エラーから始まる異世界生活

第５章

ティエラへの想い

　俺は足掻いていた。ティエラの体の状態から仮死状態ではないのかと感じたのだ。

　皆は俺が気が触れたとしか思わなかったようだが、それはそれで皆が俺が如何に彼女を大切にしていたかを知らしめるだけだった。

　皆は俺の事をある程度まではそっとしておこうと思ったようで、食事等はドアの前に食事を置いておきますねという感じに置いてくれていた。

　さすがに食事を受け取り、食べ終わった物を外に出すような引き籠もり状態になってしまった。しかも部屋にティアラの亡骸と一緒に籠もっている感じだった。

　ただ仮死状態と思った理由はいくつかある。いわゆる弛緩筋というものが機能しているからだ。そう亡くなった人というのは弛緩筋が緩み、尿や便が体の外に出てしまう。体内に留めておくための弛緩筋が働かなくなるからだが、彼女にはそれがない。また体も冷たくないのだ。手足も寝ている子供の如く動くからだ。

　例えばこのまま死者の弔いとしてティエラを燃やしてしまったとすると、かつての俺のように生きている状態なのに燃やしてしまうのではないかと危惧したのだ。

　俺は考えうるありとあらゆることを試していた。体を切り開き直接心臓をマッサージとかだ。

　そして彼女の心臓が停止して5日目の夜に最後の主体を試す事にした。そう彼女の体に直接俺の体の一部を挿れるというものだ。以前聞いた事がある。そこからの魔力注入が実は一番効率が良いが、通常はそういうことはしないし、忌避される。それが良い結果になるのかどうかわからないが、俺はまさに彼女に俺の分身を挿れようとしたその瞬間、彼女が急にむせたのだ。

「あのランスロット様？寝ている私に何をしようとされていたのですがそういう事はその、私の意識がある時にやって頂きたいのですわ」

　俺はハッとなった。そのまま彼女をぎゅっと抱きしめてしまったが、俺はもう某はつを止められなかった。それはともかくなぜ彼女が生き返ったのか分からないが、俺は泣きながら彼女を愛した。

「君は5日前に一度死んでしまったんだよ。今まで色々な事を試したけども生き返らなかったんだ。良かった。良かった。」

　本来であれば皆にすぐ知らせるべきだったが、一通り彼女と何があったかを愛し合いながら話し合った。その後彼女に服を着せて皆のところに行こうとしたが、その前にふとステータスを見ると俺は思わず笑ってしまった。

　俺が一度死んだのと同じ理由だったからだ。
　彼女は大天使になる素質があったのだ。彼女のステータスには種族が大天使になっていた。等級はもちろん俺よりも低いが、オリヴィアに続いて2人目である。ひょっとすると向こうに戻ったらもう一人くらい大天使になっているのだろうかとふと思ったりもする。何はともあれ満面の笑みを浮かべたティエラが俺の首にしがみつき、お姫様抱っこで皆のところに行ったものでだから、皆腰を抜かしていたのであった。