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第23話 ファミリアのこと
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2階層の魔物を俺一人で倒したいのでスルメイラに指示を出すことにした。
今の実力を確認したい。
また、武器としてサブウェポンのコンバットナイフを渡す。
「基本的に1体を相手にする時は俺がやるから、スルメイラは助けを求めなければ手を出さないで。それと、もし他の魔物が出てきたらその時は対処してくれ」
「了解しましたボス!」
なぜかかっこよく敬礼するスルメイラ。そして釣られて頷いて応礼する俺氏・・・
スルメイラの敬礼はあまりにも自然で違和感がなかった。あるとすればヘルメット越しなことだろうか。
俺はそのやり取りに少し赤くなるも、2階層を歩きだす。
しばらく歩くと目の前に大きな蝙蝠が現れた。
この大蝙蝠はとにかく素早い。
空を飛び回っているので、攻撃を当てるのは至難の業だった。上を見ながら戦わないといけないので、動きを捉えるのが難しく感じた。
何度か突進をかわしていたが、足元の石に引っかかって転倒してしまった。その隙に大蝙蝠の攻撃をまともに受け、地面を転がされた。
連続で攻撃を受けるうちに、体力は徐々に削られていくが大したことはない。大きな怪我はないものの、痛みから焦ってしまい声を出そうとするも、何度目かの攻撃で喉をやられてしまい声が出なかった。
スルメイラは困った様子でこちらを見ていたが、何故か俺が助けを求めるまで手を出さないでと頼んだことを頑なに守っている。
なんとか反撃のチャンスを狙っていた俺だったが、次の攻撃が腹に直撃し、さらにダメージを受けた。あまりの痛さに意識が遠のきそうになったその時、俺は少し大げさだが最後の力を振り絞り、「反射」と呟く。
すると、大蝙蝠が空中でバランスを崩し、そのまま地面に墜落した。声にはでなかった気がするも、【反射】は発動したようだ。
俺はすかさずロングソードを叩き込み大蝙蝠を倒した。
「なんで助けてくれなかったんだ?」
喉の痛みが引き、息を整えた後スルメイラに聞く。
「助けを求めるまで手を出さないでと言ったじゃないですか!ほら、あたしって言われたことをちゃんと守る女だよ!ちゃんと守ったでしょ!」
スルメイラは当然のように答えた。
俺はそう言ったし、確かに指示を守ってはいるが、それだけだ。
だが、大蝙蝠との戦いは想像以上に厳しい戦いだった。スルメイラがもっと自主的に動いてくれたら良いが、どう考えても典型的な【指示待ち】タイプであることに気が付いた。言われたことしかやらない性質があり、こちらが具体的に指示を出さないと何も行動しないようだ。
何と言ったかな?ゆとり教育の弊害?いや、違うが似ている。
「そういうことか・・・」
なんとなく悟った俺はため息をつきながらスルメイラへの対策を考え、それを伝える。
「もし俺が攻撃を受け、ピンチになったと感じたら、一度は確認してくれ。『助けはいらない』と言わなければ、その時は助太刀してくれ。」
彼女は真剣に頷き、その後は準備万端といった様子で構えを取った。次の魔物との戦いに備え、俺たちは再び進んでいく。
俺は【ファミリア】についてほとんど何も知らなかった。正直、縁のないものだと思っていたし、それもあり知ろうともしていなかったからだ。
けれど、スルメイラとのやり取りを通して少しずつ理解し始めた。
能力のあるファミリアほど召喚された当初は何もできないと後から知った。力を引き出すためには、こちらの指示やファミリアの成長が必要だということだ。つまり、スルメイラの能力を余す所なく使いこなすには時間と経験が必要だ。
敵をバッタバッタと倒し、背中を預けられるようになるには時間がかかると言う事だ。
つまり現時点では無条件に頼れる存在ではないということになる。
「最初から完璧を求めるのは無理なんだね・・・」
俺は自分に言い聞かせながら、ファミリアについてもっと学ぼうと心に決めた。スルメイラもきっとこれから成長し、頼れる俺の相棒となっていく存在なのだろう。
しかし、俺には【今】が大事だった。
今の実力を確認したい。
また、武器としてサブウェポンのコンバットナイフを渡す。
「基本的に1体を相手にする時は俺がやるから、スルメイラは助けを求めなければ手を出さないで。それと、もし他の魔物が出てきたらその時は対処してくれ」
「了解しましたボス!」
なぜかかっこよく敬礼するスルメイラ。そして釣られて頷いて応礼する俺氏・・・
スルメイラの敬礼はあまりにも自然で違和感がなかった。あるとすればヘルメット越しなことだろうか。
俺はそのやり取りに少し赤くなるも、2階層を歩きだす。
しばらく歩くと目の前に大きな蝙蝠が現れた。
この大蝙蝠はとにかく素早い。
空を飛び回っているので、攻撃を当てるのは至難の業だった。上を見ながら戦わないといけないので、動きを捉えるのが難しく感じた。
何度か突進をかわしていたが、足元の石に引っかかって転倒してしまった。その隙に大蝙蝠の攻撃をまともに受け、地面を転がされた。
連続で攻撃を受けるうちに、体力は徐々に削られていくが大したことはない。大きな怪我はないものの、痛みから焦ってしまい声を出そうとするも、何度目かの攻撃で喉をやられてしまい声が出なかった。
スルメイラは困った様子でこちらを見ていたが、何故か俺が助けを求めるまで手を出さないでと頼んだことを頑なに守っている。
なんとか反撃のチャンスを狙っていた俺だったが、次の攻撃が腹に直撃し、さらにダメージを受けた。あまりの痛さに意識が遠のきそうになったその時、俺は少し大げさだが最後の力を振り絞り、「反射」と呟く。
すると、大蝙蝠が空中でバランスを崩し、そのまま地面に墜落した。声にはでなかった気がするも、【反射】は発動したようだ。
俺はすかさずロングソードを叩き込み大蝙蝠を倒した。
「なんで助けてくれなかったんだ?」
喉の痛みが引き、息を整えた後スルメイラに聞く。
「助けを求めるまで手を出さないでと言ったじゃないですか!ほら、あたしって言われたことをちゃんと守る女だよ!ちゃんと守ったでしょ!」
スルメイラは当然のように答えた。
俺はそう言ったし、確かに指示を守ってはいるが、それだけだ。
だが、大蝙蝠との戦いは想像以上に厳しい戦いだった。スルメイラがもっと自主的に動いてくれたら良いが、どう考えても典型的な【指示待ち】タイプであることに気が付いた。言われたことしかやらない性質があり、こちらが具体的に指示を出さないと何も行動しないようだ。
何と言ったかな?ゆとり教育の弊害?いや、違うが似ている。
「そういうことか・・・」
なんとなく悟った俺はため息をつきながらスルメイラへの対策を考え、それを伝える。
「もし俺が攻撃を受け、ピンチになったと感じたら、一度は確認してくれ。『助けはいらない』と言わなければ、その時は助太刀してくれ。」
彼女は真剣に頷き、その後は準備万端といった様子で構えを取った。次の魔物との戦いに備え、俺たちは再び進んでいく。
俺は【ファミリア】についてほとんど何も知らなかった。正直、縁のないものだと思っていたし、それもあり知ろうともしていなかったからだ。
けれど、スルメイラとのやり取りを通して少しずつ理解し始めた。
能力のあるファミリアほど召喚された当初は何もできないと後から知った。力を引き出すためには、こちらの指示やファミリアの成長が必要だということだ。つまり、スルメイラの能力を余す所なく使いこなすには時間と経験が必要だ。
敵をバッタバッタと倒し、背中を預けられるようになるには時間がかかると言う事だ。
つまり現時点では無条件に頼れる存在ではないということになる。
「最初から完璧を求めるのは無理なんだね・・・」
俺は自分に言い聞かせながら、ファミリアについてもっと学ぼうと心に決めた。スルメイラもきっとこれから成長し、頼れる俺の相棒となっていく存在なのだろう。
しかし、俺には【今】が大事だった。
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