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第1章

第20話 トニーは射抜かれる

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 ここはダンジョンなのだが、どう見ても洞窟である。幅は3m程で、鉱山跡のような感じだ。
 俺はいきなり躓いた。

「わっとっとっとっおあぁ!」

 蹴躓いて前方に向かってつんのめってしまい、レイラのお尻に顔を埋める形で突っ込んだ。

「きゃっ!」

 レイラの短い悲鳴が聞こえる。

「な、な、な、何を、貴様何をしている!」

「ごめん。その、躓いて、倒れ込んだらレイラに当たってしまった」

「あら、そうなの。気を付けなさいよ!」

 意外な事にあっさりと許された。
 それにしても俺は情けない限りだ。

 時折何かのうめき声が聞こえたりする。不気味だなと俺は妙に力が入っており、息が荒かった。
 ダンジョンに入ってから5分そこらだが、今の所一本道だ。

 レイラが先頭を歩く。

 ヒュイーンと風切り音が聞こえた。レイラは華麗に避けた。
 レイラの耳にはその直後にぐさっ!と肉に何かが刺さるような音が聞こえたかと思うと、ドサリと 音がした。

 レイラが振り向くとトニーが胸を矢で射抜かれて倒れた所だった。

 レイラは避けてはいけなかったのだ。前方を歩くレイラが避ければ、前衛に隠されている為に、矢の接近に気が付き難い後衛の者、つまりトニーは目の前に避ける事が出来ない状況で矢に晒され、結果避けられずに射抜かれた。

「ごぼっ」

 トニーは叫ぶ事も出来ずに血を口から吐いた。

 レイラは矢を放ったアーチャーを視認したのでスラッシュを放ち、その首を刎た。

「トニー!」

「ごぼっごぼっぐぼっ」

 トニーはまともに息ができなかった。右胸を射抜かれ、気胸になったのだ。

 レイラは鏃を掴むと一気に引き抜いた。

「ぐぼっ!がはっ!」

 トニーの苦しそうなうめき声が木霊する。

 トニーは痛みで気絶しそうだった。
 革の胸当てを貫通したのだ。

「トニー、矢を抜いたからヒールを掛けるのよ!頑張りなさい!死なないで!」

 トニーは何とかヒールを使った。本来魔法を使う場合詠唱が必要なのだが、トニーは念じると発動出来る。

 すると先程まで肺から空気が抜ける音がしており、呼吸も苦しそうだったが、やがて安定してきた。

 トニーは口に血が溜まった所為で噎せた。

「ごほっ、ごほっ!。はあはあはあはあ」

 少しすると起き上がった。

「いててて。レイラ、助かったよ」

 レイラは謝った。

「私の所為だ。あの場は矢を避けず、払わねばならなかった。私が避けたら、ああなる事は当たり前なのに、咄嗟に避けてしまったわ」

 レイラが涙を流していた。
 俺はオロオロした。
 レイラが涙を流したからだ。

「気にしないで。レイラが矢を抜いてくれたから俺は今生きているんだよ」

「でも私の所為でトニーが…」

 俺は指で口を制した。

「俺の装備を見直さないとね。革の胸当てじゃ話にならないのな。まさかこんなに紙装甲とは思わなかったな。よし、もう動けるよ。先を進もうか。申し訳無いと思うなら、さっき俺がレイラにぶつかったから、ちゃらだからな」

 レイラは頷くしかなかった。己の失態を責められるものかと思ったのに、あっさりと許されたのだ。ただ、彼女の中では自分のミスでトニーを死なせるところだったという事実は変わらない。
 二度とするまいと心に誓う。

 レイラが魔石を拾い、トニーに渡す。ドロップをストレージに入れるのはトニーの方だ。闇を上げたので今はレイラ二人分位の収容力が有る。

 更に進むとちょっとした空間が突如2人の目の前に現れた。テニスコート2面分位の空間だ。そこにゴブリンが10匹程いたのだ。

 なっ!と唸る。奥にはレイラと同じ位の背丈の上位種と思われる奴が座っていた。

 やばいと思いトニーは咄嗟に魔法を発動した。
 レベル3のアイスショット、ファイヤアロー2発、アースアロー、ウインドカッター、そしてスキルのスラッシュだ。

 ゴブリンは瞬殺だった。しかし奥にいる個体は剣で弾く。

「ブラックスモーク」

 その空間全体を黒いモヤで覆った。闇魔法レベル3の広域の通称目眩しだ。

「一旦ダンジョンの入口迄引くぞ!今のままじゃやばい!」

「分かったわ」

 2人は駆けた。

 入口に着くと急ぎアースウォールを使い入り口を一旦閉じた。

 ゼエェゼエェ、はぁはぁ!と2人は息を切らせていた。

「やばい。あれはジェネラル種だ。さっきレベルが上がったろ?ステータスを弄ってから倒しに行くぞ!」

「行けるの?」

「やらなきゃ追ってきて殺られるぞ!行けるのかじゃなく、死にたくなかったら殺るしかないんだ」

「俺の方が先にステータスを触るから警戒を頼む。直ぐには来られない筈だ」

 ボーナスポイントは次回は最大値になるが、今回は15だ。

 名前 トニー・デュノッゾ
 年齢 15
 身長 175cm
 職業 一般掃除人
 レベル 7→8
 HP     25/59→25/67
 MP    41/53→41/61
 筋力  37→45→48
 器用さ 37→45→48
 精神力 37→45→49
 幸運  95→95→100
 ステータスポイント
 残り 15→0
 特殊補正
 決断 +3

 スキルポイント   
 残り 21→0
 スキル
 逆境
 獲得経験値2倍
 *剣術レベル1→4(10)
 *魔法効果倍増(10)
     魔法適正(4)
  水魔法レベル3(1)
  火魔法レベル2(1)
  土魔法レベル1(1)
 *風魔法レベル1→2(1)
  闇魔法レベル3(12)
  光魔法レベル1(2)
 *身体能力向上レベル1→2(1→3)
     強運レベル10(57)

「よし、次はレイラだ」

 俺はレイラに警戒させつつ、レイラのステータスを確認する。また、ヒールを掛けた後、激まずのマナポーションを飲んだ。

 うげー…後味最悪…

 名前 マーベリック・レイラ
 年齢 15
 身長 162cm
 職業 女剣士
 レベル 5→6
 HP     67/67→67/75
 MP    20/20→20/24
 筋力  33→42【2】
 器用さ 24→30
 精神力 15→18
 幸運  34→41
 ステータスポイント
 残り 7→0
 特殊補正
 決断 +1

 スキルポイント   
 残り 12→2

 スキル
 
 *剣術レベル3→4(4)
 魔法適正
  闇魔法1(2)
 身体能力向上レベル1
 *強運レベル5→6(14→20)
 獲得経験値2倍(3)

 レイラに自分のステータスと俺のステータスを確認させた上で、提案した内容でステータスを確定した。
 レイラの次のボーナスは8だ。
 剣術に今振るのは強運の事を考えると痛いが、俺が先ずは魔法を放つが、魔法で倒れなかったら2人掛りで剣で攻撃をする作戦と伝え、レイラもそれ以上の事は考えつかないとなった。さあ行こうか!となった途端にアースウォールが崩れ去ったのであった。
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