イレギュラーから始まるポンコツハンター 〜Fランクハンターが英雄を目指したら〜

KeyBow

文字の大きさ
上 下
32 / 76

第32話 スルメイラからの逆襲

しおりを挟む
 スルメイラは森雪さんの手からビキニアーマーをすっと奪い去ったと言うか、手に取ると頷きながら「ふむふむ」とまるで鑑定士のようにビキニアーマーをじっくりと観察し始めた。

「ほほう、これは・・・すんごい代物ですよ、ご主人様!」

 目を輝かせながら突然言い出す。

 俺と森雪さんが驚いていると、スルメイラは嬉しそうに続けた。

「このビキニアーマー、ただの装備じゃないよ!まず、見た目はただのセクシーな鎧に見えるけど・・・実は、ものすごい魔力を秘めているんです!特に防御力が異常に高く、物理攻撃や魔法攻撃を大幅に軽減できるの。しかも、これを着た者の身体能力も大幅に引き上げる効果があるわ。さらに、着ると自動的に戦闘時の反応速度もアップする優れものよ!」

 俺と森雪さんは思わず顔を見合わせた。

「そんなすごいものなのか・・・」

 俺が呟くと、スルメイラは満足げに頷き、さらに話を続けた。

「ただし、ちょっと問題があるのです。これを装備するには相応の精神力が必要なんだよ。じゃないと、着る人の意志を少しずつ支配しちゃうかもしれないの。特に自己意識が強いと、アーマーが自分の体の一部だと錯覚してしまうことがあるの。逆に心や意志の弱い人が着ると、アーマーの保護欲が働き、防御力が物凄いの。でも少し強気になるのが難点かな?まさに使う者を選ぶ装備と言っても過言じゃないんだよ!まぁ、ご主人様あなら大丈夫だろうけど、どう?着てみる?なんなら手伝うよ!」

 俺は急に視線を感じ、ビキニアーマーをじっと見つめる森雪さんと、何とも言えない表情で俺を見ているスルメイラに気づいた。

「いやいや!俺は着られないし、森雪さんが着るかどうかも彼女次第だから!」

 慌てて言い訳をする俺。

「そ、そんな・・・凄そうなのを・・・私に?」

 森雪さんは戸惑いながらも、スルメイラの説明に少し興味を持った様子だった。

 森雪さんはスルメイラに突き飛ばされた時に足をくじいたようで、回復魔法を使ったはずだけど歩くのが辛そうだった。
 そして、痛む足がカクンとなり、よろけて倒れる。
 咄嗟に抱きとめる。

「森雪さん、さっき足を挫いていたんだね・・・ここは奥の方であよれだから、俺が背負うよ。森雪さんは黙っておぶされて!」

 森雪さんはあわあわしていたけど、スルメイラに促され俺の背後に回る。
 しかし、最後は背中にくっつかないのをもどかしく思ったスルメイラが背中を押し、俺の背中に森雪さんがぶつかる形となったが、俺は森雪さんを一気に背負った。

「そ、そんな・・・悪いわ・・・」

「気にしないで。何か出たらスルメイラが倒すから、森雪さんはしばらく背負われててよ」

「だって、私ってきっと重いよ?」

「ふふふ。俺、体力だけは自信があるんだよ。ほら、森雪さんは軽いからなんともないさ!」

 そうして森雪さんを背中におんぶしながら、俺は何とかダンジョンの出口を目指して歩いていた。正確には階段が近いので2階層に降り、転移版を使う。
 彼女の体のぬくもりがじわりと伝わってくる。そして女性特有のプニッとした柔らかさは・・・感じなかった。
 何故ならハンターの常識として、胸はガードするものだから、森雪さんも皮の胸当てを着ている。
 多少曲がるが、ベルトほどの硬さの革をなめし、女性用はバストサイズに合わせて作られているが、背中に押し付けられるのは、その硬い皮の胸当ての感触で正直少し痛い。
 胸の感触なんてダンジョンでは感じないのさ。

 それにしても、スルメイラが俺の方を見てニヤニヤしているのが気になって仕方がない。

「ご主人様、背中の感触はどんな感じですか?」と、スルメイラが意地悪そうに聞いてくる。

「な、なに言ってんだよ、別に何も感じてねぇよ!」俺はあわてて否定するが、顔が熱くなってきているのが自分でもわかる。背中のぬくもりが急に意識に上がってしまい、ますます焦る。

「ほうほう、そういうことですか・・・。ただ、ぬくもりだけじゃない感触もあるんじゃないですか?」

 スルメイラがからかうように言って、さらに俺の動揺を誘う。

「おい、やめろって!そんなこと気にしてねぇから!胸当てをしてるから少し痛いくらいなんだぞ!」俺は必死に声を張るが、どうしても意識が背中に向いてしまう。確かに、森雪さんの体の感触は胸当ての所以外思った以上に柔らかくて・・・いや、ダメだ!そんなことを考えちゃいけない。

「ふふん、そうは言っても、ご主人様もの顔が赤くなってますよ?それとも…森雪さんの背中のぬくもりに、他のことまで考えちゃったとか?」 

 スルメイラがさらに追い打ちをかけるように言ってくる。

「は、はうう・・・」

 突然、森雪さんが背中で小さく声を漏らすのが聞こえた。

「も、森雪さん?どうした?」

 俺は驚いて振り向こうとするが、彼女は顔を俺の背中に埋めてしまっている。

「ごめんね、銀治君・・・。なんか、その・・・背中にくっついてるのが・・・気になって・・・胸当てのところ痛いって言ってたから気になるの」

 彼女が小さな声で言った。

 俺は急に意識が背中から外れなくなり、ますます焦りを覚える。

「いや、全然大丈夫だって!俺も、気にしてないから・・・」

「本当に?・・・」

 森雪さんがさらに小さな声で聞いてきて、背中にピタリとくっついたまま。
 首に絡みつく腕の柔らかさと、髪の毛からわずかに漂うシャンプーの匂いが心地よい。

「う、うん、もちろん!」

 俺は必死で答えたけど、どうしても背中の感触から意識が離れない。スルメイラはそんな俺を見て楽しんでいるかのように、ますますニヤニヤしている。

「ほらほら、ご主人様、正直に言わないとダメですよ?森雪さんの胸は結構いい感じの感触でしょ?」

 とからかうスルメイラに対して、俺はもう何も言い返せない。ただ、心の中で頼むから、もう黙ってくれ!と叫ぶしかなかった。

しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!

よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。 10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。 ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。 同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。 皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。 こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。 そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。 しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。 その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。 そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした! 更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。 これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。 ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...