エラーから始まる異世界生活

第1章

養生する

　俺の体力の落ち込み具合から、丸一日は養生する事になった。　

　意識を取り戻してから心做しか魔力量が増えた気がする。その為か、５人の予備の肉体を一気に作ったにも関わらず特に影響はなかった。

　本当はすぐにでも活動を再開したかったのだが、この先戦闘が待っている可能性が有る事を考えざるを得ない。今のこの体力が落ちきっている状態で事を急いでしまえば、命取りになり兼ねないからだ。その事が有るので時間は惜しいが自重せざるを得なくなった。その為、時折肩を貸してもらいながら歩く位にしていた。

　そうやって半日程大人しくしていたが、肩を貸されなくても一人で歩く事が出来るようになってきた。

　一旦シェルターの外に出たが、ボス部屋に現れているうちの開いている方の扉にもサラマンダーは入れなかった。散歩代わりにボス部屋の中を見て回り、肉片が転がっていないか等を確認していったが、これでもかと言う程綺麗になっていた。追い付いてきたサラマンダーが肉片等を焼いていったようだが、残った灰は時間と共に吸収されたようだ。

　そして扉に触れようかと思ったが、直前に踏み止まった。
　万が一ドアに触れた事で次のイベントが発生する可能性がある為、準備のできていない今は不味い。

　午後からは少し体を動かす事にした。皆で軽くストレッチをしたり程々の運動をする事により、寝込んでいる間に鈍った体に喝を入れるとは言わないが、体をほぐす目的で軽めに行っていた。

　その甲斐あってか、夕方位になるとまだまだ本調子とは言えないが、上層階のボス位になら素手でやり合える位には回復していた。

　俺の死者蘇生の良いところは、記憶について完全な引き継ぎができる事だ。記憶がどこに保存されているのか諸説あるし、人体の仕組みは高校で習った程度の事しか知らないが、引き継がれる事は理解している。

　ただ、俺が死者蘇生をするという事は一度死んでいるという事になる。その為、意識を失ってから死んだ場合はまだ良いが、死ぬ直前まで意識があった場合、特に段々と弱って行き、その後死に至った時は自分が今から死ぬんだという事や、弱っていき意識が薄れていく記憶も引き継がれてしまう。

　だが何があったかという事に関しては、戦っている最中に死んだ場合であれば話は別だ。

　死ぬ=意識を手放すなのか、意識を手放した後に死んだのかはともかく、死ぬ直前まで戦っており、即死した場合は自分がどういう状況で死んだのかが分かり、その事を俺に報告できる。それが一番の強みではある。勿論死の恐怖を味わった事に対するケアが必要だが、俺の妻達は分かっている。俺が生きてさえいれば生き返らせてくれるという事を。なので仮初めの死という認識であり、本当の意味での死の恐怖はない。

　妻達の恐怖は俺が先に死に、自分達が生き長らえてしまった場合が一番怖いという。そんなものなのかな？

　今回5人は蘇生したが直前の体から復元出来なかったので、以前作った肉体にて覚醒している。その為に体を馴染ませる為の運動を必要とする事もあり、皆真剣に取り組んでいた。

　俺の方もお陰で順調に本来の調子に近付きつつあるのであった。