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第66話 極大魔法の連発
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隊列をどうするか迷った末に、俺が先頭を進むことに決めた。スルメイラは殿を務め、俺たちを守りながら後ろ向きに進む。浅香と弘美は真ん中に位置し、友理奈は俺のすぐ後ろだ。緊張の糸が張り詰めたまま、俺たちはできるだけ静かに歩を進めた。
だが、数分も経たないうちに背後から再び轟音が響き渡り、熱風が吹きつけてきた。振り返るとスルメイラの放ったインフェルノによる炎が後方の魔物たちを焼き尽くしていた。
「スルメイラ!」
俺は振り向きざまに叫んだ。「あまり目立つな!これ以上魔物を引き寄せたら――」
「ご心配なく、銀治様」
スルメイラは涼しげな顔で答える。
「少なくとも、しばらくは背後を気にする必要はありませんわ」
スルメイラが極大魔法を使うたびに、彼女の言葉の真実を再確認する。確かに小さい方が消費魔力が大きいというのは奇妙なことだが、これまでは出力を絞るのが苦手なのだと思っていた。しかし実際には、極大魔法の消費魔力と初級魔法の消費魔力が逆転している不思議な仕様だ。炎で焼き尽くされた通路には、動ける魔物の姿は見当たらなかった。
しかし、熱気の残滓が周囲に漂い、息苦しさを覚える。空気が重くなり、汗がじっとりと肌にまとわりつくようだ。
「暑苦しい……」
浅香が眉をひそめ、額の汗をぬぐった。
「彼女、相変わらず容赦ないわね」
「それでも助かってるわけだから……感謝しないと」
弘美が友理奈に返事をしながらも、どこか息苦しそうだ。
友理奈が俺の背中を軽く叩きながら言った。
「銀治、大丈夫?少し休む?」
「いや、まだ進まなきゃだ。けど……この空気、長くはもたないかもな」
俺は少し先の通路を見渡す。明るい光が見えるわけでもなく、どこまで続くのかもわからない。ただ、魔物が少なそうな道を選んで進むしかないのだ。
「このフロア、出口がどこか見当つかないの?」
浅香が不安げに尋ねる。
「わからない。だけど出口があるとしたらまだ先だろう」
俺は前方を指差しながら答える。分岐がなく、最初にいたところをどちらかに進むしかなかった。
「俺たちはとにかく進むしかない」
スルメイラが小さくため息をつく。
「この状況では立ち止まるほうが危険です。銀治様のおっしゃる通り、とにかく進みましょう」
その言葉に俺たちは再び歩を進めた。迷路のようなダンジョンの中、背後の炎の余韻が少しずつ薄れていくのを感じながら、俺たちはただ黙々と出口を目指して進んでいった。
だが、数分も経たないうちに背後から再び轟音が響き渡り、熱風が吹きつけてきた。振り返るとスルメイラの放ったインフェルノによる炎が後方の魔物たちを焼き尽くしていた。
「スルメイラ!」
俺は振り向きざまに叫んだ。「あまり目立つな!これ以上魔物を引き寄せたら――」
「ご心配なく、銀治様」
スルメイラは涼しげな顔で答える。
「少なくとも、しばらくは背後を気にする必要はありませんわ」
スルメイラが極大魔法を使うたびに、彼女の言葉の真実を再確認する。確かに小さい方が消費魔力が大きいというのは奇妙なことだが、これまでは出力を絞るのが苦手なのだと思っていた。しかし実際には、極大魔法の消費魔力と初級魔法の消費魔力が逆転している不思議な仕様だ。炎で焼き尽くされた通路には、動ける魔物の姿は見当たらなかった。
しかし、熱気の残滓が周囲に漂い、息苦しさを覚える。空気が重くなり、汗がじっとりと肌にまとわりつくようだ。
「暑苦しい……」
浅香が眉をひそめ、額の汗をぬぐった。
「彼女、相変わらず容赦ないわね」
「それでも助かってるわけだから……感謝しないと」
弘美が友理奈に返事をしながらも、どこか息苦しそうだ。
友理奈が俺の背中を軽く叩きながら言った。
「銀治、大丈夫?少し休む?」
「いや、まだ進まなきゃだ。けど……この空気、長くはもたないかもな」
俺は少し先の通路を見渡す。明るい光が見えるわけでもなく、どこまで続くのかもわからない。ただ、魔物が少なそうな道を選んで進むしかないのだ。
「このフロア、出口がどこか見当つかないの?」
浅香が不安げに尋ねる。
「わからない。だけど出口があるとしたらまだ先だろう」
俺は前方を指差しながら答える。分岐がなく、最初にいたところをどちらかに進むしかなかった。
「俺たちはとにかく進むしかない」
スルメイラが小さくため息をつく。
「この状況では立ち止まるほうが危険です。銀治様のおっしゃる通り、とにかく進みましょう」
その言葉に俺たちは再び歩を進めた。迷路のようなダンジョンの中、背後の炎の余韻が少しずつ薄れていくのを感じながら、俺たちはただ黙々と出口を目指して進んでいった。
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