エラーから始まる異世界生活

第1章

考察

　クレアが寝てと言うか、気絶してから皆は部屋から出て行った。呼吸が落ち着いているから安心したようだ。時折クレアは予知の後気絶しており、その時と同じだからだ。

　俺もまだ眠いので再び眠りに落ちる事にした。朝になると俺はクレアに頭を撫でられていた。俺がまどろんでいると目が覚めたのだと分かり、おはようと声を掛けてきた。

　俺も反射的におはようと声を返すが、まだ意識がはっきりしておらず、クリアに甘えていた。

　普段俺は朝になると一緒に寝ている者にこちらから抱きつき、頭を撫でてもらう。そうすると落ち着くのだ。そう母が子を抱きしめ頭を撫でる、そのように愛情を籠めて頭を撫でて貰らうと俺の心は癒えるのだ。ただ、これはばぶるようになってからの事であり、おそらくバブリモードと関連があるのだろう。だがそれは俺の心の安定の為に必要な事である。そう、未だに俺は壊れていて、妻達のお陰で正気を保っている。

　そうしていると意識が段々と覚醒していき、やがて完全に目覚めたが、目覚めると同時に俺は昨夜の事を思い出し、クレアに問うた。

「なあクレア、君に確認しておきたい事が有るんだけど、クレア、君の中にいるもう一つの存在について君は知っているのかい？」

「はい。イリーナ様の事ですね？私も存在自体はずっと、そう幼少の頃より何かが私の中にいるというのは知っておりました。ですがそれが何者かという事については昨夜まで私も知りませんでした。そうですか、あのイリーナ様だったのですね。掛け替えの無い存在。汚れを知らぬ乙女であり聖なる存在なのだとは分かっておりました。ランスは彼女の事を気に入ってくれましたか？彼女は可哀想な思いをずっとしています。あなたが癒やしてくれると確信していますわ。最後に泣いていたの。私も泣いたのよ」

「そうか。昨日の事は覚えているんだね」

「はい。普段の予知の時はほとんど覚えていませんが、昨日のあれは鮮明に覚えております。あれは私の方の力ではなく、イリーナ様の方の予知だと思います。ただ昨日の予知以外については、全く覚えていないの」

　と言う。つまりイリーナは外出の時はアトランジェを必ず同行して欲しいと言っていたのだ。イリーナというかクレアの事については言及していないが、イリーナの本体を開放するには、その場にクレアがいなければならないだろう。今回災厄が起こるというのは、おそらくイリーナ絡みのダンジョンの事であろう。

　予知からアトランジェは必ず連れて行かなければならないとは思っていたが、クレアについては思い至らなかった。

　成程と思いつつ、言われてみれば確かにそうなのだ。イリーナの意識体というか、
　魂の一部か魂そのものが憑依しているクレア本人がいないとおかしな事になりそうだと感じたのであった。