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第34話 換金

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 日曜日に装備を更新すべく、隣の瑞川市に買い物に出かける話をしたが、森雪さんは少し考えたあと照れくさそうに話し始めた。

「迷惑じゃなければ、私も一緒に行ってもいいかな?」

 遠慮がちに一緒に行きたいと言ってくれたので、俺は即座に答える。

「迷惑なんてことないよ!むしろ一緒に来てくれたら心強いきて嬉しいよ!」

 その瞬間、俺は何気なく呟いてしまった。

「デート・・・かも?」

 自分で言っておいて、慌ててその言葉を飲み込もうとしたが、聞き返してこないから聞こえなかったよね?

 森雪さんが少し驚いた表情をして耳を赤く染めていた。

「え?う、うん。た、確かにデ、デート・・・よね?」

 小さな声で呟いた後、「よし、気合を入れなきゃ!」と決意を固めたような声がかすかに聞こえた。

 ・・・まさか、そんなことないよな?俺は一瞬聞き間違えたかと思いつつも、森雪さんの真剣な顔を見て、心の中でますます混乱した。

「いや、たぶん・・・普通に買い物の手伝いって意味だよな」
 
 自分に言い聞かせながら、俺はその日曜が少し特別なものになりそうだと、期待半分、不安半分の気持ちで考えていた。

 その日は森雪さんを家の前までタクシーで送り届けた。彼女の家はやはり豪邸で、門の前で別れ際に驚いたと言うか、ヘタレな俺には不可能な提案をしてきた。

「寄っていく?」

 家に入るように誘ってくれたが、俺は断るしか無かった。

「今日は家族に美味しいものを食べさせたいから」

 苦しい言い訳をして断った。森雪さんも納得してくれたが、少し寂しそうに見えたのは気のせいじゃなかったかもしれない。

 家に帰ると、今回の稼ぎの一部である300万を家のお金に入れ、少しでも家族の生活を楽にしたいと思った。残りは装備などの強化に使うつもりで、特に明日は500万を剣の購入に使おうと考えていた。そんなことを思いながらベッドに腰掛け、これまでのダンジョンでの戦いと、その結果として得たものを思い返し、まとめてみることにした。



 ダンジョンでの稼ぎの記録

 1回目: ピグミーバット、ビッグラット狩り

 ドロップ: 魔石×5(500円×5=2500円)

 その他: 小型の爪や羽(換金不可)


 2回目: レイド戦参加(春森新司たちとのダンジョン)

 ドロップ:ボスの魔石・レイド戦で10階層のボス分(押し入れの中・未鑑定)

 ボスドロップ: 黒い外套(未鑑定・かなりの防御力があるとしかわかっていない)

 ロングソード(400万円相当の鑑定価値)

 その他未鑑定アイテム: 
 スキルオーブ(効果未確認・未鑑定・レイド戦で道中の魔物がドロップした)

 3回目の戦果(3階層)
 ドロップ品:
 倒した魔物: 大蝙蝠×8、メタボキャット×6、ボア×10

 金額
 魔石:大蝙蝠とメタボキャット:1000円×14(14,000円)
 ボア:2000円×10(20,000円)
 その他:ボアの粗皮×3(一枚1万円、合計30,000円)
 合計64,000円


 4回目: ミノタウロス討伐(本日)

 ボスドロップ: 魔石(黒魔石)×1(1000万円相当)
 ビキニアーマー(後に500万円相当・精神力が弱いほど防御力が上がる特殊アイテム)森雪さんに。


 その他情報:銀治のメイン武器 レイド戦でボス撃破後に拾ったのロングソード(鑑定評価により400万円相当・タングステンカーバイト製、耐酸性特性)

 書き出してみると、今日のミノタウロス討伐は本当に驚異的な稼ぎだった。特にビキニアーマーと黒魔石の価値が大きい。ビキニアーマーは森雪さんにあげるとした手前手放すことは確定だ。もしミノタウロスの魔石がなければどうなったか分からないけど、2人で入ったダンジョンの稼ぎで、俺の方が多く貰うことになるから気にしないでと強引に受け取ってもらった。

 そして、レイド戦で手に入れたロングソードも400万円の価値があるとは驚きだ。かなりの強度だが、重いのが難点だ。
 ただ、未鑑定の黒い外套や押し入れにしまい込んだ魔石も気になる。次の休みにでもそれらをギルドで鑑定してもらおうか。

「これからもっと強くならなきゃな・・・」

 自分を奮い立たせるように呟きながら、俺は眠りについた。

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 魔石の価値についての説明

 ダンジョン内で得られる魔石の価値は、階層によって変わる。1階層での魔石の価値は500円だが、階層が下がるごとに倍になり、2階層で1000円、3階層で2000円となる。さらに各階層にいるフロアボスがドロップする魔石はその階層で出る通常の魔物に対し10倍の価値を持っている。例えば、1階層のボスが5000円、3階層のボスなら2万円となる。

 今回のミノタウロスは本来なら7階層のボスで、ドロップした『黒魔石』は通常の30倍の価値を持ち、1000万円相当のものだ。これは特別な上乗せがされているため、単純な計算よりも少し高額なものになっている。
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