ざまぁから始まるモブの成り上がり!〜現実とゲームは違うのだよ!〜

KeyBow

文字の大きさ
上 下
117 / 117
第2章

第117話 トニーの正体

しおりを挟む
 俺はふと目覚めると、見知らぬ女と朝チュンになっていた。間違いなく昨夜救った女で、どういう訳か抱いてしまったようだ。彼女に抱きつかれ、甘い匂いを感じてからの記憶がない。

 何故かこの女と魔力パスが繫がっている事が分かる。愛おしい。

 彼女が目覚めたようだ。

「あら目が覚めた?有り難く思いなさい。お前のような下賤の者が、私のような高貴な女の初めてを貰えたのですよ。私に尽くしなさい」

 俺はこの女の事しか考えられなくなっていた。この人に愛されたい!誠心誠意尽くしたい!

「誤算だったわ。魔王になる適正者が女だなんて。しかも赤子だなんてとういう事よ!これではパスが繋がらないじゃないの!しかし危なかったわね。此奴が来なければ、死ぬところだったわ。都合良く現れてくれたわね。さあ、私を孕ませなさい」

 そう、彼女はターミスだ。転移の時間のズレにより、昨夜下界に来たのだ。そして帝都で魔王の候補は女だった。しかも赤子だ。そう、計画にズレが発生した為に、目的の魔王になれる素質のある者の所に行けなかった。別の国にいる候補の所に行く筈だったのだ。候補自体は複数おり、スラナシスカが下界に落とされる直前に反撃したのがこれだった。そう、ターミスを出し抜いたのだ。

 時間が無かった。ただ、嬉しい誤算が有った。ターミスはトニーの事を毛嫌いしていたが、トニーもある意味魔王になれる素質があった。勇者になれる候補、又は勇者もまたその力がある。

 そして、絡まれている所に現れたのがトニーだ。偶然だった。

 つい勇者様と言ってしまった時はまずいと思ったが、この男はこの身体に魅力を感じたようで、あとはチョロかった。

 こんな男に抱かれるのは虫酸が走るが、仕方がない。魅了で既に惚れさせ、昨夜は魔力パスを構築するのに、純潔をくれてやった。

 計画変更だ。この男の子を孕み、生まれた瞬間にその子の魂と入れ替わる。元の体は耐えられず死ぬだろう。これで女神の力を宿した人の子になり、発生させた魔王を討伐した勇者又は聖女として天界に転生出来る。

 勇者や聖女の転生体は、今の自分より数段強い力を得られるだろう。元の力も加わり、転生にて特級の先、神の末席に加わる事が出来る。

 力だけならばこの男の子種は素晴らしい。有りえない力を感じる。後は月に1度抱かれるのを我慢すれば良い。そうとは知らず、この男は私が入れ替わった赤子を我が愛しの子として溺愛するだろう。

 そして成人する頃に魔王が発生する。よし!軌道修正完了よ!

 トニーは3人目の女神と体の関係を持った事で身体に変化が訪れており、まだ魅了が効いていた。そして言われるがままにターミスと愛し合った。ターミスは嫌いな相手とはいえ、トニーに抱かれる悦びに落ちており、その甘美な肉欲に支配されていた。

 しかし、何度目か愛し合っている途中に、トニーとターミスが泊まっていた部屋に数人が押し入った。

「いやー!トニーが!トニーが見知らぬ女と!そんな!」

 システィーナが泣き崩れた。

「システィーナ、これは魅了されています。トニーの意思では有りません」

 結界を張っていたのだが、何故か破られた。ターミスは固まってしまった。その隙にスラナシスカに力を封印され、拘束されるとトニーから引き離され、間髪入れず床に転がされた。

 この部屋にはトニーの妻達が揃っていた。

 トニーが動く前にジュータスクが手刀を放ち、気絶させた。その後解呪を行い正気に戻した。

 スラナシスカがターミスを処断しようとしたが、ジュータスクに止められた。それを判断するのはトニーだと言われ、スラナシスカは了解した。

 その後もうこの国に用は無くなった。今、魔王候補を殺しても、別の者が魔王になるだけなので無駄だからだ。自然の調整力が働き、悪い結果しか残らないからだ。

 既に積荷は売り捌き、国に持ち帰る交易の品を積み込みいつでも出発出来るようになっていた。そう、トニーが行方不明になってから2日が経過していたのだ。

 町を出てから2日後にトニーは目覚める。

 するとトニーはスラナシスカとジュータスクの力を凌駕する能力を得ていた。

 スラナシスカとジュータスクは跪いた。そう、トニーは神の力を得ていたのだ。皮肉にもターミスが欲した力をトニーが手に入れていたのだ。

 この世界で生を全うすれば、天界の上の神界に行けるのだ。

 トニーはスラナシスカから提案されたターミスの処刑を拒否した。

 トニーは震えるターミスの頭を掴む。

「殺しはしない。ただ、お前の魂は死ぬ。本来の善良な姿に戻り、我妻となるが良い」

 ターミスから何かを吸い出した。するとターミスは痙攣し、気絶した。全員が理解した。今ここにいるのは清らかなる魂の持ち主だと。そしてトニーも全てを思いだした。

 そしてトニーはターミスから吸い出した黒い靄を手で抑え込み、小さな珠にした。

「スラナシスカ、この魂を浄化せよ」

 トニーが珠を託した。

「愚か者め。天界に悪魔界の手の者の侵入を許すとは、情けない」

 トニーは全てを思い出した。
 神界にいる神の1人だった。
 殆どの神が悪魔界の侵攻を受けて死んでしまったのだ。

 意識を取り戻したターミスは、何があったのか全て話した。女神になった当初、伸び悩んでおり、その時に甘言に耳を貸してしまい、その後意識を手放したと。そして今目覚めると、拘束された状態だったのだと。

 何とか食い止めたが、天界の方も侵食されており、誰が乗っ取られたか分からなかった。誰がとは分からなかったが、ターミスの計画のようなやり方で再び神界を攻めて奪い、神界~下界の全てをモノにしようとしていた。

 そこで自らの記憶を封印し、勇者として転生する事を選んだ。そこで己の魂の管理を任せたのがスラナシスカだった。ただ、スラナシスカも記憶の一部を封印され、神と言うのを知らず、勇者の適性者とされていた。

 トニーは元々数千年前の勇者として生き、そして死んだ。その後天界の下級神となり、その後の活躍で神界の神に進化していた者だった。

「さて、久し振りに受肉したのだ。この短い生をトニーとして妻達と共に楽しもう!」

 そうしてこの世界の後世に、世界を救った英雄王として名を残すのであった。


 ファイン
しおりを挟む
感想 2

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(2件)

かあおす
2022.05.18 かあおす

44話、オリハルコン装備ってありますが、ミスリルの間違いでは?

KeyBow
2022.05.18 KeyBow

ご指摘ありがとうございます!間違っていました!ミスリルに訂正しました!

解除
mm
2022.05.07 mm

18話ダンジョンへの本文がありません

KeyBow
2022.05.07 KeyBow

ご指摘ありがとうございます。

投函しました!

宜しくお願いします

解除

あなたにおすすめの小説

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。