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第二章
第52話 パーティー
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朝食を終えた僕たちは、宿を出発してギルドに向かった。今日は新たな仲間たち、ナリアナ、ラファエル、そしてアレクシアをパーティー【ウエイプレス】へ加入するための大切な手続きが待っている。
ギルドの受付カウンターで、僕たちは必要な書類に署名し、お金の取り決めも行った。
新たに得たお金は10等分し、各自に1ずつ配分し、残りはパーティーの共有資金として管理することにした。宿代やパーティーとして行動しているときの食事代も、共有資金から支払うことにした。
「ちょ、バン様、良いのか?アタイなんかをバンと同じ扱いでさ」
「ちょっとミンディー、あんた何言ってんのよ?バンっちはあなた達を奴隷として扱わないって言ったわよね?そんなあなた達がお金を受け取らないなら、あたいたちも受け取れないのよ。1人の人として自覚なさいよ」
「わ、わかったよ。受け取ればいいんだろ?」
「じゃあメリッサ、パーティー用のお金の管理を任せても良いかな?帳簿をつけてほしいんだけど、僕の頭じゃ無理そうだから」
「謹んで引き受けます。皆様、よろしいでしょうか?」
「メリッサは真面目ね!別に宿とか食事に困らなければ良いのよ。バンっちが古のダンジョンに挑むのならね!」
「私も主殿の提案に従いますが、メリッサ殿、管理に困った時は相談してくだされ」
「はい。その時は宜しくお願いしますわ」
一悶着あったけど、帳簿はメリッサが無事に引き受けてくれ、皆受け入れてくれた。貴族家出身だけあり、適任そうだったからお願いしたんだ。
パーティー登録が終わった後、ナリアナの装備を整えるために市場へ向かった。流石に1年ちょっとでは街並みに変化はなく、懐かしさを感じながらナリアナと並んで歩いた。他のメンバーは、初めての街を興味深そうに見ていたけど、特に大きな変化はなかった。
「ナリアナ、魔法の訓練はどうだった?」
僕が尋ねると、ナリアナは小さく首を横に振った。
「ううん、孤児院ではファイヤとウインドウしか教えてもらえなかったの。他の魔法を学ぶお金なんてなかったから・・・シスターが使えるのがそれだけだったの」
僕は彼女の肩を軽く叩いて励ました。
「大丈夫だ。これからは僕がついているから、一緒に強くなろう」
ナリアナは微笑んだが、その目には不安が隠れていた。彼女は魔法が使えないこと、武器を持たずに近接戦闘もできないことを恥じていた。孤児院を出たばかりの者が直面する厳しい現実を、彼女も経験していたのだ。
「なぜ、準備が整っていないこんな状態で私たちを追い出すのかしら・・・」
ナリアナがつぶやくと、僕は苦い顔をした。
「僕もジミーさんを頼ってシャラックの町に行ったら、何ヶ月も前に亡くなっていて途方に暮れたよ。残念だけど、これが現実なんだ。でも変えたい!」
「そうだったんだ・・・でも私には頼れるバンにぃがいて良かった!生きていてくれてありがとう!」
「うん。ギルドの冒険者たちも理解していない。だが、僕たちは違う。俺たちは生き抜くんだ」
ナリアナは魔力量が多いと聞いていたけど、孤児院で覚えられたのは生活魔法のファイヤとウインドウだけだったようだ。ちゃんとした魔法使いや魔法師に師事するお金なんてあろうはずもない。つまり今の彼女は魔法がまともに使えず、武器もなく近接戦闘がまともにできない状態だった。
近寄ってくるのは、若い女を食い物にしようとするやからだけだ。
だからナリアナは顔をすすで汚し、見た目を悪くしていた。
しかし、彼女が潰れる前に僕たちが間に合って、大きな壁を乗り越える手助けができたことに安堵した。
僕の時もそうだけど、孤児院出身者の先輩で生きている冒険者はいないので、頼れる人がいなかった。
その頼れる人が僕で、色々あり迎えに行くのが遅れてしまった。
もし僕が死んでいたらナリアナは野垂れ死ぬか、色街で客を取る娼婦になっていたかもだ。
実際孤児院の先輩の中には、娼婦になった人もいると聞いている。孤児院を出てすぐはこのような状況に陥ってしまう者が多く、ナリアナもその例に漏れなかった。
よくあること・・・ここはこんな理不尽な世界なんだ。
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ギルドの受付カウンターで、僕たちは必要な書類に署名し、お金の取り決めも行った。
新たに得たお金は10等分し、各自に1ずつ配分し、残りはパーティーの共有資金として管理することにした。宿代やパーティーとして行動しているときの食事代も、共有資金から支払うことにした。
「ちょ、バン様、良いのか?アタイなんかをバンと同じ扱いでさ」
「ちょっとミンディー、あんた何言ってんのよ?バンっちはあなた達を奴隷として扱わないって言ったわよね?そんなあなた達がお金を受け取らないなら、あたいたちも受け取れないのよ。1人の人として自覚なさいよ」
「わ、わかったよ。受け取ればいいんだろ?」
「じゃあメリッサ、パーティー用のお金の管理を任せても良いかな?帳簿をつけてほしいんだけど、僕の頭じゃ無理そうだから」
「謹んで引き受けます。皆様、よろしいでしょうか?」
「メリッサは真面目ね!別に宿とか食事に困らなければ良いのよ。バンっちが古のダンジョンに挑むのならね!」
「私も主殿の提案に従いますが、メリッサ殿、管理に困った時は相談してくだされ」
「はい。その時は宜しくお願いしますわ」
一悶着あったけど、帳簿はメリッサが無事に引き受けてくれ、皆受け入れてくれた。貴族家出身だけあり、適任そうだったからお願いしたんだ。
パーティー登録が終わった後、ナリアナの装備を整えるために市場へ向かった。流石に1年ちょっとでは街並みに変化はなく、懐かしさを感じながらナリアナと並んで歩いた。他のメンバーは、初めての街を興味深そうに見ていたけど、特に大きな変化はなかった。
「ナリアナ、魔法の訓練はどうだった?」
僕が尋ねると、ナリアナは小さく首を横に振った。
「ううん、孤児院ではファイヤとウインドウしか教えてもらえなかったの。他の魔法を学ぶお金なんてなかったから・・・シスターが使えるのがそれだけだったの」
僕は彼女の肩を軽く叩いて励ました。
「大丈夫だ。これからは僕がついているから、一緒に強くなろう」
ナリアナは微笑んだが、その目には不安が隠れていた。彼女は魔法が使えないこと、武器を持たずに近接戦闘もできないことを恥じていた。孤児院を出たばかりの者が直面する厳しい現実を、彼女も経験していたのだ。
「なぜ、準備が整っていないこんな状態で私たちを追い出すのかしら・・・」
ナリアナがつぶやくと、僕は苦い顔をした。
「僕もジミーさんを頼ってシャラックの町に行ったら、何ヶ月も前に亡くなっていて途方に暮れたよ。残念だけど、これが現実なんだ。でも変えたい!」
「そうだったんだ・・・でも私には頼れるバンにぃがいて良かった!生きていてくれてありがとう!」
「うん。ギルドの冒険者たちも理解していない。だが、僕たちは違う。俺たちは生き抜くんだ」
ナリアナは魔力量が多いと聞いていたけど、孤児院で覚えられたのは生活魔法のファイヤとウインドウだけだったようだ。ちゃんとした魔法使いや魔法師に師事するお金なんてあろうはずもない。つまり今の彼女は魔法がまともに使えず、武器もなく近接戦闘がまともにできない状態だった。
近寄ってくるのは、若い女を食い物にしようとするやからだけだ。
だからナリアナは顔をすすで汚し、見た目を悪くしていた。
しかし、彼女が潰れる前に僕たちが間に合って、大きな壁を乗り越える手助けができたことに安堵した。
僕の時もそうだけど、孤児院出身者の先輩で生きている冒険者はいないので、頼れる人がいなかった。
その頼れる人が僕で、色々あり迎えに行くのが遅れてしまった。
もし僕が死んでいたらナリアナは野垂れ死ぬか、色街で客を取る娼婦になっていたかもだ。
実際孤児院の先輩の中には、娼婦になった人もいると聞いている。孤児院を出てすぐはこのような状況に陥ってしまう者が多く、ナリアナもその例に漏れなかった。
よくあること・・・ここはこんな理不尽な世界なんだ。
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