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第一章
第16話 迂闊
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漠然とはいえ、何かがおかしいという不吉な予感を感じていたのにも関わらず、隠し扉という禁断の果実に手を伸ばして開けてしまった。
知りたいという知識への渇望、お宝があり金策が完了するのではないかという甘い思いが慎重さと恐怖を上回った。開けた扉の中に足を踏み入れた瞬間、僕は深い闇へと一歩踏み出してしまったことを悟った。
それは隠し扉から中に入った途端に、ガコンと音がして扉が閉まったからだ。
その瞬間、自分の迂闊さと軽率な行動に対する怒りが僕の全身を震わせた。それは恐怖と後悔の混ざり合った、制御不能な感情の波だった。
部屋の中から感じる魔物の気配からまずい!と感じ、慌てて入った扉から外に出ようとしたんだ。
無常にも扉は微動だにせず、開くどころか壁から次々と魔物が現れ始めたんだ。その時、僕は一瞬のうちに自分の予感が正しかったことを悟る。しかし、今更後悔しても始まらない。どんなに恐ろしい敵が待ち受けていても、戦って生き残るべく僕は剣を握り締め戦いに備えた。
空気を裂く羽音が、死の予兆となって僕の耳に響き渡った。それは避けられない運命の到来を告げる不吉な警鐘のようだった。
そして無数のキラービーが、黒い雲となって僕に襲い掛かる。彼らの針は、死を運ぶ小さな矢となって、僕の運命を狙っていた。
戦いの火蓋が切って落とされた。
僕の振った剣は、昆虫型モンスター特有の硬い外骨格に当り火花を散らす。
小型・・・子分を倒しつつその巨体を翻弄し、急所への一撃を狙う。
しかし、親分の方もまた、鋭い牙と長い触角で反撃してくる。
僕たちの間で、激しい攻防が繰り広げられた。
戦いは僕の想像を遥かに超える厳しさだった。親分だけなら何とかなるかもだけど、子分の魔物たちは絶え間なく波のように襲って来る。
1体1体はランク8相当と大したことはないんだけど、その数がたまらない。
剣の一振りで屠るもきりがない。
しかも親分の方とも戦いながらなので、精神的にも消耗する。
僕の体力が徐々に減っていく中、時折子分が放った針に吹き飛ばされ、更に体力を削られる。
幸い防具のお陰で貫通はしないも、その衝撃は僕の体力を確実に奪っていく。
全て剣で払うも威力までは削げず、剣ごと吹き飛ぶ形だ。
一時は本当に命の危険を感じ、このままでは終わる?ここまでなのか?という絶望すら抱いた。けれども、僕は諦めなかった。
いつ終わるのか先の見えない絶望的な闘いの中、壁に微かに輝く一筋の光が目に留まった。それは噂に聞いたことがある魔法石?確証はないが、これは僕に新たな希望の光を与えてくれた。
それはダンジョンの謎を解く鍵だった。僕は全ての希望をその石に託し、魔物の隙をついて光る石の所に駆け寄ると、力の限り押し込んだ。
その瞬間、部屋は眩い光に満ち、魔物たちは突如として消え去った。
おかしいなと思ったんだ。
親分の方は倒れる気配がなく、子分は霧散してもゴブリン程度の小さな魔核しか落とさなかったんだ。
つまりエンドレスだったことを物語っていた。
クリアするやり方自体はあったけど、明確に殺しに来ているとしか言えなかった。
僕は何とか勝利したのだけど、体力はほとんど残っていない。
でも、クリアしたことの証として先へと続く扉が重い音を立ててゆっくりと開く。僕はその扉の向こうに何が待っているのか分からないが、進まなきゃ!そんな感じでまともな判断ができなくなっていた。
しかし、このダンジョンでの僕の使命はまだ終わっていない。体力はほとんど残っていないけれど、焦りからお金をなんとかしなきゃ、ダンジョンをクリアする目処をつけなきゃと、そのためにはこの先も進むしかない!そう心に決め扉の向こうへと足を踏み出すことに決めた。
これが僕の冒険の次なる章への一歩だった。僕は何が待ち受けていても、この冒険を通じて何かを見出すと信じている。
とはいえ、小さいながら落ちている魔核はかなりの量があり、1個につき2000gになりそう。
体力を回復するのに時間が掛かりそうなので、何か起こらなければ体を休めようと、魔核を拾っていく。
その数は58個。合計すると11万6千gになり、高いのか安いのか分からないけど、今の僕にはありがたかった。
1時間ほど休み、かなり体力も回復したので先へ行こうと思ったが、この時は不思議と来た側の扉を開いて戻るという考えは浮かばなかった。
知りたいという知識への渇望、お宝があり金策が完了するのではないかという甘い思いが慎重さと恐怖を上回った。開けた扉の中に足を踏み入れた瞬間、僕は深い闇へと一歩踏み出してしまったことを悟った。
それは隠し扉から中に入った途端に、ガコンと音がして扉が閉まったからだ。
その瞬間、自分の迂闊さと軽率な行動に対する怒りが僕の全身を震わせた。それは恐怖と後悔の混ざり合った、制御不能な感情の波だった。
部屋の中から感じる魔物の気配からまずい!と感じ、慌てて入った扉から外に出ようとしたんだ。
無常にも扉は微動だにせず、開くどころか壁から次々と魔物が現れ始めたんだ。その時、僕は一瞬のうちに自分の予感が正しかったことを悟る。しかし、今更後悔しても始まらない。どんなに恐ろしい敵が待ち受けていても、戦って生き残るべく僕は剣を握り締め戦いに備えた。
空気を裂く羽音が、死の予兆となって僕の耳に響き渡った。それは避けられない運命の到来を告げる不吉な警鐘のようだった。
そして無数のキラービーが、黒い雲となって僕に襲い掛かる。彼らの針は、死を運ぶ小さな矢となって、僕の運命を狙っていた。
戦いの火蓋が切って落とされた。
僕の振った剣は、昆虫型モンスター特有の硬い外骨格に当り火花を散らす。
小型・・・子分を倒しつつその巨体を翻弄し、急所への一撃を狙う。
しかし、親分の方もまた、鋭い牙と長い触角で反撃してくる。
僕たちの間で、激しい攻防が繰り広げられた。
戦いは僕の想像を遥かに超える厳しさだった。親分だけなら何とかなるかもだけど、子分の魔物たちは絶え間なく波のように襲って来る。
1体1体はランク8相当と大したことはないんだけど、その数がたまらない。
剣の一振りで屠るもきりがない。
しかも親分の方とも戦いながらなので、精神的にも消耗する。
僕の体力が徐々に減っていく中、時折子分が放った針に吹き飛ばされ、更に体力を削られる。
幸い防具のお陰で貫通はしないも、その衝撃は僕の体力を確実に奪っていく。
全て剣で払うも威力までは削げず、剣ごと吹き飛ぶ形だ。
一時は本当に命の危険を感じ、このままでは終わる?ここまでなのか?という絶望すら抱いた。けれども、僕は諦めなかった。
いつ終わるのか先の見えない絶望的な闘いの中、壁に微かに輝く一筋の光が目に留まった。それは噂に聞いたことがある魔法石?確証はないが、これは僕に新たな希望の光を与えてくれた。
それはダンジョンの謎を解く鍵だった。僕は全ての希望をその石に託し、魔物の隙をついて光る石の所に駆け寄ると、力の限り押し込んだ。
その瞬間、部屋は眩い光に満ち、魔物たちは突如として消え去った。
おかしいなと思ったんだ。
親分の方は倒れる気配がなく、子分は霧散してもゴブリン程度の小さな魔核しか落とさなかったんだ。
つまりエンドレスだったことを物語っていた。
クリアするやり方自体はあったけど、明確に殺しに来ているとしか言えなかった。
僕は何とか勝利したのだけど、体力はほとんど残っていない。
でも、クリアしたことの証として先へと続く扉が重い音を立ててゆっくりと開く。僕はその扉の向こうに何が待っているのか分からないが、進まなきゃ!そんな感じでまともな判断ができなくなっていた。
しかし、このダンジョンでの僕の使命はまだ終わっていない。体力はほとんど残っていないけれど、焦りからお金をなんとかしなきゃ、ダンジョンをクリアする目処をつけなきゃと、そのためにはこの先も進むしかない!そう心に決め扉の向こうへと足を踏み出すことに決めた。
これが僕の冒険の次なる章への一歩だった。僕は何が待ち受けていても、この冒険を通じて何かを見出すと信じている。
とはいえ、小さいながら落ちている魔核はかなりの量があり、1個につき2000gになりそう。
体力を回復するのに時間が掛かりそうなので、何か起こらなければ体を休めようと、魔核を拾っていく。
その数は58個。合計すると11万6千gになり、高いのか安いのか分からないけど、今の僕にはありがたかった。
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