エラーから始まる異世界生活

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第5章

手紙

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拝啓

 父さんへ。今どこで何をしていますか?僕は元気にしています。

 父さん達が神隠しに有ってから明日で一年。僕も大分気持ちの整理が付いたので手紙を書く事にしたよ。

 今もあの駅の一角は封鎖されていて、明日皆であの場所に行くんだ。あそこに物を置くとなくなっているとの噂があり、ひょっとしたらこの手紙が届くのかな?と思い、置いてみるので、父さんに届く事を期待しているんだ。

 近況等を伝えます。父さんがいないのは寂しいけど、お金の方は大学を出るまでの分は何とかなりそうだから心配はいらないよ。労災扱いになったのと、政府から見舞金が出たんだ。銀行が住宅ローンを死亡した時の扱いにしてくれたからちゃらになったよ。生命保険も出たから。複雑な気分だ。大学を卒業するのにお金が必要だから有り難いのだけれども、父さんが死亡扱いになった事は許せないんだ。僕には父さんが簡単に死なない筈だから生きていると思っているよ。

 母さんも今は仕事に行っていて、昔勤めていた会社というか、父さんが勤めている会社が雇用してくれたんだ。

 本当に何処に行ってしまったの?あの高校生達と共に消えてしまった父さんの映像を何度も見たよ。今はもう落ち着いているけれども、当初はマスコミの取材で大変だったんだ。

 結局大学は地元の公立大学にしたんだ。うん、ちゃんと合格出来たからさ。さゆりも今は立ち直り、ちゃんと学校にも行ってるし、部活も再活動しているんだよ。

 それと報国があります。僕に初めての彼女が出来ました。
 如月 香里奈さん。今は高校三年生だ。
 あの事件の後、遺族会とは書きたくないけど、残された家族で作った家族会が発足され、そこで知り合ったんだ。 
 年子のお姉さんがあの中に居たんだ。お互い家族が神隠しにあったというのもあり、会合でお互い引かれ合って彼女に告白されたんだ。

 お姉さんの瀬利佳さんに似ていてかなりきれいな子だよ。父さんに合わせたいよ。
 瀬利佳さん達と父さんは一緒に消えたから、今頃一緒にいたりしてね。不謹慎だけどさ、ある意味あの事件に感謝しているんだ。本当だったら知り合えなかった女性なんだ。彼女を愛してるんだ。だからね、大学を出たら直ぐにプロポーズするつもりなんだ。父さん、会いたいよ。

 父さんの無事を祈っています。父さんの自慢の息子 雄高より。

敬具


 何故か誰かの手紙を俺は読んでいた。誰が誰に宛てた手紙かは分からなかった。封筒が無かったから分からなかったのだ。

 意味が分からない手紙だった。頭がまだ回っていないのもあり、自分宛ての手紙だったと気が付くのはかなり後の事だったが、今この手紙を読んでいる時に感じたのは他人の出来事だった。

 この手紙はどうやら彼の父親に宛てた手紙だ。
 無事だと良いが、文面から大きな事故に巻き込まれ亡くなったようだ。労災扱いとあるから、どうやら仕事中に事件に巻き込まれたようだ。彼女の姉も巻き込まれ亡くなっているようだ。誰かは分からないが冥福を祈り、この手紙の書き主とその家族達の幸せを祈りたい。何かを送れるなら金目の物を送り、経済的に、せめて大学を出るまでの資金に不自由しないようにしてあげたい。もしくはあの高校生と一緒に転移された誰かの身内か?先生なんて居なかった筈だ。どうやらセリカには妹がいて、彼はセリカの妹と付き合っているらしい。セリカに会ったら伝えたい。

 等と思っているとアラームと共に画面に支援をしますか?と聞いてきた。対価は彼らとの記憶らしい。多分知り合いではないので、無くなって困る記憶は無い筈なのでぽちろうと思った。

 もし託せるならと、俺の名前で無事に生きている地球人の名前と、死亡者の名前のリストを託した。俺に関しては記憶を全て失くしている胸と、母なら分かる事を書いて、手紙の主に託す事にした。

 今こちらで生きている者は残念ながら地球に帰る事が出来ない。もし、私からの手紙を見た方がいれば死亡者へ一律の補填を政府に託し、私の家族に戻れなくて済まないと伝えて欲しい。物を付けられるなら遺品を託し、君達が社会人になれるまでお金に困らなく出来る物を付けておく。私の家族宛の手紙は付けない。何の条件で、これを遅れるか分からないが、皆の手紙を付けられないからである。家族にごめんと謝りたい。

 最後に、立派に生きるんだ。残された家族の幸を祈らせて頂きます。

 異世界に生きる者の代表  藤久 志郎



 俺は半信半疑で手紙をしたためた。

 付ける物を厳選した。遺族の方に渡すのは申し訳ないがデジタル関連は入れなかった。というか半導体を使った者は無理だった。遺体を荷物に付ける事にした。体を切り取り、既に修復と、切り取った方の体を燃やし墓に埋葬していた。体は万が一を考えて収納に入れていた。ぼちると荷物と遺体等が消えたのが分かる。彼にこの手紙が届く事を祈りたい。

 そうこうしていると、誰かに呼ばれて、引っ張られていったのであった。
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