エラーから始まる異世界生活

第1章

トマス

　朝食が終わりフラフラになっていた俺は誰かに肩を貸して貰いながら部屋に戻った。誰が連れていってくれたのかは、次に目覚めるまで分からなかった。

　正直よく覚えていない。そのままベッドに倒れ込み泥のように眠ったと聞いた。

　その後もうお昼だよと言われ起こされた。

　添い寝してい２人と起き抜けに親子丼セットを楽しんでいた。そう親子丼である。もちろん短時間になってしまうのだが、彼女達にとっては待ちに待った時間であった筈である。堪能した後着替えた、食堂でやはり皆と昼食を食べていた。ごめんなさい。親子丼をしている間皆を待たせていました。

　俺は親子対面の後、最優先事項としてやらねばならぬ未刻印者との刻印の儀を済ませたので、次に向き合わねばならぬ事に向き合う事にした。

　俺の知っているものでなくなっているものが誰かそのものの墓参りに行きたいと言ったのだ

　ドラゴニュート達は一部の高齢だった者を除き、皆健在である。寿命も平均寿命が約200年という事で特に見知った者に関しては心配ないと言っていた。

　但しタオ殿やレーヴェンはさすがに既に亡くなっていた。二人共４５年位前に亡くなっていた。

　また、存命の中で一番に会いたいと思ったのは勿論配下の者もそうだが、トマスだった。彼には召喚直後に俺が生き残るために危険を犯し、協力してくれた恩義がある。

　チャカとレニスを伴い騎士団本部の方に来ていた。トマスは我が国将軍として全軍を指揮していたものだが、流石に今は高齢のため引退している。

　その後周りから乞われたのとせめてもの国への恩返しとして新たに設立した士官学校のオブザーバーとして、協力してくれている。体調の良い時に時折生徒の稽古に付き合ってくれているのだ。

　当人も体がなまるとあっという間に動けなくなるからと体を動かす事を目的としてはいるが、まだまだ元気だった。丁度俺が練兵場に行くと一人の老紳士が刃を潰した剣を片手に剣術を教え込んでいた。

　よく見ると左腕は肘から先がなかった。軍を率いて魔物の討伐に当たっていた時に腕を失ったのだ案内の騎士が教えてくれた。部下を逃す為に殿部隊の一員として自ら買って出た結果だと言う。　　

　被害は最小限に抑えられたそうだが、結果的に彼は部下を救ったとはいえ、大きな代償を払っていたと言う。その後将軍職に着いたのだが、周りから将軍自らが前線に立つものではないと言われ、片手を失ったこともあり殆どの時間を騎士団本部で過ごすことが多かったらしい。

「練習中失礼するよ」

　俺が一声掛けるとまさかという感じで、トマスが俺の顔を見るやいなや剣を放り投げ、
　足を引きずりながら俺の方に駆け寄り、片膝をついて涙を流したまま再開を喜んでいた。

「まさか！まさかランスロット様と再びお会い出来る日が来るとは思わなんだ！懐かしゅうございます！チャカ団長の美しさも相変わらずですな」

　俺はトマスを立たせ、彼を抱き締めた。　

「すっかり年老いたね。苦労掛けたね。あなたが生きている間に戻ってこれてよかった。我が友よ」

　彼は遠慮したが、俺はこの国を今まで守ってくれたトマスに対するせめてものお礼とし、欠損修復と、今体が抱えている病気や足を引きずっている原因となるものを治療した。おそらく寿命が来るその日まで元気に動く事ができるだろうと伝えた。

　トマスは俺にひざまずき、膝をついた俺に抱きしめられ泣いていたので、生徒達がどよめいていた。何故かを騎士団の誰かが生徒たちに説明していたようだ。彼は頑固な偏屈爺として振る舞っていたようだ。

　トマスに折角だから何人かに稽古をつけて行って欲しいと言われた。

　元々そうなるだろうなとは思いつつ了承したのであった。