上 下
14 / 49
序章 奴隷編

奴隷5日目

しおりを挟む
 大輔は翌朝になり漸く目覚めた。
 先日のようにケイトが手を握っていて、また同じ状況だった。

 大輔が目を開けるとそこには目を赤く腫らしたケイトがいた。

「ごめんねケイト。また迷惑をかけたようだね。どれぐらいの時間が経ったのか教えてもらえるかな」

「ダイス様のバカ!死んじゃうんじゃないかとまた心配したんですからね!うん、今は一晩経ってそろそろ朝食の時間ですよ。はいどうぞ」


 そうやって水の入ったグラスを差し出す。大輔は受け取って一気に飲み干しグラスをテーブルに置き

「ありがとうケイト。いつも助かるよ。それとちゃんした服を買ってもらったんだね。よかった。よく似合っているよ」

 ケイトは白いワンピースを着ていてなかなか似合っていたので、似合うよと褒めるとケイトはニコニコしながら

「うん。ありがとう。本当に良くして頂いて感謝してます。それよりお腹減ったでしょ?今朝食を取ってくるのでちょっと待っていてくださいね」


 大輔は食堂に行くには体がだるかった。なので今回はケイトにお願いしたのだ。ほどなくしてパンやらスープを二人分持ってきたケイトが現れた。

 そしてささやかな朝食を二人で頂き、身支度の後座長の所に行かなければならなかった。
 食後に座長の部屋を訪れた。丁度ガラグもいて、新人戦についての話になった。今日からしばらくは筋力トレーニングなどの体力面の強化を行うことになった。
 技術的な方は今の段階では特に教える事が無さそうだが、それよりも技術があってもそれを使いこなすだけの体力がない方が問題であった。
 今日もこれから練習場で訓練を行う。それと行動範囲に変更をかけられた。闘技場の外周を走り込めと命ぜられたからだ。闘技場の中は駄目だが、外であれば多くの者が走り込みをして体力づくりを行う。但し、奴隷の間は基本闘技場の外に出ることが禁じられている。なのでトレーニングのために闘技場の外周を走る許可をもらったのだ。

 そうして今朝のトレーニングに参加すべくガラグと座長の部屋を後にするのであった。

 まずはランニングで、闘技場の周りを回る。闘技場の入口の所がアンダーパスになっていて競技場の外周は完全なランニングコースになっており、メンテナンスでもしていない限りランニングの邪魔をする者はいない。

 次に軽く腕立て伏せやスクワットなど体力作りの為のトレーニングを行う。そして組み合っての格闘技だ。力が拮抗したりなどして力試しをしたりする。そういうのでも筋力がつくのと戦い方を覚えるのと一石二鳥なのだと言う。

 実際のところは分からないが、大輔には格闘術がない。せいぜいテレビで見知った一般的な柔道技の知識だけである。
 当然だが知識はあるが技術がない。体が出来上がったらいずれは柔道技も試してみようとは思っていた。

 先日のように剣先が折れたりして武器がなくなった時に格闘術が頼りだ。それを先日思い知ったのた。

 本当は戦いたくはないが、逆らえない状態の為戦い方を覚え、生き残る術を身につけねばならない。なぜか武器を使った戦闘ができるというよりも、どういうわけか殺した相手のスキルを自分に合わせて勝手に変更され、モノにしているという事が分かっている。

 ケイトが大輔の事を勇者だと言っていた。漫画や小説などにある異世界召喚というやつだろうか?と不思議がっていた。ただ召喚された割にはいきなり砂漠に放り出されて奴隷にされているという不遇な状況だ。大輔はだんだん腹が立ってきて組み合っているガラグに大外刈りをかけてしまった。

 なぜかあっさり決まり、ガラグが驚いていた。咄嗟の事とはいえさすがに猛者である。受け身を取ってダメージを最小限に抑えていた。

「い坊主今のは何だ?見た事のない技だな?」

「はい、これは私の国に伝わる格闘術です。自分も見た事は有りますが、行った事はなかったのですが、物は試しとやってみたらたまたま決まっただけです」

「そうか。お前の体は確かに格闘をやっていた者の鍛え方ではないのが分かるが、知識はあるのだな。良かったらその技というのを他にも持っているならば教えてくれないか?」

 流石に猛者である。一度見ただけで大輔が他にも技を持っているというよりも知識を持っているというのを見極めていた。

 大輔も分かっている。技を持っている者と練習した方が上達も早いし、受け身の練習もできる。

 確か柔道の練習は一人で飛んで畳に倒れこんだ時に受け身を取るという練習をしたのではなかったかと思うのだが、残念ながら畳はない。練習場の地面は土である。しっかり受け身を取らないとあっという間に大きな怪我をしてしまう。

 柔道の技もテレビで見て知ってはいるがか掛方をきちんと分かっていないので、ゆっくりと足を絡めたりして技を試している。ガラグの方はそんな大輔が何をしようとしてるのかをいち早く察知し、こうではないのか?と大輔や仲間にに技を掛て見せて、それだそれだという感じで逆に教えられていたりもする。元々大輔はやる気にさえなれば学んだ事の吸収はかなり早いのだ。但しやる気が出ればである。今は自分の為というよりもケイトの為に頑張らねばと思い、やる気スイッチが入っているのであった。

 時間が経つのは早いものである。あっという間に夕方になり、食事を終えた頃には暗くなっていた。

 大輔達は沐浴を済ませ部屋に戻るが、これから日課になって行くが、大輔はケイトにマッサージをして貰う。下半身は何ともないのだが、上半身はとにもかくにも悲鳴をあげていた。

 走る時には使わないそういう筋肉を使い酷使しているからで、少し触られるとウッと悲鳴を上げるぐらい痛みが激しかった。

 ケイトはそんな大輔の頑張る様子に涙していたが、時間をかけ丁寧にマッサージしていく。そしてだ大輔けはケイトの真心の籠もった手の心地良さにありがとうと一言呟いて眠りに落ちるのであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜

平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。 『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。 この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。 その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。 一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。

おっさんの異世界建国記

なつめ猫
ファンタジー
中年冒険者エイジは、10年間異世界で暮らしていたが、仲間に裏切られ怪我をしてしまい膝の故障により、パーティを追放されてしまう。さらに冒険者ギルドから任された辺境開拓も依頼内容とは違っていたのであった。現地で、何気なく保護した獣人の美少女と幼女から頼られたエイジは、村を作り発展させていく。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

ハズレ職業のテイマーは【強奪】スキルで無双する〜最弱の職業とバカにされたテイマーは魔物のスキルを自分のものにできる最強の職業でした〜

平山和人
ファンタジー
Sランクパーティー【黄金の獅子王】に所属するテイマーのカイトは役立たずを理由にパーティーから追放される。 途方に暮れるカイトであったが、伝説の神獣であるフェンリルと遭遇したことで、テイムした魔物の能力を自分のものに出来る力に目覚める。 さらにカイトは100年に一度しか産まれないゴッドテイマーであることが判明し、フェンリルを始めとする神獣を従える存在となる。 魔物のスキルを吸収しまくってカイトはやがて最強のテイマーとして世界中に名を轟かせていくことになる。 一方、カイトを追放した【黄金の獅子王】はカイトを失ったことで没落の道を歩み、パーティーを解散することになった。

処理中です...