415 / 527
第1章
刻印
しおりを挟む
俺は5人に刻印を刻む前に、こちら側にいた妻の全員と僅かながらの時間でも個別で過ごす事を提案したのだが、全員一致で却下された。
まずは5人に刻印を刻んで、他の者はそれからでいいというような事になった。俺も特に5人の不安は早く取り除いてあげたいという思いも有り皆の意見を受け入れ、刻印を刻む事になった。ただし、その前にもう一度妻達全員とハグとキスをしてからと俺は提案を行い、並んで貰った。
そしてこれから順次刻印の儀を行っていくのだが、まずはアルキュオーネからだ。本当はデートをし、その日の夜に刻印というような事を行いたかったのだが、今回は5人の強い希望からデートは落ち着いてから、後日改めてお願いしたいと言うのだ。それよりも一刻も早く刻印を刻んで欲しいと言うのだ。俺は敢えてこの50年の事については聞かなかった。
まだ心と体のバランスがおかしいとは言っていたが、それでも彼女達は俺に対し、50年前より成長した女盛りの姿を見せられて嬉しいと言っていた。皆しつこく年老いた姿を見ていないよね?と聞いてきた。勿論見ていないと、見たのは指先だけだと伝えると皆ホッとしていた。
アルキュオーネに対し、刻印の儀を始める直前に、彼女自体の残りの寿命を伝えた。
残りの寿命がもう2ヶ月しかなかったと。俺があと2ヶ月戻るのが遅ければ彼女は死んでいたのだが、その事実を彼女はあっさりと受け入れていた。
それはつまり約1万年後の俺の寿命まで生きたとして、俺の寿命が尽きた時に彼女は俺を看取った後2か月もすれば若い体のまま死んで行く事になる。彼女はそれが良いという。もう俺がいない所で生きたくはない。俺を追いかけるように死ねた方が幸せという。
それと俺は特に彼女達5人に対して申し訳ないとしか言いようがなかった。年老いて約70歳の老婆になってしまっていたが、勿論彼女達の貞操は保たれており、男を知らぬまま命果てる所だったのだ。女の喜びというのを知らずに、俺の事だけを想いながら、今まで生き長らえていてくれたのだ。俺がひたすらごめんねごめんねと謝っていると、彼女に怒られてしまった。
「あのねランス、貴方は何も悪い事をしていないのだから。ちゃんと私が生きている間に戻ってきてくれたじゃないの。それでいいのよ。貴方は間に合ったの。他の子にはそんな感じで謝らないでね。数日不在にしていた位の態度の方が、私達も気が楽なよ」
俺はこの50年に有ったこの世界の出来事を聞こうとしたが、それは他の妻の達の口から聞いた方が良いと言われた。全部自分達新たな刻印者が喋ってしまうと、彼女達の立場がないと。何かと俺に有益な情報を伝え、自分が役に立つ者だと俺に思われたいだろうからと。それは50年の歳月がそうさせると。なるほど確かにそうだとは思う。
俺は頷き、今この場では愛を語らうだけにする事にした。 彼女の生い立ち、特に幼少期の話を聞いたり、俺の第一印象を聞いたりしていた。
彼女とひとつになり、4時間のインターバルに入っている時にアルキュオーネが心配そうに問うて来た。
「どうなされたのですか?何か不安な事でも有るのですか?」
彼女は鋭かった。俺が不安に思っている事が有るというのを見透かされてしまった。隠してもしょうがないので正直に答えた。
その刻印の儀を行うのは約47年ぶりなんだ。最後に行ったのがリギアだ。それと約50年新たに妻を迎えていないので、本当に久し振りだから、ちゃんと刻印が刻まれるのか?という不安が少しあるんだ。死者蘇生も50年振りに使ってきちんと使えたから、まあ大丈夫だとは思うんだ」
「大丈夫ですわ。まだ刻印が定着しておりませんが、刻印がきちんと刻まれるというのは分かっています。貴方が最初に私に触れた時の幻影でね、今のこのやりとりや、その後自分に刻印がきちんと刻まれて、泣いてランスに頭を撫でられているのを見たの。当初は意味が分からず、何の事かと思ったのよ。そう、今正にこの時の事だったのね」
俺はぎゅっと抱きしめて謝った。
「ごめんな。不安にさせちゃったな。言われてみればそんな幻影を見たような気がする。確か日記に書いているはずなので、後で見てみるよ。アルキュオーネに触れた時は、何人かをまとめて治療している時だったから、記憶が混乱していたよ」
とは言いつつ、後ではなく、ベッドでアルキュオーネを胸に抱きしめながら日記を見ていたが、やはりちゃんと書いてあったのであった。
まずは5人に刻印を刻んで、他の者はそれからでいいというような事になった。俺も特に5人の不安は早く取り除いてあげたいという思いも有り皆の意見を受け入れ、刻印を刻む事になった。ただし、その前にもう一度妻達全員とハグとキスをしてからと俺は提案を行い、並んで貰った。
そしてこれから順次刻印の儀を行っていくのだが、まずはアルキュオーネからだ。本当はデートをし、その日の夜に刻印というような事を行いたかったのだが、今回は5人の強い希望からデートは落ち着いてから、後日改めてお願いしたいと言うのだ。それよりも一刻も早く刻印を刻んで欲しいと言うのだ。俺は敢えてこの50年の事については聞かなかった。
まだ心と体のバランスがおかしいとは言っていたが、それでも彼女達は俺に対し、50年前より成長した女盛りの姿を見せられて嬉しいと言っていた。皆しつこく年老いた姿を見ていないよね?と聞いてきた。勿論見ていないと、見たのは指先だけだと伝えると皆ホッとしていた。
アルキュオーネに対し、刻印の儀を始める直前に、彼女自体の残りの寿命を伝えた。
残りの寿命がもう2ヶ月しかなかったと。俺があと2ヶ月戻るのが遅ければ彼女は死んでいたのだが、その事実を彼女はあっさりと受け入れていた。
それはつまり約1万年後の俺の寿命まで生きたとして、俺の寿命が尽きた時に彼女は俺を看取った後2か月もすれば若い体のまま死んで行く事になる。彼女はそれが良いという。もう俺がいない所で生きたくはない。俺を追いかけるように死ねた方が幸せという。
それと俺は特に彼女達5人に対して申し訳ないとしか言いようがなかった。年老いて約70歳の老婆になってしまっていたが、勿論彼女達の貞操は保たれており、男を知らぬまま命果てる所だったのだ。女の喜びというのを知らずに、俺の事だけを想いながら、今まで生き長らえていてくれたのだ。俺がひたすらごめんねごめんねと謝っていると、彼女に怒られてしまった。
「あのねランス、貴方は何も悪い事をしていないのだから。ちゃんと私が生きている間に戻ってきてくれたじゃないの。それでいいのよ。貴方は間に合ったの。他の子にはそんな感じで謝らないでね。数日不在にしていた位の態度の方が、私達も気が楽なよ」
俺はこの50年に有ったこの世界の出来事を聞こうとしたが、それは他の妻の達の口から聞いた方が良いと言われた。全部自分達新たな刻印者が喋ってしまうと、彼女達の立場がないと。何かと俺に有益な情報を伝え、自分が役に立つ者だと俺に思われたいだろうからと。それは50年の歳月がそうさせると。なるほど確かにそうだとは思う。
俺は頷き、今この場では愛を語らうだけにする事にした。 彼女の生い立ち、特に幼少期の話を聞いたり、俺の第一印象を聞いたりしていた。
彼女とひとつになり、4時間のインターバルに入っている時にアルキュオーネが心配そうに問うて来た。
「どうなされたのですか?何か不安な事でも有るのですか?」
彼女は鋭かった。俺が不安に思っている事が有るというのを見透かされてしまった。隠してもしょうがないので正直に答えた。
その刻印の儀を行うのは約47年ぶりなんだ。最後に行ったのがリギアだ。それと約50年新たに妻を迎えていないので、本当に久し振りだから、ちゃんと刻印が刻まれるのか?という不安が少しあるんだ。死者蘇生も50年振りに使ってきちんと使えたから、まあ大丈夫だとは思うんだ」
「大丈夫ですわ。まだ刻印が定着しておりませんが、刻印がきちんと刻まれるというのは分かっています。貴方が最初に私に触れた時の幻影でね、今のこのやりとりや、その後自分に刻印がきちんと刻まれて、泣いてランスに頭を撫でられているのを見たの。当初は意味が分からず、何の事かと思ったのよ。そう、今正にこの時の事だったのね」
俺はぎゅっと抱きしめて謝った。
「ごめんな。不安にさせちゃったな。言われてみればそんな幻影を見たような気がする。確か日記に書いているはずなので、後で見てみるよ。アルキュオーネに触れた時は、何人かをまとめて治療している時だったから、記憶が混乱していたよ」
とは言いつつ、後ではなく、ベッドでアルキュオーネを胸に抱きしめながら日記を見ていたが、やはりちゃんと書いてあったのであった。
1
お気に入りに追加
4,393
あなたにおすすめの小説
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
スキルスティール〜悪い奴から根こそぎ奪って何が悪い!能無しと追放されるも実はチート持ちだった!
KeyBow
ファンタジー
日常のありふれた生活が一変!古本屋で何気に手に取り開けた本のタイトルは【猿でも分かるスキルスティール取得法】
変な本だと感じつい見てしまう。そこにはこう有った。
【アホが見ーる馬のけーつ♪
スキルスティールをやるから魔王を倒してこい!まお頑張れや 】
はっ!?と思うとお城の中に。城の誰かに召喚されたが、無能者として暗殺者をけしかけられたりする。
出会った猫耳ツインズがぺったんこだけど可愛すぎるんですが!エルフの美女が恋人に?何故かヒューマンの恋人ができません!
行き当たりばったりで異世界ライフを満喫していく。自重って何?という物語。
悪人からは遠慮なくスキルをいただきまーーーす!ざまぁっす!
一癖も二癖もある仲間と歩む珍道中!
異世界でトラック運送屋を始めました! ◆お手紙ひとつからベヒーモスまで、なんでもどこにでも安全に運びます! 多分!◆
八神 凪
ファンタジー
日野 玖虎(ひの ひさとら)は長距離トラック運転手で生計を立てる26歳。
そんな彼の学生時代は荒れており、父の居ない家庭でテンプレのように母親に苦労ばかりかけていたことがあった。
しかし母親が心労と働きづめで倒れてからは真面目になり、高校に通いながらバイトをして家計を助けると誓う。
高校を卒業後は母に償いをするため、自分に出来ることと言えば族時代にならした運転くらいだと長距離トラック運転手として仕事に励む。
確実かつ時間通りに荷物を届け、ミスをしない奇跡の配達員として異名を馳せるようになり、かつての荒れていた玖虎はもうどこにも居なかった。
だがある日、彼が夜の町を走っていると若者が飛び出してきたのだ。
まずいと思いブレーキを踏むが間に合わず、トラックは若者を跳ね飛ばす。
――はずだったが、気づけば見知らぬ森に囲まれた場所に、居た。
先ほどまで住宅街を走っていたはずなのにと困惑する中、備え付けのカーナビが光り出して画面にはとてつもない美人が映し出される。
そして女性は信じられないことを口にする。
ここはあなたの居た世界ではない、と――
かくして、異世界への扉を叩く羽目になった玖虎は気を取り直して異世界で生きていくことを決意。
そして今日も彼はトラックのアクセルを踏むのだった。
ザ・タワー 〜俺にしかできない魔石を鑑定する能力!魔石を使っての魔法&スキル付与!この力で最強を目指す〜
KeyBow
ファンタジー
世界初のフルダイブ型のVRMMOゲームにダイブしたはずが、リアルの異世界に飛ばされた。
いきなり戦闘になるハードモードを選んでおり、襲われている商隊を助ける事に。
その世界はタワーがあり、そこは迷宮となっている。
富や名誉等を得る為に多くの冒険者がタワーに挑み散っていく。
そんなタワーに挑む主人公は、記憶を対価にチート能力をチョイスしていた。
その中の強化と鑑定がヤバかった。
鑑定で一部の魔石にはスキルや魔法を付与出来ると気が付くも、この世界の人は誰も知らないし、出来る者がいないが、俺にはそれが出来る!
強化でパラメータを上げ、多くのスキルを得る事によりこの世界での生きる道筋と、俺TUEEEを目指す。
タワーで裏切りに遭い、奴隷しか信じられなくなるのだが・・・
性奴隷を飼ったのに
お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。
異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。
異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。
自分の領地では奴隷は禁止していた。
奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。
そして1人の奴隷少女と出会った。
彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。
彼女は幼いエルフだった。
それに魔力が使えないように処理されていた。
そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。
でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。
俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。
孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。
エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。
※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。
※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。
ざまぁから始まるモブの成り上がり!〜現実とゲームは違うのだよ!〜
KeyBow
ファンタジー
カクヨムで異世界もの週間ランク70位!
VRMMORゲームの大会のネタ副賞の異世界転生は本物だった!しかもモブスタート!?
副賞は異世界転移権。ネタ特典だと思ったが、何故かリアル異世界に転移した。これは無双の予感?いえ一般人のモブとしてスタートでした!!
ある女神の妨害工作により本来出会える仲間は冒頭で死亡・・・
ゲームとリアルの違いに戸惑いつつも、メインヒロインとの出会いがあるのか?あるよね?と主人公は思うのだが・・・
しかし主人公はそんな妨害をゲーム知識で切り抜け、無双していく!
異世界の約束:追放者の再興〜外れギフト【光】を授り侯爵家を追い出されたけど本当はチート持ちなので幸せに生きて見返してやります!〜
KeyBow
ファンタジー
主人公の井野口 孝志は交通事故により死亡し、異世界へ転生した。
そこは剣と魔法の王道的なファンタジー世界。
転生した先は侯爵家の子息。
妾の子として家督相続とは無縁のはずだったが、兄の全てが事故により死亡し嫡男に。
女神により魔王討伐を受ける者は記憶を持ったまま転生させる事が出来ると言われ、主人公はゲームで遊んだ世界に転生した。
ゲームと言ってもその世界を模したゲームで、手を打たなければこうなる【if】の世界だった。
理不尽な死を迎えるモブ以下のヒロインを救いたく、転生した先で14歳の時にギフトを得られる信託の儀の後に追放されるが、その時に備えストーリーを変えてしまう。
メイヤと言うゲームでは犯され、絶望から自殺した少女をそのルートから外す事を幼少期より決めていた。
しかしそう簡単な話ではない。
女神の意図とは違う生き様と、ゲームで救えなかった少女を救う。
2人で逃げて何処かで畑でも耕しながら生きようとしていたが、計画が狂い何故か闘技場でハッスルする未来が待ち受けているとは物語がスタートした時はまだ知らない・・・
多くの者と出会い、誤解されたり頼られたり、理不尽な目に遭ったりと、平穏な生活を求める主人公の思いとは裏腹に波乱万丈な未来が待ち受けている。
しかし、主人公補正からかメインストリートから逃げられない予感。
信託の儀の後に侯爵家から追放されるところから物語はスタートする。
いつしか追放した侯爵家にザマアをし、経済的にも見返し謝罪させる事を当面の目標とする事へと、物語の早々に変化していく。
孤児達と出会い自活と脱却を手伝ったりお人好しだ。
また、貴族ではあるが、多くの貴族が好んでするが自分は奴隷を性的に抱かないとのポリシーが行動に規制を掛ける。
果たして幸せを掴む事が出来るのか?魔王討伐から逃げられるのか?・・・
異世界召喚された俺は余分な子でした
KeyBow
ファンタジー
異世界召喚を行うも本来の人数よりも1人多かった。召喚時にエラーが発生し余分な1人とは召喚に巻き込まれたおっさんだ。そして何故か若返った!また、理由が分からぬまま冤罪で捕らえられ、余分な異分子として処刑の為に危険な場所への放逐を実行される。果たしてその流刑された所から生きて出られるか?己の身に起こったエラーに苦しむ事になる。
サブタイトル
〜異世界召喚されたおっさんにはエラーがあり処刑の為放逐された!しかし真の勇者だった〜
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる