イレギュラーから始まるポンコツハンター 〜Fランクハンターが英雄を目指したら〜

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第13話 死亡宣言

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 俺は痛む左腕に制服の上着を慎重にかけると学校へ向かった。

 歩くたびにズキズキとした痛みが走るが、なんとか我慢できる範囲だった。学校にはいつもの日常が目の前に広がっているはずだが、心の中には言い知れぬ不安が渦巻いていた。

 遅刻寸前で教室に駆け込もうとしたその時、クラスメイトたちが一斉に体育館へ向かう姿が目に入った。俺はその後ろ姿をぼんやりと見つめていた。クラスメイトたちが次々と体育館へ向かう様子を見ながら、隣のクラスの生徒が最後に出てくるのにぶつかった。

「何かあったの?」

「誰かがダンジョンで死んだらしいんだって。それで緊急の集会があるみたいだぜ」

 隣のクラスの生徒に尋ねると、周りに聞こえないようにそっと耳打ちされた。俺は森雪さんのことが頭をよぎり、焦りが募った。

「森雪さんじゃないよね?気絶しているだけだと思ったけど、まさかね?」

 そう自分に言い聞かせたが、その死んだ者が自分のことだとは微塵も思わなかった。

 急いで荷物を教室に置き、はやる気持ちを抑えながら体育館へと足を運ぶ。体育館に入ると、既に多くの生徒たちが整列し、ざわめきながら何かを待っている。俺は最後に体育館に入り、クラスの列の最後尾にひっそりと並んだ。ちらりと森雪さんの姿が見え、彼女が無事であることに胸をなでおろした。

 やがて、教頭が壇上に現れ、厳しい表情で集会を始めた。

「皆さん・・・残念なお知らせがあります。」

 その言葉に、心臓が跳ねるように脈打ち、不安が一層募る。

「校長先生から、お話があります。」教頭の声に続いて、校長が壇上に上がり、真剣な顔つきで話し始めた。

「実は、ある生徒がダンジョンで命を落としたことが確認されました。遺体の一部と装備だけが回収され、残念ながら遺体の大部分は発見できませんでした。その生徒の名前は・・・3年3組の市河銀治さんです。」

 一瞬、体育館全体が静まり返った。俺の心臓は一瞬止まったような感覚に陥り、全身に冷たい汗がにじんだ。まるで自分が幽霊となって見守るかのように、その場の全てが現実感を失った。

「おい、お前がダンジョンに誘ってたよな?どういうことだよ?」

 突然、新司がクラスの体育会系の男子たちに詰め寄られた。その言葉に周囲のざわめきが一層大きくなる。普段の彼らはチャラい新司とは距離を置いていたが、彼らはここぞとばかりに詰め寄った。

「嘘・・・いないなとは思ったけど・・・い、市河君が・・・」

 森雪さんが泣き出し、他のクラスメイトたちに慰められている姿が目に入った。中には狼狽えている女子や、気絶して倒れる生徒もいた。

「静粛に!」

 校長が咳払いをして一喝すると、再び静寂が訪れた。

「市河さんの冥福を祈り、黙祷を捧げましょう・・・黙祷!」

 校長の言葉に続き、全員が一斉に頭を下げた。俺はその場に立ち尽くし、心の中で何かが崩れ落ちる音を感じた。違う・・・俺は此処にいる!と叫んで手を挙げようとしたが、先を越されてしまった。

「校長先生、彼はここにいます!」

 隣のクラスの生徒が手を挙げて叫んだ。その瞬間、全員の視線が俺に集中し、驚きと混乱が渦巻いた。

「市河君!」

 森雪さんが泣きながら駆け寄り、俺に抱きついてきた。

「生きていたんだ・・・本当に良かった・・・!」

 彼女の声が震え、俺の心にも安堵が広がった。そしてその目から大粒の涙が流れた。

 一方で新司は混乱し、俺に向かって言い訳がましく叫んだ。

「俺はお前をハメるなんて知らなかったんだ・・・!俺のせいじゃない、俺は何も知らないんだ!」

 俺の左腕を見ながら必死に言い訳を続ける。

「君、何を言っているんだ?ちょっと来なさい!」

 校長が厳しい声で新司に問いただしたが、新司は俺を突き飛ばして逃げ出すように体育館の出入り口に走っていった。

「待ちなさい!」

 校長が叫んでも、新司は一目散に駆け出していった。

 事情を知らない生徒たちは、口々に好き勝手なことを言い始めた。

「じゃあ誰が死んだんだよ?」「生きてるやつを勝手に殺すなよ!」「冗談は教頭のハゲ頭と校長のメタボ腹だけにしとけよな!」などの言葉が飛び交い、体育館は一時的にカオスと化した。

 森雪さんが俺に抱きついて泣きながら言った。

「姿が見えなかったから心配したの・・・生きていてよかった!」

「市河君、校長室に来てください。」校長が厳しい表情で俺に命じた。

「後は任せました」

 次に教頭にこの場を押し付け、俺を校長室に連れて行くが、その後ろ姿を見た生徒の間からは様々な声が聞こえた。
「校長、逃げたな」とか「また騒ぎになる」との声も。

「行こう、銀治君。」

 森雪さんが心配そうな目で俺を見つめ、手を握ると引っ張っていった。
 正確には手を掴んだ・・・まるで小さな子供が何処かに行かないように・・・

「うん、行こう。」

 俺は小さく頷くと森雪さんと共に、校長の後を追い校長室へ向かうことにした。心の中でこれから待ち受ける真実に向き合う覚悟を固めながら。
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