エラーから始まる異世界生活

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第1章

いない

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 俺は慌ててゲートを潜り、ダンジョンの入り口に着いた。だがしかし誰もいなかった。おかしいと思い、ダンジョンの周辺に人がいる気配がないか確認するも無かった。俺は半ばパニックになり、アトランジェを抱えたまま周りを駆けたり、少し上に飛んで上から周りを見渡したりもしていた。

 俺はいない!いない!どうしてだ!?どうしてだ!と狼狽えていた。

「みんなどこに行ったんだ!くそ、こうなったら中に入るか!」

 俺はダンジョンの入り口を探し始めた。しかしコアを抜き取っているから見つかる筈はないのだが・・・そんな基本的な事を失念する程に狼狽えていた。

 さすがにアトランジェが一言言ってきた。

「あのうランスロット様。少し落ち着いた方がいいと思いますよ」

「これが落ち着いていられるか!セレナの悲鳴が聞こえてから念話が途切れたんだそ!」

「はあぁ。確かセレナさんって触れている人と一緒に転移ができるのですよね?なので入れ違いで屋敷に戻ったのではありませんか?屋敷にいる方に念話を送るか、一度屋敷に戻ってセレナさん達が戻っていないかを確認した方が良いと思いますよ」

 俺はハッとなりぎゅっと抱きしめた。

「そう、そうだよな!俺の早とちりか!きっとそうだよな!」

 アトランジェはニッコリと微笑んでいた。

 アトランジェの意見に従って一旦屋敷に戻る事にした。


 屋敷にはゲートポイントと言うのを作ってある。これは屋敷の中でゲートを出してしまうと、意図せずにゲートに他の生き物等が入ってくる事があり、それでを避ける為だ。

 ところが今回俺はゲートポイントを無視し、屋敷の中からゲートを出し直接ダンジョンに向かってしまった。今はアトランジェに諭されて落ち着いていた。中学生相当の女の子に諭されるなんて情けなさ過ぎた。

 ゲートを潜った先に大半の妻達がいた。皆半ば呆れ顔で俺を見ていた。中にはクスクスと笑っている者もいた。もちろんそこには状況を理解していないセレナ達もいた。

 クロエが俺に何か言いかけたが、俺はアトランジェの手を離し、セレナの元に駆けつけた。

 皆の目の前であるにも関わらず一気にセレナを裸にしてしまった。そして大丈夫か大丈夫かとセレナの体を確認していった。セレナは唖然としていた。

「あのう、士郎さん?一体何をしているんです?みんなの前ですよ?こんな所で求められたら流石に恥ずかしいよ!」

 ここには妻以外はいないが、みんなの前で思わず裸にひん剥いてしまったのだ。大丈夫か大丈夫かと言っていたが俺はナンシーに頭を叩かれた。

「ちょっとランス!何をやっているのよ。セレナは無事に決まってるでしょ。ちょっとやそっとの怪我であれば肉体再生で治るでしょうに。一体どうしたのよ?」

「だってさ、念話の最中にセレナがきゃっ!と叫んでから念話が途切れたんだぞ!そりゃあ心配するに決まってるだろ」

 シェリーが見兼ねてセレナにコートを掛けていた。

 俺は強引に装備を壊しながら脱がせてしまったので、後で壊した装備を作り直さなければならない。皆笑っていた。くすくすくすくすと。

 そしてセレナに言われた。

「あ、あのう、その、志郎さん、その念話の最中に木の枝から水滴が落ちて、背中に入ったの。だから冷たくて思わずきゃっって言っちゃったの。念話が途切れちゃったけど、まあいいかなとなって、それでお屋敷に帰ろうとなったの。屋敷に転移したのだけども、慌てたみんなが屋敷から出てきて、何か有ったの?と聞いたら志郎さんがゲートを使ってダンジョンの方に行っちゃったって聞いたの。じゃぁ念話を送るねと言ったら、志郎さんが早とちりし、暴走したからその事に対してお仕置きが必要だからダメだと言われちゃったの。ごめんね」

 これは反省すべき事であった。セレナの念話が急に途切れ、何かが有ったと判断して飛び出して行ったのは50点だ。何で50点足りないかと言うと、セレナの悲鳴が有ったのであれば一緒にいるメンバーであるナンシーやシェリーに念話を送れば事足りる筈だ。それでも尚誰とも念話が通じなければゲートを潜っていけば良かったのだ。

 俺はそれをせずにいきなり突っ込んだのだ。しかも自分で作ったルールを己自身で破ってしまった。急ぐなら急ぐでそれでも一旦ゲートポイントに屋敷の中から行き、そこからもう一度ゲートを開き直すべきだった。高々数秒の事だ。それをせずにいきなり屋敷の中から直接ダンジョンに行ってしまったのだ。

 幸い何もなかったから良いが、そこに魔物の大群でもいたら屋敷の中に入られていた可能性がある。クロエにみっちり説教されてしまった。しかも皆の前で何故か裸で正座までさせられた。これは後で聞いたが俺への罰と言っていたが、その、後日夜伽の時に白状した。趣味だったと・・・はぅぅ。

 ただセレナやシェリーからは、俺の妻達への愛から生じている事だから大目に見てあげてと言われ、クロエも渋々説教を途中で止めた。

 ただこういう事は改善しないとだ。いつ痛い目に合ったり、手遅れになる事になるか分からない。だからよく考えてから行動するようにと言われ、それを最後に話は締めくくられた。

 全くもってその通りでありさる。流石にぐうの字も出なかった。何もなかったのはあくまでも結果論であり、よくない事が起こった可能性があったのだ。

 クロエは俺に対して苦言を言う数少ない存在だ。俺が間違った事をしても皆俺を庇う。ただクロエだけはしっかりと何がダメだったのかを俺に指摘し、改善するように指導までしてくれるのだ。嫌な役を引き受ける良妻であった。
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