434 / 527
第1章
アトランジェの声は
しおりを挟む
彼女の声は俺の予想の斜め上だった。とても澄んだ声をしており、俺の存在が彼女を汚すのではないかと言う位ピュアに感じた。
「はい。我が魂の主ランスロット様。我が名はアトランジェ。ツイナブオドーロの世界より参りました。私のいた里は異人共に襲われ、私も戦っておりました。ただ、数も強さも何もかもが向こうの方が上で、あっという間に追い込まれました。もはやこれまでと覚悟をした時に、我が両親が異世界転送の秘技にて私を異世界に避難させようとしてくれました。ただ、両親も戦っている最中の事で、しかも戦いながら術を発動させた為、最後に不具合が生じました。その為、上空遥か高いところに私は転移した次第です。幸か不幸か落下の最中に気絶し、次に気が付いた時はランスロット様に生き返らせて貰った直後でした。それと多分本来送ろうとしていた世界とは違うのだと思います。これも運命。ランスロット様が私を生き返らせて下さったと聞いております。変に思うかもしれませんし、私も不思議なのですが、お慕いしております。ですので我が身も心も全てランスロット様のものでございます」
彼女は俺に全てを捧げるといったが、まだ頭がはっきり回っておらず、意味が分からなかった。だが俺は咄嗟に諭した。
「君の身の安全を守るし、君を大切に扱う。だが俺に身も心も捧げる必要はない。不思議な事に確かに俺も君の事が好きだ。ただ、お互い何も知らないんだ。俺の事が本気で好きになり、俺の人となりを見極めたうえで俺の妻の一人となると言うのであれば大丈夫だが、身も心も捧げるというのは、それこそ奴隷と同じじゃないか。そんな事をする必要はない。もしここを去りたければ去るのも良い。君の意志であれば俺の所に留まりたければ留まっても大丈夫だ。君のしたいようにすればいい。今後の事についてはおいおい考えよう。ただ君は言葉が通じないようだ。だからまずは妻達に言葉を教わってほしい。俺と一部の妻達は異世界からこの世界に召喚されて来ているので、召喚特典?により翻訳能力で君と会話ができる。俺達は異世界から来たと言っても、こちらの世界から召喚された為に召喚者の能力として付与されているが、どうやら君は自らの世界からこちらの世界に送り込まれたようなので、そういう特典がないようだ。生き返ったばかりの為まだ体が辛いだろう。まずはゆっくり休み、体力の回復をして欲しい。もしも俺の元を去る場合、少なくとも言葉を覚えるまでは待って欲しいんだ。俺個人の希望を言えば、いつまでも俺の所にいて欲しいし、妻の一人に迎えたい」
「仰せのままに」
そうして取り敢えずアトランジェを賓客として過ごして貰う事になった。その後は特に何もなく、アトランジェが屋敷に来てから3日程経していた。その間彼女は、まずは落ちた体力を取り戻す為に養生していた。死者蘇生というより、こちらの世界に来る前の戦闘で体力が落ちていたっぽい。
妻達の中でセレーシャを除き、レフトライと妙に馬が合っていたようだ。その為セレーシャ、レフトアイ、 ライトアイの3人でアトランジェに言葉を教える事になった。
アイ姉妹を含めブラックスワンの面々は1度俺と一緒に異世界に飛ばされており、言葉の通じぬ不便さを知っており、アトランジェの気持ちが分かるのだ。
といっても単純である。セレーシャが言った言葉をレフトアイ達がオウム返しのように喋る。そう翻訳能力の関係だ。こちらが喋る言葉にも影響を受けているのだ。相手には母国語で翻訳された言葉が伝わる。こちらはあくまでも母国語で喋っているのだ。聞く側も喋る側も勝手に翻訳されるので、俺を含む召喚者が言葉を教える事はできなかった。ただ文字は別である。とはいっても、今の段階で文字を教えるのは時期尚早の為、まずは会話ができるレベルになってもらわねば何かと困るのだ。
彼女の回復は思ったよりも早く、体を動かす必要もあり、何ができるのかを教えて貰う事にしたのであった。
「はい。我が魂の主ランスロット様。我が名はアトランジェ。ツイナブオドーロの世界より参りました。私のいた里は異人共に襲われ、私も戦っておりました。ただ、数も強さも何もかもが向こうの方が上で、あっという間に追い込まれました。もはやこれまでと覚悟をした時に、我が両親が異世界転送の秘技にて私を異世界に避難させようとしてくれました。ただ、両親も戦っている最中の事で、しかも戦いながら術を発動させた為、最後に不具合が生じました。その為、上空遥か高いところに私は転移した次第です。幸か不幸か落下の最中に気絶し、次に気が付いた時はランスロット様に生き返らせて貰った直後でした。それと多分本来送ろうとしていた世界とは違うのだと思います。これも運命。ランスロット様が私を生き返らせて下さったと聞いております。変に思うかもしれませんし、私も不思議なのですが、お慕いしております。ですので我が身も心も全てランスロット様のものでございます」
彼女は俺に全てを捧げるといったが、まだ頭がはっきり回っておらず、意味が分からなかった。だが俺は咄嗟に諭した。
「君の身の安全を守るし、君を大切に扱う。だが俺に身も心も捧げる必要はない。不思議な事に確かに俺も君の事が好きだ。ただ、お互い何も知らないんだ。俺の事が本気で好きになり、俺の人となりを見極めたうえで俺の妻の一人となると言うのであれば大丈夫だが、身も心も捧げるというのは、それこそ奴隷と同じじゃないか。そんな事をする必要はない。もしここを去りたければ去るのも良い。君の意志であれば俺の所に留まりたければ留まっても大丈夫だ。君のしたいようにすればいい。今後の事についてはおいおい考えよう。ただ君は言葉が通じないようだ。だからまずは妻達に言葉を教わってほしい。俺と一部の妻達は異世界からこの世界に召喚されて来ているので、召喚特典?により翻訳能力で君と会話ができる。俺達は異世界から来たと言っても、こちらの世界から召喚された為に召喚者の能力として付与されているが、どうやら君は自らの世界からこちらの世界に送り込まれたようなので、そういう特典がないようだ。生き返ったばかりの為まだ体が辛いだろう。まずはゆっくり休み、体力の回復をして欲しい。もしも俺の元を去る場合、少なくとも言葉を覚えるまでは待って欲しいんだ。俺個人の希望を言えば、いつまでも俺の所にいて欲しいし、妻の一人に迎えたい」
「仰せのままに」
そうして取り敢えずアトランジェを賓客として過ごして貰う事になった。その後は特に何もなく、アトランジェが屋敷に来てから3日程経していた。その間彼女は、まずは落ちた体力を取り戻す為に養生していた。死者蘇生というより、こちらの世界に来る前の戦闘で体力が落ちていたっぽい。
妻達の中でセレーシャを除き、レフトライと妙に馬が合っていたようだ。その為セレーシャ、レフトアイ、 ライトアイの3人でアトランジェに言葉を教える事になった。
アイ姉妹を含めブラックスワンの面々は1度俺と一緒に異世界に飛ばされており、言葉の通じぬ不便さを知っており、アトランジェの気持ちが分かるのだ。
といっても単純である。セレーシャが言った言葉をレフトアイ達がオウム返しのように喋る。そう翻訳能力の関係だ。こちらが喋る言葉にも影響を受けているのだ。相手には母国語で翻訳された言葉が伝わる。こちらはあくまでも母国語で喋っているのだ。聞く側も喋る側も勝手に翻訳されるので、俺を含む召喚者が言葉を教える事はできなかった。ただ文字は別である。とはいっても、今の段階で文字を教えるのは時期尚早の為、まずは会話ができるレベルになってもらわねば何かと困るのだ。
彼女の回復は思ったよりも早く、体を動かす必要もあり、何ができるのかを教えて貰う事にしたのであった。
1
お気に入りに追加
4,393
あなたにおすすめの小説
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした
服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜
大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。
目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!
そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。
まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!
魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
イレギュラーから始まるポンコツハンター 〜Fランクハンターが英雄を目指したら〜
KeyBow
ファンタジー
遡ること20年前、世界中に突如として同時に多数のダンジョンが出現し、人々を混乱に陥れた。そのダンジョンから湧き出る魔物たちは、生活を脅かし、冒険者たちの誕生を促した。
主人公、市河銀治は、最低ランクのハンターとして日々を生き抜く高校生。彼の家計を支えるため、ダンジョンに潜り続けるが、その実力は周囲から「洋梨」と揶揄されるほどの弱さだ。しかし、銀治の心には、行方不明の父親を思う強い思いがあった。
ある日、クラスメイトの春森新司からレイド戦への参加を強要され、銀治は不安を抱えながらも挑むことを決意する。しかし、待ち受けていたのは予想外の強敵と仲間たちの裏切り。絶望的な状況で、銀治は新たなスキルを手に入れ、運命を切り開くために立ち上がる。
果たして、彼は仲間たちを救い、自らの運命を変えることができるのか?友情、裏切り、そして成長を描くアクションファンタジーここに始まる!
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく……
※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。
ホットランキング最高位2位でした。
カクヨムにも別シナリオで掲載。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる