エラーから始まる異世界生活

KeyBow

文字の大きさ
上 下
466 / 527
第1章

低層階

しおりを挟む
 今までのダンジョンとの違いが一つあった。俺達が入るとダンジョンの入り口が消えてしまったのだ。

 あっ!と唸ったが、どうせ先に進むのだからと、ダンジョン探索を途中で断念して戻るにも同じ道を戻るしかない為、先に進む方が得策となるケースの方が多い。その為留意するのは留意するが、敢えて気にしない事にした。食料は子の人数だと年単位で持つのだから心配しても仕方がない。

 戦力的に守らなければならないのはクレアと水樹である。実際は水樹もそこそこ戦えるようにはなっているが、トリシア達に比べると一段落ちる。彼女はどちらかと言うと研究者の部類に入る。ダンジョンについて研究しているが、ダンジョンに入る為にそこそこのレベルで魔法と剣術を訓練していたに過ぎない。

 彼女が悪い訳ではないが、自衛できる事を目的としており、100階層クラスのダンジョンのボスと単独で戦うだけの力はない。なので水樹はオリヴィアに、そして俺はクレアを守る。他の者達は自身の力で何とでもなる。俺はそういうふうに判断をしていた。

 10階層までは正直小手調べだというよりも、最初に入ったダンジョンと何ら遜色がない。水樹に確認すると、恐らく40階層のボスを倒す迄は何の変哲もないごく普通のダンジョンに見えるのではないかと言う。

 以前のダンジョンも基本的にはメインのダンジョンの上層階の方と、衛星ダンジョンと何ら遜色がなかったらしい。

 俺は弾き飛ばされてしまったので、そのダンジョンについては聞かされた話しか知らない。

 最も水樹の言うには事例が少ないので、断言はできないと言っていたが、今の状況が同じだという事を物語っていると判断をせざるを得ない。

 低層階は基本的に戦闘力の弱い者の戦闘感や経験を養う為にフォローしつつ戦わせる事にしていた。

 アトランジェについては特に心配しなかった。槍を持たせれば俺よりも強いからだ。但し剣で打ち合えば俺の方が遥かに強いのだが。

 今回心強いのは妻達の中で一番ダンジョンに詳しい水樹を連れて来ている事だ。戦力で言うと正直に言うとお荷物でしかない。

 たが、本来未知の世界の冒険や探索というのはそういうものである。戦闘に長けた者だけが行っても意味をなさない。ジャッジできる者、それが何かを判断出来る者、決断を下す者に適切に指示や報告を出す者、それらがいなければ探索をする事自体意味がない。脳筋ばかりが集まっても結局罠に嵌ったり道に迷ったりして最終的に目的地に辿り着かない。食料や荷物の関係で人数に制約があるので、探索するメンバー選びが大事で、メンバーが決まった段階で半分程成否が決まると言っても過言ではない。そういった意味では今回はかなり考え抜いた人選だ。本当はレニスを連れて行きたかったが、向こうの守りの要であるから仕方がない。不安があるとしたら弱いメンバーの比率が高い事か。

 単純に強い魔物と戦う腕試しをするのであれば別であるが、今回はそうではない。クレアに憑依しているあの女神イリスの本体を探し出して解放しなければならない。

 正直言うと危険を犯す義理はないのだが、あの女神は神であるにも関わらず泣いていたのだ。それだけで俺にとっては十分だ。

 だが妻達は女神が泣こうかどうでも良い。ただ、クレアが困っているから助けてくれる!そんな感じだ。それにダンジョンを放置すると、この世界に甚大な被害を及ぼす可能性もある。そんな感じであったが、本当はそうでもないのだろう。俺の役に立ちたい、単純にそれだけなのだろうと思うがそれでも文句一つ言わないのだから感謝しなければだ。

 そうしてダンジョン本体の攻略を開始したのであった。



新小説投函しています。

勇者はいいですって言ったよね!~死地のダンジョンから幼馴染を救え!勇者?いらないです!僕は好きな女性を守りたいだけだから!~

です。

URLはこちらです。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/440688029/875578657


ブクマをして頂けると幸いです
しおりを挟む
感想 140

あなたにおすすめの小説

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

イレギュラーから始まるポンコツハンター 〜Fランクハンターが英雄を目指したら〜

KeyBow
ファンタジー
遡ること20年前、世界中に突如として同時に多数のダンジョンが出現し、人々を混乱に陥れた。そのダンジョンから湧き出る魔物たちは、生活を脅かし、冒険者たちの誕生を促した。 主人公、市河銀治は、最低ランクのハンターとして日々を生き抜く高校生。彼の家計を支えるため、ダンジョンに潜り続けるが、その実力は周囲から「洋梨」と揶揄されるほどの弱さだ。しかし、銀治の心には、行方不明の父親を思う強い思いがあった。 ある日、クラスメイトの春森新司からレイド戦への参加を強要され、銀治は不安を抱えながらも挑むことを決意する。しかし、待ち受けていたのは予想外の強敵と仲間たちの裏切り。絶望的な状況で、銀治は新たなスキルを手に入れ、運命を切り開くために立ち上がる。 果たして、彼は仲間たちを救い、自らの運命を変えることができるのか?友情、裏切り、そして成長を描くアクションファンタジーここに始まる!

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

処理中です...