艦隊】もよろしくお願いします!
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

イレギュラーから始まるポンコツハンター 〜Fランクハンターが英雄を目指したら〜

KeyBow
ファンタジー
遡ること20年前、世界中に突如として同時に多数のダンジョンが出現し、人々を混乱に陥れた。そのダンジョンから湧き出る魔物たちは、生活を脅かし、冒険者たちの誕生を促した。 主人公、市河銀治は、最低ランクのハンターとして日々を生き抜く高校生。彼の家計を支えるため、ダンジョンに潜り続けるが、その実力は周囲から「洋梨」と揶揄されるほどの弱さだ。しかし、銀治の心には、行方不明の父親を思う強い思いがあった。 ある日、クラスメイトの春森新司からレイド戦への参加を強要され、銀治は不安を抱えながらも挑むことを決意する。しかし、待ち受けていたのは予想外の強敵と仲間たちの裏切り。絶望的な状況で、銀治は新たなスキルを手に入れ、運命を切り開くために立ち上がる。 果たして、彼は仲間たちを救い、自らの運命を変えることができるのか?友情、裏切り、そして成長を描くアクションファンタジーここに始まる!

ザコ魔法使いの僕がダンジョンで1人ぼっち!魔獣に襲われても石化した僕は無敵状態!経験値が溜まり続けて気づいた時には最強魔導士に!?

さかいおさむ
ファンタジー
戦士は【スキル】と呼ばれる能力を持っている。 僕はスキルレベル1のザコ魔法使いだ。 そんな僕がある日、ダンジョン攻略に向かう戦士団に入ることに…… パーティに置いていかれ僕は1人ダンジョンに取り残される。 全身ケガだらけでもう助からないだろう…… 諦めたその時、手に入れた宝を装備すると無敵の石化状態に!? 頑張って攻撃してくる魔獣には申し訳ないがダメージは皆無。経験値だけが溜まっていく。 気づけば全魔法がレベル100!? そろそろ反撃開始してもいいですか? 内気な最強魔法使いの僕が美女たちと冒険しながら人助け!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

処理中です...