エラーから始まる異世界生活

第1章

ケラーイノ

　俺はいつのまにか寝ていたようで、4時間が経過した頃、アルキオーネに起こされた。アルキオーネが感激しながら、刻印が刻まれましたと報告してきた。

　勿論俺も確認し、無事に刻印が定着している事が確認出来た為互い抱き合い涙を流していた。俺も彼女の苦悩が思い浮かび、ようやく報われる日が来たのだと感慨深いものがあった。

　本当はもう少し彼女との時を過ごしたかったのだが、彼女の方が大人であった。

「ケラーがランスを待っているわ。あの子はやきもきしていると思うし、私の事はいいから早く行ってあげて。ランスもこれから体がきついと思うけれども頑張ってね」

　そうやって半ば部屋を追い出されるように、アルキオーネの部屋を後にした。一旦トイレに行き、それから自室に戻る。そうすると次の者が時間を見計らって俺の自室で待機しているのだ。今回皆の希望もあり、各々の部屋で刻印の儀を行っていく。

　何年前なのか分からないが、部屋の内装などは彼女達が俺との刻印の儀に備え準備をしていたようだ。ほんのり良い香りがしたり、ろうそくの火が幻想的だったりして、皆各自の部屋で刻印の儀をいつでも行えるようにしていたのだ。屋敷は年代物になっている筈だが、適時内装を手直ししているからか、新築のような綺麗さを保っていた。


　勿論、部屋から部屋への移動はお姫様だっこである。これはどうも鉄板のイベントらしく、お姫様抱っこをすぐに行えるように抱きついてくるのだ。自然と抱けるように。

　ケラーイノの部屋に入ってから、彼女は、自分の体が二十歳の頃の体力的に全盛期の体になっていると言う。鍛え抜かれた身体は引き締まっており、しなやかだった。

　彼女はレニスに師事し剣を鍛えていたと言う。さすがに最近は肉体の衰えから激しい打ち合いが出来なくはなっていたが、また本気でレニスと剣を交える事ができると喜んでいた。

　彼女は刻印時のインターバルタイムに入った時に、俺からの話をとにかく聞きたがった。向こうでの話をひたすら話していたが、特にドラゴンを倒して配下にした時の事などは目をキラキラとさせていた。そうやってまたたく間に四時間が過ぎたが、話の途中で、話を中断した。どうやってか分からないが、時間が経過した事を把握していて、刻印が刻まれた事を俺に伝えてきた。

　何の事はない。他の妻達と念話ができるようになり、そちら経由でおめでとうの嵐だからすぐに分かったらしい。
　お互いに喜び合うと、タユーテを迎えに行ってあげてと言われ、もはやルーチンになっているが、トイレに行き、自室に迎えに行くのであった。