エラーから始まる異世界生活

第1章

食事のお世話係

　俺はお世話係にお昼ご飯の準備ができたら寝ていても起こしてくれとお願いしており、ご飯ができたという事で体を揺すられてようやく起きた。ドアをノックしたり声を掛けた位では起きなかったというのだ。まあこれもお世話係の役目だというから、どのタイミングで起こして欲しいのかの指示を伝えたりしていた。

　食堂に行くとまだ誰も昼食に手をつけずに待っていた。先に食べていてもいいのにと言っていたが、俺と一緒に食べたいそうだ。流石にお世話係は決まりとして既に食べていたが、用事があったり時間が合わない場合以外、皆待っているのが通例だ。誰が決めたルールか分からないが、多分シェリーが考えたのだろう。まあ、悪い気はしない。

　人数が人数なだけに、一緒に食べると言っても同じ部屋の中で食べる意味になってしまう。

　この屋敷の食道の配置はかなり異質な配置になっている。それは俺が妻達全員の顔を見られるような配置になっているからだ。

　長テーブルが3列あり、真ん中のテーブルに俺がいる。ここからだと妻達を見渡せるし、妻たちも横を向けば俺の顔が見える。しかし、それであれば普通なのだが、俺の座っているテーブルはドアに向かって真っ直ぐだが、残り2つはVの字の配置だ。だからなのだが、そちらには俺に背中を向ける側には誰も座らない。縦に3列で並べようとしたが、あっさりと却下された。その為食堂は異様に広いのだ。その配置にする為に食堂の大きさを決めて屋敷を設計したっぽい。

　また、俺の座っているところの左右には各々席を設けており、ローテーションでそこに座るものが決まっている。全体もそうだ。同じところに座っているのを誰一人として見ないのだ。誰がローテーションを作っているのかは教えてくれない。色々な事を決めているようだが、これらのローテーションは基本的に俺は口出しができない。

　俺は食事の半分位は自分で食べるが、半分は左右に座った者から食べさせられる。彼女達が皆それを希望しており、特に断る理由もないので受け入れている。それぐらいは好きにさせてやろうと思ったからだ。最初こそ抵抗があり恥ずかしかったが、今ではそれが当たり前だと、自然な事なのだと思うようになってしまっている。

　そして背後には必ず一人が立っている。そう、お世話係というのだ。俺の座る椅子を引いたり戻したりする。そして俺の首に必ずエプロンを巻いてくる。汚れる事はないのだが、毎回妻達が作った手作りのエプロンを着ける。上手な刺繍や芸術品レベルのもあれば、絶対トリシアのだろうと思われるような縫い目が荒く、模様の縫い付けも荒いのも有るが、どれも真心を込めて作られており、恥ずかしいデザインのであっても必ず文句を言わずに着けていた。
　最後は必ず口を拭き、自分自身で外している。これは特に必要な事ではないが、エプロンを使う必要はほぼ無いが、いつの間にか妻達に感謝の意を伝える一連の所作となっていた。勿論丁寧にたたみ、テーブルの端に置いておく。元々貴族のマナーで、膝下に置いたナプキンをごちそうさまでしたの、美味しかったよの意思表示で口に当ててからテーブルに置くのがあり、それを踏襲している。

　お世話係は飲み物を飲む前に必ず口を拭いてくる。またごちそうさまをしようとするとやはり拭いてくる。その後エプロンで拭えば俺が退出するのだと分かる。

　また、いただきますをするのは俺の役目だ。
　それと基本的に皆での一斉のごちそうさまはない。

　淑女の食事は基本的に時間が掛かるのだ。上品にゆっくり食べる事が美徳とされ、予定がなければ皆そうしている。基本的に俺が先に食べ終わり、席を立つ事になる。

　大抵の場合、お世話係が一緒に部屋に行く。そこで俺の着替えなどがあれば着替えを手伝うし、部屋に入ってから俺が指示したい事があればその者に伝える指示を伝える役目をお願いしている。

　今回は武器を作るから、見に来たければ見に来てもいいよと言ってある。ただ全員が一斉に来ても見れないだろうから、数名ずつに分けて来て欲しいと言ってある。

　そうしないとみんなが一斉に押しかけてしまうのが目に見えているからだ。


　今回新たに全員に武器を新調するとし、希望の武器について聞いてある。
　その内容をリスト化してあるのだが、どういう武器が欲しいのかは中々興味深かったりする。

　非戦闘系の者には護身用のナイフである。ダンジョンの事を考えずに済むならばと黙々と武器を作っていた。その武器を誰が使うのかをよくよく考え、妻達の事を思いながらではなく、いつの間にかその妻自身が目の前におり、結局順番順番で部屋に入って来た妻の武器を作るのであった。