上 下
29 / 117
第1章

第29話 呪術

しおりを挟む
 テーブルを囲み椅子に座った。

「レイラ、君は何を託されているの?俺の予想は間違っていたようだね」

「はい。予知に異世界人と知り合うだろうと。床を共にしても抱かれぬのならば己の全てを捧げ、その者の助けになるのだ!と。いずれ世界を救う御仁だと」

「抱かれたら何だと言われたんだ?」

「生まれしその時にその忌み子を殺せと。その刀でその異世界人を殺せと。どちらかが魔王として世界に仇なす存在になると。但し、抱いてと言ってはだめだと。それとなく誘惑し、床を共にせよと」

 文字通り従者になったようだ。何かの力がそうさせている気がする。いや確定だ。

「俺が何をしなきゃならないのか分からないけど、レイラに頼みがある」

「はっ。我が主。朝ですが、夜伽をご所望されるならば抱かれましょう!」

「周りから浮くから、そういうのをやめような。軋轢を生むから。心の主として、今迄の様に接して欲しいな。夜伽も無しだよ」

「はい。トニー。夜伽はいつでも良いのよ」

「抱くならちゃんとお互いに愛しているとなったらな」

 納得しないようだ。

「あのう、トニーの方は何かの職業が選択肢に現れていないの?」

 あっ!と唸りながら確認した。有った。

「導き手」が現れていた。 

 発現条件は心の底から想われており、その相手から剣を捧げられる事であり、その者を好いている事と有る。但しレベル不足でまだ、就けない。だが、希望が見えた。

「ありがとう。レイラのお陰で導き手が現れたよ。まあ、レベル不足だけどね」

「良かったわね!」

「よし!朝食を食べてギルドに行こうか」

「はい!トニー!」

 そうは言っても俺はレイラの秘密がよく分からなかった。一応剣を捧げられたが全てを話してはくれない。

 多分主として説明を求めれば話すだろうが、それは彼女の尊厳を無視する事を意味する。だから話してくれるまで聞かない事にした。若しくは…

 彼女は魅力的だ。彼女の話だと昨夜手を出せば彼女は身籠り、更にその子を産まれた直後に殺し、俺を殺さなければならなくなっていたと話した。だがそれはもう終わった。もし今抱いて身籠っても大丈夫なようだ。しかし、身も心も全て持って?と聞き直したら、抱きたくなったら抱いても良いと言われた。だから心が伴わなければ抱かないと言ったのだけど、レイラは何者かに何かをされているな?と直感が告げた。

 やはりこれは早々に闇魔法をカンストする必要がある。おかしい。王族の貞操は絶対だ。なのに今は簡単に股を開くと言う。多分精神になにかされており、異世界人を見つけたら関係を持つように誘導されているのだろう。確かクエストで、そういう感じの洗脳者を助け、激レアのアイテムを得られるのがあり、その為に闇をレベル10に上げたっけな。

 彼女の体はたしかに魅力的だけど、今の彼女に手を出すのは最低だ。逆に正気に戻った時に袂を分かつ可能性すらある。

 話の整合性に違和感があった。あの子は母親を踏み台にして逃げる子じゃない。真実が分からない。

 闇魔法レベル10にある呪術を使えば解除出来る。ただ、俺が気が付いたのは伏せないとだ。2段階目の呪術が発現する筈だ。

 そうして何食わぬ顔をして、朝食を食べに食堂に向かうのであった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【完結】二人の王子~あなたの事は私が幸せにしてみせます。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:383

もふもふで始めるVRMMO生活 ~寄り道しながらマイペースに楽しみます~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:24,538pt お気に入り:1,171

行・け・な・い異世界マジック

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:13

微笑みの悪役令嬢!~微笑むだけで上手くいくものですわ~

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:671

処理中です...