エラーから始まる異世界生活

第1章

手前にて…

　この日の夜は軽く翌日の事についての打ち合わせをした。先ずは100階層は俺が中心となって戦う事の確認だ。可能なら顕現時の隙を点くが、厳しいだろうから、コンボ技からスタートと。それと配置の初期位置。但し、戦い始めれば各自が臨機応変に動くしかないなと話し合った。

　また、ボス部屋までの戦闘については、俺自身はほとんど戦いに参加しない。つまり温存するという事を話していった。

　ここまでは順調に来ているが、最後に大どんでん返しが待っている可能性が予測されるので、十分気を引き締めていくなどなど、当たり前と言えば当たり前の内容のミーティングを行なっていた。

　またサラマンダーから入ってくる情報を総合しても、知り得た情報とほとんど変わりないと。

　水樹の所感もそうだが、俺の所感もこのダンジョンは何年経とうが100階層が打ち止めだ。ただ年数が経過する事により、ダンジョンを作った者が生きていればダンジョンに干渉できる回数がどんどん増える。ひょっとすると既に100階層も干渉できるのかもわからないが、途中の階層までしか干渉していないのは、そう思わせて油断させるための罠の可能性が捨てきれない旨を話した。ただ、殆ど再確認の内容だ。

　お開きになった後、アトランジェが俺の裾を引っ張っていた。漠然とした不安かあるのだと言うのだ。一人で寝るつもりだったが、アトランジェを抱き寄せて眠る事になった。もちろんただ単に優しく抱きしめるだけだ。だがそれがいい。

　彼女には理性が飛ぶからと、大人の姿になるなと釘は刺していた。まあ、さすがにこの日は大人しく言う事を聞いてくれたのだが。

　翌朝なるべく平時の、いつもながらの朝を迎えるようにしていた。ただ一つ違うのは、シェルターを出る時に円陣を組んで気合いを入れた事くらいだろうか。かなりの確率で今日100階層を突破する。その時に何かがあるのだろうが、正直なところボス部屋まで辿り着けばこっちのもんだと思っている。

　99階層までは特に何もなく、怖い位に順調に進んでいたが、最後の休憩を取りあと少しでボス部屋と言う段で異変が起こった。一つ罠が発動したのだ。

　サラマンダーでは軽過ぎて発動しなかったが、俺達が一定の範囲内に揃ったものだから、床が急に抜けたのだ。

　俺は落下する妻達を転移で捕まえながら何とか飛んでいた。

　下はマグマ溜まりで、落ちたならばひとたまりもない。

　ただ、俺もこの人数を担いだ事が無いし、しがみついている妻達の握力も長くは持たない。
　見渡す限りすべての床が抜け落ち、下からの熱気に気が遠くなりそうになっていったのであった。