エラーから始まる異世界生活

KeyBow

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第1章

刻印

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 俺は5人に刻印を刻む前に、こちら側にいた妻の全員と僅かながらの時間でも個別で過ごす事を提案したのだが、全員一致で却下された。

 まずは5人に刻印を刻んで、他の者はそれからでいいというような事になった。俺も特に5人の不安は早く取り除いてあげたいという思いも有り皆の意見を受け入れ、刻印を刻む事になった。ただし、その前にもう一度妻達全員とハグとキスをしてからと俺は提案を行い、並んで貰った。


 そしてこれから順次刻印の儀を行っていくのだが、まずはアルキュオーネからだ。本当はデートをし、その日の夜に刻印というような事を行いたかったのだが、今回は5人の強い希望からデートは落ち着いてから、後日改めてお願いしたいと言うのだ。それよりも一刻も早く刻印を刻んで欲しいと言うのだ。俺は敢えてこの50年の事については聞かなかった。

 まだ心と体のバランスがおかしいとは言っていたが、それでも彼女達は俺に対し、50年前より成長した女盛りの姿を見せられて嬉しいと言っていた。皆しつこく年老いた姿を見ていないよね?と聞いてきた。勿論見ていないと、見たのは指先だけだと伝えると皆ホッとしていた。

 アルキュオーネに対し、刻印の儀を始める直前に、彼女自体の残りの寿命を伝えた。

 残りの寿命がもう2ヶ月しかなかったと。俺があと2ヶ月戻るのが遅ければ彼女は死んでいたのだが、その事実を彼女はあっさりと受け入れていた。

 それはつまり約1万年後の俺の寿命まで生きたとして、俺の寿命が尽きた時に彼女は俺を看取った後2か月もすれば若い体のまま死んで行く事になる。彼女はそれが良いという。もう俺がいない所で生きたくはない。俺を追いかけるように死ねた方が幸せという。

 それと俺は特に彼女達5人に対して申し訳ないとしか言いようがなかった。年老いて約70歳の老婆になってしまっていたが、勿論彼女達の貞操は保たれており、男を知らぬまま命果てる所だったのだ。女の喜びというのを知らずに、俺の事だけを想いながら、今まで生き長らえていてくれたのだ。俺がひたすらごめんねごめんねと謝っていると、彼女に怒られてしまった。

「あのねランス、貴方は何も悪い事をしていないのだから。ちゃんと私が生きている間に戻ってきてくれたじゃないの。それでいいのよ。貴方は間に合ったの。他の子にはそんな感じで謝らないでね。数日不在にしていた位の態度の方が、私達も気が楽なよ」

 俺はこの50年に有ったこの世界の出来事を聞こうとしたが、それは他の妻の達の口から聞いた方が良いと言われた。全部自分達新たな刻印者が喋ってしまうと、彼女達の立場がないと。何かと俺に有益な情報を伝え、自分が役に立つ者だと俺に思われたいだろうからと。それは50年の歳月がそうさせると。なるほど確かにそうだとは思う。

 俺は頷き、今この場では愛を語らうだけにする事にした。 彼女の生い立ち、特に幼少期の話を聞いたり、俺の第一印象を聞いたりしていた。

 彼女とひとつになり、4時間のインターバルに入っている時にアルキュオーネが心配そうに問うて来た。

「どうなされたのですか?何か不安な事でも有るのですか?」

 彼女は鋭かった。俺が不安に思っている事が有るというのを見透かされてしまった。隠してもしょうがないので正直に答えた。

 その刻印の儀を行うのは約47年ぶりなんだ。最後に行ったのがリギアだ。それと約50年新たに妻を迎えていないので、本当に久し振りだから、ちゃんと刻印が刻まれるのか?という不安が少しあるんだ。死者蘇生も50年振りに使ってきちんと使えたから、まあ大丈夫だとは思うんだ」

「大丈夫ですわ。まだ刻印が定着しておりませんが、刻印がきちんと刻まれるというのは分かっています。貴方が最初に私に触れた時の幻影でね、今のこのやりとりや、その後自分に刻印がきちんと刻まれて、泣いてランスに頭を撫でられているのを見たの。当初は意味が分からず、何の事かと思ったのよ。そう、今正にこの時の事だったのね」

 俺はぎゅっと抱きしめて謝った。

「ごめんな。不安にさせちゃったな。言われてみればそんな幻影を見たような気がする。確か日記に書いているはずなので、後で見てみるよ。アルキュオーネに触れた時は、何人かをまとめて治療している時だったから、記憶が混乱していたよ」

 とは言いつつ、後ではなく、ベッドでアルキュオーネを胸に抱きしめながら日記を見ていたが、やはりちゃんと書いてあったのであった。
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