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第一章

第23話 お母さんばかりやん

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 翌日、僕は焦りに焦りまくった・・・

 期待に胸を膨らませながら、受付嬢さんたちが連れてきてくれた人を見た途端、期待で膨らんだ胸は一気に縮んじゃった・・・

 お母さん、お母さん、お母さん…お母さんばっかやん!
 受付嬢さんの母親だから、中年になっても綺麗な人ばかりなんだけど、それより皆さんほっそりしていらっしゃって・・・1kgや2kgばかり・・・
 ふくよかな知り合いに来てもらった人もいるけど、庶民だから落としたい体重分のお金を払える訳でもないので、頭が痛い。

 8人で11kg・・・

「バンスロットさーん!お母さんは身内価格でお願いできないかしら?」

 美人受付嬢さんに手を握られ、目をうるうるされた。しかも絶対わざとだろ?と思うようにブラウスのボタンが1つ外れていて、谷間にゴクリ・・・少ない人数がさらに殆どが身内価格になってしまった・・・僕、女の人に対する免疫が少なすぎる・・・

 6kgは身内価格…
 2万g×6=12万g
 5万g×5=25万g
 計37万g
 1日の金額とすれば上々と見るべきなのか?
 稼いだ額からしたら年収の3分の1なのだから凄い額なんだよ!1人で上級冒険者並みの稼ぎを出したんだけど・・・

 これはいけない。
 受付嬢さんからの口コミは効果があるだろうけど、時間が掛かる。
 多分あと5日では目標金額には届かない。
 やばいなと焦りつつ、お金を持っていそうなのは・・・やはりお貴族様か・・・となり、昼からは貴族街を歩き、屋敷を訪ねることにしたんだ。

【紹介状は?】
【怪しい人を入れる訳には・・・】
【何しに来やがった?】
【我が主はかなり痩せております。体重を減らすどころか、もう少し食べて欲しい位なのです】

 門番や応対してきたメイドさん、執事さんに追い返されたりと話にならなかった。

 そうして無駄な時間を過ごした僕は、這々の体でギルドに向かった。

 ・
 ・
 ・

 約束している時間の少し前にギルドに行くと、ゾーイさんが・・・受付嬢さんをナンパしていた・・・

 僕に気が付くとナンパを止めたようで、別れの一言を言っていた。

「しばらくはこの町にいるからさ、また顔を出すよ。ミスティックのゾーイだ。じゃあよろピコピコ!」

「はい。よろピコピコ」 

 ゾーイさんは受付嬢さんに背を向けてこちらに来たけど、受付嬢さんはあっかんべーをしていて、顔が【「ふざけんなボケェ!】って感じの嫌そうな表情をしていたな。

 あの受付嬢さん、歳も近くて顔はタイプなんだけど、表と裏があるのかな?ゾーイさんのことをまるでゴミを見るような目で見ていたのが面白いというか、知らぬが仏?

「おっ!相変わらずシケた顔してやがんなー。坊主、悪いことは言わねぇ。ああいった女はやめとけ」

「綺麗ですし、スタイルも良い方ですよ?」

「見た目だけはな。俺に舌出して嫌そうな顔してたろ。ヨロピコっつって笑顔で返すやつなんているかよ。お前なんてコロッと騙されそうだからな」  

「はぁ・・・そうですか?」

 僕はそれしか言えなかったけど、いったいこの人は何がしたかったんだろうか?

「ほら、ぼさっとすんな。すぐに行くぞ。暗くなっちまったら話ができねぇからな」

 それから僕はゾーイさんと一緒にギルドを出て歩いていたけど、脇道から勢いよく走ってきた子供がゾーイさんにぶつかって転けた。

 ゾーイさんは子供がぶつかった衝撃で少しバランスを崩したけど、すぐに立ち直ると子供の様子を見た。

 子供は膝を抱えてうずくまっており、涙を堪えるように顔をしかめていた。ゾーイさんは膝まづき、優しく子供の肩を抱いて声をかけた。

「坊主、大丈夫か? 膝を擦りむいたんだな。こりゃちょっと血が出ちまっているな。痛かったろ?でも、泣かずにいるなんて偉いな」

 子供はゾーイさんの顔を見上げ、少し驚いた表情を浮かべたけど、ゾーイさんはその反応に微笑むと僕の方に目を向けた。

「おい、バンスロット。お前、ウォーター使えるか?」

 僕は頷いて、手を前に出して軽く唱えると、清らかな水が手のひらから溢れ出たのを見て、感心したように頷いた。

「なるほど、お前は生活魔法を使えるんだな。じゃあ、その水で傷口を洗ってくれ。坊主、少ししみるが我慢しろよ」

 僕は傷口に優しく水を掛け、子供の膝の汚れと血を洗い流した。
 子供は痛そうに息を吸い込んだけど、ゾーイさんが頭を撫でているためか、痛みを我慢してはいるも安心した様子だった。

 ゾーイさんはハンカチを取り出し、慎重に傷口を拭いた後、膝に優しく巻いて固定した。

「ほら、もう大丈夫だ。これで傷口もきれいになったぞ。家に帰ったらちゃんと手当をしてもらうんだぞ。」

 子供は頷くと立ち上がり、僕とゾーイさんに感謝の言葉を述べた。

「おにぃさん、おじさん、ありがとう」

 ゾーイさんは一瞬顔をしかめたけど、すぐに笑顔を取り戻して子供の頭を軽く撫でた。

「おう、気にすんな。だがな、俺はまだ20代のお兄さんだ!折角助けてやったのに、このくそガキめ!」

 子供は笑顔を見せ、わざとらしいゾーイさんの足払いをさっと避けると手を振りながら「おじさんバイバイ」と言いながら走っていった。
 ゾーイさんはブツブツと文句を言いながらも、振り向く子供に大きく手を振る姿を見せ、ちゃんと前を見て走れよとか叫んでいたな。

 僕はその光景を見て思わず笑みがこぼれた。ギルドでのゾーイさんが受付嬢に向けていた軽薄な態度とは裏腹に、子供に対する優しさは本物だった。

「へぇ、意外ですね。子供には優しいんですね」

 僕の言葉にゾーイさんは肩を竦めて答えた。

「当たり前だろ。子供は大人と違って素直だからな。それによ、子供の笑顔はな、何物にも代えがたいんだぜ」

 僕はフフフと笑みをこぼすと、再びゾーイさんと歩き始めたけど、この後行く場所がまさかあんなところだとは、この時の僕は思いもよらなかったんだ。
 それはともかく、ゾーイさんの意外な優しさが僕の心に深く刻まれ地に落ちた評価が爆上がりしたのは言うまでもないよね!
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