エラーから始まる異世界生活

第５章

お祝いのパイと別のパイ

　ライとのパイ作りが終わった後、皆で食卓を囲んでいる。
　俺がパイ作りをしている時に、別のパイに気を取られていて、ついつい手を伸ばしてしまったのだが、手にフォークが刺さっていたりした。そして

「めっ！今は駄目よ。夜まで待ちましょうね。私もついに…」

　と怒られてしまった。ライは無表情でフォークを投げていた。
　そう、投擲術が何気に俺よりレベルが高かったりする。

　そして食堂にて皆でライとレフの誕生日を祝っていた。そして出来上がったパイを食べていたが、どうやら出来栄えがライの予測の一歩上を行っていたようだ。

　味もそうだが生地の仕上がりも文句なしだった。ただ、日本じゃ当たり前に食べられるレベルなのだが、皆の驚き具合が新鮮だった。

　誕生日のプレゼントは明日お互い渡しあう事になっていた。因みにレフにはライが選んだ髪飾りに俺が強化を施して渡す予定にしている。レフは何やら準備はできたが、最後の仕上げを俺にお願いすると言っていた。

　皆で祝い、酒を飲み大いに盛り上がっていた。二人で焼いたパイは最高だった。味も雰囲気も。

　そして今は自室で別のパイを堪能していた。そう、二つのピチピチのパイを攻略中だ。

　こちらのパイも美味だったと言っておこう。3年。3年待ち焦がれていたπ乙だ。

　ライは愛し合う事に対して知識がなかった。どうも妻達から何も聞かされなかったのか聞こうとしなかったのか、恥ずかしがり初々しい 反応だった。

　出会ってから3年、漸くライトアイが俺の正式な妻になった。

　刻印の儀が終わった後、4時間のクールタイムが待っていたがライは俺に早々に子供を産みたいとねだってきた。ただ真剣に子供については話をする事にした。問題がいくつかあるのだ。幻影で見た情報を総合すると、向こうの世界に戻れる事は分かっているが、戻るのは今この屋敷にいる13人のみ。もし子をなしたとすればその子は向こうには行けない。別れなければならないと。また、身重だった者もいない。

　それに寿命が大幅に違う。まず間違いなく子を看取らなければならない。その為少なくともこの世界で子なした場合は早々に養子に出さなければならないと。もしも5年10年後の子供の幼少期に別れ離れになる場合は辛すぎるし、心に傷を負うだろうからと話をしていると、ライは勿論向こうの世界に帰ってからの話だとは言ってくれていた。だが改めて考えるとこの世界に後何年いる事になるのか正直分からない。

　帰る手立てを色々考え、知識を求めたが帰る手立てが見つからなかった。ひょっとするとこの場にルシテルがいれば、その知識を使い魔法陣を作成し異世界へのゲートを開く事ができたかもわからないが、知識がなかった。

　俺の頭の中には確かにあの異世界から地球の文明を遥かに超えた文明の利器を持ち込んだあの化け物を呼び寄せる結果になった魔法陣の構成は頭に入っているが、あれを行うつもりはさらさらなかった。

　仕組みが理解できていないのと半径100 km以上の生命体の生命力そのものを贄として発動していたので、そのものを再現すると同じ事が起こってしまうと判断したからだ。知識があれば異常個所を修正し、こちらの目的に合ったものを出せるのだろうが、俺には無理だった。