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第35話 待ち合わせにてテンプレ

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 日曜日の朝、着替えをしようとした時にやらかしていた事がわかった。そう、しくじったのだと理解して俺は途方に暮れていたのだ。着ていく服がない・・・いや、勿論服そのものはあるのはあるのだが・・・はっきり言ってダサい。焦りながらクローゼットを開け、ダンジョンに入る装備でも着るかと考えたが、それは流石に無理だと首を横に振る。

 結局、比較的マシだと思えるオーバーサイズのTシャツと、短すぎるうえに色あせたケミカルウォッシュのジーンズ、そしてトドメは蛍光色のスニーカーという組み合わせになった。まるで時代遅れのファッションショーみたいだ。昨日服を買いに行く時間はあったのに思いつかなかった。よりによって森雪さんと買い物に行くのに服が・・・やらかしちまった・・・

 こういう機会に備えて、カッコ良いとは言わなくても、普通の、年相応の服を持っていたらなあと思うも、今となっては後の祭りだ。ちなみに、これらの服は母親が買ってくれたものだった。
 センスを疑います・・・

 時間が迫っていたので、そんなダサい格好だが駅に向かわざるを得ない。遅刻は論外だから、早目早目に動くぞ!
 ・
 ・
 ・

 おかしい・・・駅の近くにある噴水前で待ち合わせだけど、待ち合わせ時間が迫るも、森雪さんは現れない。

 俺は30分前に着き、今は待ち合わせ時間まで5分を切っている。
 彼女の性格からは、よほどのことがない限り5分前には来ているはずなんだ。
 委員長としてまるで先生のように、5分前行動を!と学校で言い続けていたからだ。

 ふと駅の方を見ると、バス乗り場の方に森雪さんと背格好のにた女性の姿があった。少し遠くからなので確証はないが、髪型や背格好が一致する。
 どう見ても森雪さんだ。

 どうやら3人の男にナンパされているのか、絡まれているのか、噴水の前に来れなかった理由がわかった。とりあえず向かおう。

 今日はメガネをかけておらず、いつもよりおしゃれな装いで、落ち着いたピンク色のワンピースに、白いカーディガンを羽織っている。さらに、髪をふんわりと巻いて、軽やかにアレンジしているため、いつもの彼女とは少し違う雰囲気だ。

 そんな彼女が俺に気が付くと急いで駆け寄って来て、俺の腕に自分の腕を絡ませて来た。
 森雪さんはまるで恋人のようにしっかりと俺の腕にしがみつくように絡ませ、腕組み状態になる。そして俺の背中に隠れるような仕草を見せる。周囲の男たちからの怨嗟と言うか、イキった視線を感じるも俺は少し照れ臭く感じた。

 すると、ナンパしていた茶髪のチャラ男たちが近づいてきた。彼らは20歳前後、いかにもと言った感じて方肩を揺らしながら接近してきた。

「おい、何だよお前!俺たちの邪魔すんなよ」

 テンプレートのように面白みもなく、どすを効かせた感じに絡んでくる。

「森雪さん、少し下がっていて」

 俺は彼女に軽く声をかけた。森雪さんは、少し戸惑いながらも素直に後ろに下がった。

 チャラ男Aはいきなり俺に向かって拳を振り上げたが、俺は軽く避けるだけ。何度も攻撃してくるが、一切手を出さずにひらりひらりとかわしていく。

「おいおい、そんなしょぼいやつに何やってんだよ。俺がやる」  

 チャラ男Bが駆けてくる。 
 拳を握り溜めを作り必殺の一撃を放つも、俺は最小限、それも当たる直前に躱した。
 動きは遅く、あたっても痛くないよなと思う。
 そいつは当たると思ったようで、体重を乗せたパンチを繰り出したが、当たらなかったのもあり、通り過ぎるとバランスを崩して無様に地面を転がる。

「なんなんだこいつ!いったい何だよ!くそ、本気でやってやる」

 最後にリーダー格の男がイラついて、全力で殴りかかってきた。あえてそれを受け止めることにし、胸に拳を当てさせたが、全然痛くない。

 多少衝撃はあるが、上体がブレることもなく、微動だにしなかった。やはり痛くないな。

「見たまんまのテレフォンパンチだな、痛くも痒くもないや」

 ついついぼそっと呟いた。

 逆にリーダーの方が手を痛そうに握りしめて唸る

「何だ、この硬さは…手が折れちまった・・・」

 驚きと痛みから顔を歪める。

「やべぇ、こいつやばいぞ」

「行こう」

 残りの二人も唸りながらリーダーをかばうようにし、そそくさと背を向けた。

 その時、チャラ男Bが転けた時に落としたペットボトルが目に入った。俺は軽く足でそれを蹴り上げ宙に。

「落とし物だよ」

 そう言って、チャラ男Bの胸に向かって蹴り飛ばした。ペットボトルが彼の胸にポンと当たると、彼は驚いて尻もちをつき、「ひぃー!」と情けない声をあげながら逃げ出していった。

 森雪さんは驚いた様子で俺を見上げ、「すごい・・・」と感嘆の声を漏らす。

「いやいや、大したことないよ」

 俺は少し照れながら笑い、彼女の手を取って駅へ向かう。

 周りで見ていた人が感嘆の声をあげ、拍手をしていたりする。

 森雪さんはほっとしたように俺を見上げ、「ありがとう、怖かった」とつぶやいた。俺は少し照れながら「いや、本当に全然大したことないから」

 そう答えると、その場から逃げるように森雪さんの手を取り切符を買いに駅に向かった。
 今日は波乱のスタートとなったけど、腕を組まれたり、手を取っても嫌がらぜず、これはこれで良かったのかな?と思った。

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