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第2章
イリーナの刻印の成否
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皆が固唾をのんで俺の寝ている布団の周りに集まっていた。
その気配は感じていたが、今は消耗しきっており、やってしまったとブツブツ言っているイリーナが愛おしくて仕方がなく、胸元に抱きしめている。イリーナはしおらしくなり俺の胸元に手を添えており、時折何故こんな奴に惚れてしまったのじゃと嘆いていた。
「俺の事が嫌だったのか?」
「このバカタレが!雰囲気も何もないではないか!しかも皆に見られながらなどと」
「答えていないぞ」
「勿論好きじゃ。分かっておる。お主が死者蘇生を使った影響から判断力などが欠落しておったと言うのは。して、そろそろ時間じゃと思うのじゃがのう」
「チョット待っていろ…大丈夫だ。ちゃんと俺の刻印者になっているぞ。色々問題は有るようだが、俺の魂が死ぬと、1時間も生きられないが、俺が生きてさえいて、浮気をしなければ生きていられる。それは分かるよな?」
「それは分かるのじゃ。ただ、肉体を取り戻したその時から違和感が有るのじゃ」
「言いにくいのだが、イリーナは最早神では無い…一応神を名乗りは出切るとは思うが、今は使える力が無い」
「どういう事じゃ?」
「その、肉体を取り戻した時に触れていた者に神の力が移るトラップが仕込まれていたようなんだ」
「なんと。我の力の全てがそなたに移ったというのか?」
「正確には違う。が、それに近い。問題はイリーナの力が分割され、少しだけだがイリーナに残っているから、力の大半を喪いつつも神を名乗れる筈だ。しかし、俺に移る力はここにはない」
「意味が分からぬのじゃ」
「本来のイリーナだと分かる筈だと思う。今俺の言っている事が理解できないのが、力を喪った証拠だ。俺は一瞬その力に触れた。だから、俺に力があれば、イリーナに力をコピーして、ある程度能力を戻す事が出来るが、その力がこの世界にはない。向こうの世界に残されている。幸いなのが今の段階で君の持っていた力の権利は俺だ。他の者が触れても、俺が生きている限り、簒われはしないと言う事だな」
「少し疲れたのじゃ」
当面命の心配がなくなったからか、イリーナは疲れから寝ていった。
俺は布団から出て、皆と向きあった。
「イリーナは無事に俺の刻印者となった。問題は色々有るが、事実を整理しなきゃならない。まずはここは別の世界だ。何処か分かるか?」
皆首を振る。
「少なくとも俺達の世界ではない。それに水樹と俺が元々いた世界でもない。レオナのいた世界でもない」
「どうして分かるの?」
「見えている月の違いだ。皆、シェルターの外の景色や空を見てくれ」
そうして皆武装をして、万が一に備えてから外に出た。
すると空を眺めていたアトランジェが呻いた。
「ここは私の生まれた世界よ」
俺はやはりそうかと、只々ため息をつくのであった。
その気配は感じていたが、今は消耗しきっており、やってしまったとブツブツ言っているイリーナが愛おしくて仕方がなく、胸元に抱きしめている。イリーナはしおらしくなり俺の胸元に手を添えており、時折何故こんな奴に惚れてしまったのじゃと嘆いていた。
「俺の事が嫌だったのか?」
「このバカタレが!雰囲気も何もないではないか!しかも皆に見られながらなどと」
「答えていないぞ」
「勿論好きじゃ。分かっておる。お主が死者蘇生を使った影響から判断力などが欠落しておったと言うのは。して、そろそろ時間じゃと思うのじゃがのう」
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「言いにくいのだが、イリーナは最早神では無い…一応神を名乗りは出切るとは思うが、今は使える力が無い」
「どういう事じゃ?」
「その、肉体を取り戻した時に触れていた者に神の力が移るトラップが仕込まれていたようなんだ」
「なんと。我の力の全てがそなたに移ったというのか?」
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「意味が分からぬのじゃ」
「本来のイリーナだと分かる筈だと思う。今俺の言っている事が理解できないのが、力を喪った証拠だ。俺は一瞬その力に触れた。だから、俺に力があれば、イリーナに力をコピーして、ある程度能力を戻す事が出来るが、その力がこの世界にはない。向こうの世界に残されている。幸いなのが今の段階で君の持っていた力の権利は俺だ。他の者が触れても、俺が生きている限り、簒われはしないと言う事だな」
「少し疲れたのじゃ」
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そうして皆武装をして、万が一に備えてから外に出た。
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「ここは私の生まれた世界よ」
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