イレギュラーから始まるポンコツハンター 〜Fランクハンターが英雄を目指したら〜

第27話 ファミリアのこと

　カフェは森雪さんのお勧めの店で、店内の雰囲気は落ち着いていて、森雪さんとの距離が近くて緊張した。もしこれが森雪さんの部屋だったら、気絶していたかもしれない。森雪さんは俺の腕が再生してからは普段通りだが、俺との距離がかなり近くなった気がする。

　カフェでの話では、ダンジョンはどこも基本的に5階層での構成からスタートし、潰されるたびに階層が1つ増えるらしい。そして、階層が増えるごとに中の魔物も強化されるという。

「世界には10回攻略されたダンジョンもあるんだよ。だけど、それ以上は攻略禁止になったのもあり存在しないの」

　森雪さんは真剣な表情で話した。

「特に、10回潰された後のダンジョンは、未だに最下層のボスを倒せていないらしいの。強力すぎて、手がつけられないんだって・・・」

　その話を聞いて、俺はダンジョンの奥深さと危険性を改めて感じた。前日まではこれまで1階層や2階層での戦いしか経験していない俺にとって、その話はまるで別世界の話のように思えた。

「もっとちゃんとダンジョンのこと、ファミリアのことを勉強しないといけないな」

　俺は心の中で決意を新たにした。

　実は、森雪さんは俺以外の男に対して少し恐怖心を抱いている。男子慣れしていないせいか、俺に対してはひたすら心配してくれるんだけど、それはどうも、俺が前にダンジョンで死にかけたことに対する責任感からくるもので、好意とかそんなものじゃない。だから、もし俺がそれを勘違いして「付き合ってください」とか言ったら、全部台無しになる。皮肉なことに、俺の情けない態度が逆にこの距離感を保っているんだと思う。

　ファミリアの話をしようとしたら、森雪さんは「まさか・・・」と少し鋭い目つきになりジトッとした目を向けてきた。

　隠せないなと諦め、俺がファミリアのカードを持っていることをあっさり見抜いた。否定しようとしたけど、どうやら顔に出ていたらしい。

「その話は外でしないほうがいいよ」

　森雪さんが真剣な顔で言い、俺たちは急遽隣りにあるカラオケボックスに移動することになった。正直、女子と密室に二人きりなんて経験がない俺は、心臓が口から飛び出そうなくらい緊張していた。

　カラオケボックスに入ってから、森雪さんがファミリアの話を教えてくれた。

「強いファミリアは精神的に空っぽな部分があって、最初はむしろ足手まといになっちゃうらしいの。逆に弱いファミリアはすぐに使えるけど、限界は3階層くらいまでで、それ以上に育てるのは大変だと聞いているわ。」

　丁寧に説明してくれた。

　俺がカードを取り出すと、森雪さんはやっぱりそうなんだといった顔をしたが、スルメイラのカードを見せると、目を見開いて驚いた様子を見せた。

「一度、スルメイラさんに会ってみたいな！」

　俺が頷くと彼女は俺の手を握りしめ、真剣な目で強く言い始めた。

「私も頑張ってダンジョンに入るから、見守ってて」

「うん」

　俺はその瞬間、心臓がドキッとしたが、冷静に頷くと返事をした。
　森雪さんは俺の手を握っていたことに気が付くと真っ赤になり手を離した。

　そして2日後の土曜日に待ち合わせし、ダンジョンに入る。彼女が俺の今の強さも確認することになった。