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第24話 前途多難

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 スルメイラのことだけど、どうやら一度学習したことは大丈夫で、今の俺以上の攻撃力もある。悪意もないし、気遣いをするときはするなど、悪いやつじゃないと思う。ただし、性格が残念なのは別問題だろう・・・
 スルメイラの能力が高いことは認めるが、ドヤ顔や余計な一言は相変わらずだ。まぁ、それも彼女の個性として受け入れるしかないのかもしれない。
 俺が大蝙蝠と悪戦苦闘している間に何体か倒していたようで、助太刀の話をした後に魔石を渡され、いつの間に?と唸るしか無かった。

 それはともかく、次の相手はメタボキャットだ。今度こそちゃんと戦いたい。大人の中型犬ほどの大きさで、見るからに鈍重そうな体つきをしているが、そこから繰り出される見た目不相応な俊敏さは侮れない。油断すればこちらが圧倒されるかもしれない。

「行くぞ、スルメイラ」

 声をかけながら、俺は盾を構えて前進する。スルメイラには援護を頼むが、今回は俺自身の力でこの戦いを乗り切りたいという気持ちが強い。何とかこのメタボキャットを倒して次に進むのが目標だ。

 メタボキャットの鋭い動きに一瞬だけ圧倒されたが、俺は盾をしっかり構えて一歩ずつ前に進む。次の攻撃のタイミングを見計らっていると、スルメイラは少し距離を取り、じっと様子を伺っている。今回、彼女に頼らずに決着をつけられるだろうか?いや、さっきのは事故みたいなもんだ。

 今の段階で多少不安があり、全幅の信頼があるとはいえないが、後ろに味方が控えている安心感がある。相手が速いとはいえ目で追えるようになっていた。ステータスの確認はハンター登録時以来していなかったが、レベルが上がった時にか、鍛えた分パラメーターが上っていたんだ。それがあるからか大蝙蝠の動きも見えていたんだと思う。

 先ほど見せた無様な姿は、緊張で動きが硬くなり、足元も気にしていなかったから自滅したようなものだ。冷静に対処すればどうということはない相手だった。

 盾でメタボキャットを殴りつけ、地面を転がした。剣の扱いに不慣れだから盾で殴ったけど、なんだかなぁ。ひっくり返ったメタボキャットは、メタボな体が災いして起き上がれない様子だ。そういえばこの魔物に対する初心者向けの攻略法は【ひっくり返すこと】だったことを思い出した。俺はバタバタしているメタボキャットの腹に剣を突き入れて倒した。
 ひっくり返すと実に呆気ない。
 因みに盾は左腕に装着し、手はフリーにしてあるので、剣を両手で握れた。

 スルメイラは相変わらず無表情で俺を見ているが、さっきの指示通りちゃんと周りの警戒をしてくれている。
 ちなみに大蝙蝠も盾で受け止めて地上に落とせば剣でサクッと倒せられる。
 物理衝撃に弱く、ある程度の衝撃を加えると数秒は飛べないんだ。

 そんなことを思い出しながらメタボキャットのドロップを拾い、スルメイラにロングソードを渡そうと近付く。

 今回は彼女の近接戦闘がどんな感じなのか試してもらおうと思ったんだ。戦闘スタイルや戦力を把握しておかないと、この先苦労するだろう。

「次の魔物が現れたら、お前も戦ってみろ。魔法はできるだけ使わずに、この剣で挑戦してみてくれ」

 スルメイラは俺の言葉を聞いて、少しだけ表情を動かす。

「了解しました」

 返事をすると、ロングソードとコンバットナイフを交換する。スルメイラは俺から受け取ったロングソードの柄を握りしめる。

 しばらく歩くと再びメタボキャットが現れた。スルメイラが右手で剣を構えたので俺は一歩引いて様子を見ることにした。飛びかかってきたメタボキャットを何故か左手で殴り飛ばしたが、しかし次の瞬間彼女は・・・

「イッケー!エクスプロージョン」

 スルメイラがジタバタと起き上がろうとしているメタボキャットに向け手をかざすと、彼女の手の周りに赤く輝く魔法陣が発生した。その姿に一瞬見惚れてしまい止めるのが遅れた。

「ちょい、お前、ま、待てって!」

 そう言ったところで、魔法陣から巨大な炎の塊が射出された。瞬く間にエネルギーが膨張し、メタボキャットの足元、いや、ひっくり返っているので手前?に叩きつけられ、轟音とともに爆風が起きた。

 ドッゴーン!

 一撃でメタボキャットをバラバラにして吹き飛ばし、肉片を壁に叩きつけ霧散した。
 その爆風で俺もスルメイラも吹き飛ばされ、俺がスルメイラのクッションになる形で床を転がった。

 俺とスルメイラは絡み合って転がり、ありえないことに俺の顔はスルメイラの尻に埋まっていた。倒れた俺の頭に彼女の尻がある。文字通り尻に敷かれた・・・
 く、苦しい・・・

 スルメイラの魔法ってすごい威力だし、魔法を発動した時はかっこよかったよ・・・それにこいつ、着痩せするのかな?意外とデカいな・・・いや、そこじゃないだろ!なにしやがんだこのばかは!剣って言ったのに殴ったあと何故魔法?それも至近距離で味方を巻き込むような強いのをぶっ放つかな!と心の中で悪態をつくしかなかった。

 そんな俺の心の唸りを知ってか知らずか、何事もなかったかのように立ち上がると、俺に手を差し伸べて起こしてくれた。

「できるだけ消費魔力を抑えましたよ!」

 スルメイラは胸を張りドヤ顔で言い放ったが、自信満々な彼女の説明に、俺は思わずため息をついた。

「いや、魔法は使わないでって言っただろ・・・」

「さっきも言いましたが、小さな魔法は苦手ですが、大きな魔法の方が消費魔力が少ないんです。だからできるだけ消費を抑えて、効率的に倒しました!」

 スルメイラは自信満々だが、俺は頭を抱えたくなる。確かにエクスプロージョンは威力抜群の一撃だ。だが、俺が求めたのはあくまでも、スルメイラが剣で戦う姿であり、彼女の行動はそれとは違う。

「もう一度だ。今度は剣で攻撃してくれ。魔法は俺の許可がない限り使うな」

「え?・・・剣だけで?」

「そうだ。誤解や勝手な判断をしないで、俺の指示に従ってくれ。剣での戦いを見たいんだ」

 スルメイラは渋々という感じで剣を握り直したが、なんとなく不満そうな表情をしている。とはいえ、ちゃんと戦わせないとこの先困るのは俺たちだ。

 頭が痛くなりながらも、次の魔物との遭遇に備えて進むことにした。
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