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第2章

第104話 前世の事

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 俺が狼狽えていると、部屋がノックされ、システィーナがスラナシスカを呼びに来た。
 俺も一緒に行こうとしたが、一緒に来ていたレイラにシッシッと追い返され、女の話しに男が入る隙はないといった感じで1人取り残された。

 漸くループから抜け出せたが、スラナシスカは全てを見ていたと言う。
 改めてステータスを見ようとしたが見えない。やばい事をしていなくて良かった。

 確かにこの世界の人を相手にする分には、そう容易く遅れは取らない。
 近接ならレイラに負けるが、そろそろ剣姫になれる気がする。

 ステータスポイントは残っていないが、スキルポイントは有る。

 ステータスは自動で割り振られているようだ。

 疲れからうとうとしていた。

 夢を見た。かつて勇者は5人の仲間と何処かの国で敵と戦っていた。

 その5人を愛していた。命を預け、助け助けられ苦楽を共にしていた。
 世界は滅ぶ寸前だった。時間が足りない。その時2つの禁術を使う事を決断した。愛する5人の命を贄にして魔王を討つ禁術。もう一つは己の命を贄にしてこの5人共々転生する秘術だ。
 その強い想いが有れば必ず再会できると信じて。

 そして魔王を倒した後、5人の躯を抱きかかえて転生の秘術を使った。

 一部違うが、長きに渡り語り継がれてきた勇者の物語だ。色々な本になっており、舞台で上演されてきた。  

 単に相討ちだったのを美化したのだと言われていた。だが各国に保管されている真書には、今世を捨てて魔王を討ち転生を試みたと。事前に禁術を教えた者がおり、回収した死体が禁術を使った事を物語るとして、記録された。

 そう、レイラ、アイハ、システィーナ、キャサリンがその者達の生まれ変わりだった。残り1名が揃うと記憶も蘇る筈だと思うが、まだ1人と再会していない。ループを終えた後に急に存在感に気が付いた。生まれ変わる前と全員姿が違うので見た目では探す事が出来ない。触れれば分かるだろう。転生の時に僅かに魂を取り込んだからだ。

 逆に己の魂も彼女らに分割されていて、残り一人の分が取り込まれていない。
 最後の一人と再会したとしても、記憶が蘇るだけで、いきなり無敵超人になれる訳ではない。

 しかしここに来て急に変化が有った。スラナシスカがそうではないが、彼女が下界に来た影響からか、急に残り一人の存在が感じ取れた。弱っている。レイラ達の時は何故か惹かれるといった感情が、お互いに芽生えただけだったが、最後の一人はスラナシスカと接触した為か、感じ取れた。それまでは何となく探して救う必要を感じていたが、この夢ではっきりとした。

 特にキャサリンとシスティーナに一目惚れ状態で、制度として認められているとはいえ、何故にハーレムになったのか漸く分かった。

 記憶がなくとも、彼女らは転生し、俺は別の世界に転生したが、転移?召喚?された。だから魂が惹かれ合った。また、キャサリンとレイラが呪いをかけられたのは無作為の者から選ばれたのではない。前世の魂に反応したからだ。

 だが、名も出て来ぬ最後の一人はどうだ?今迄接触がなかったから、ひょっとしたら他の世界からの転移者か?

 今は体が殆ど動かない。スラナシスカとパスを繋いだ影響から、体が作り替えられており、動けなくなっていた。何となく分かるのは、朝になれば完全復活すると。最初にパスを繋いだ時に、数時間体に変化があるが、回復すると言われたのだ。

 もし誰かと今からセックスできると分かっても、疲労の為何も出来ない位にだ。

 幸いなのは、あの4人以外の女を抱かなかった事だ。メイドや貴族の娘をとも考えたが、ループから抜けるのとは関係ないと思い外したのだ。

 その後話し合いを終えた5人は熟睡しているトニーを見て、キスをしてから居室に引き上げた。スラナシスカの事だけは翌日国王に報告をするが、今は夜中の為、今更部屋を用意できないので、今夜はシスティーナの部屋にて休んで貰う事になったのであった。
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