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第11話 密かに抜け出す

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 レイド戦参加者の一部がボス部屋の中で必死にドロップ品を集めているのを見て、複雑な思いを胸にこの場を離れることにした。
 俺を助けに来たのではなく、俺が持っていた荷物を回収したかっただけだ。
 俺が死んでいる前提で、死体があれば持ち帰る程度の話だった。

 元々俺が持っているスキルにより、少しずつ怪我は癒えているが、脚の痛みや骨折はまだ治らない。
 腕もすこしずつ再生しているが、ニョキニョキニョキと、一気に生えるのではなく、数時間から1日必要なのかな?と思う速度だ。
 その理由までは分からないけど、再生するだけでもありがたい。
 いや、スキル名から再生すると信じている。
 腕より脚の回復の優先度が高いと思うが、腕にリソースが取られているのかよくわからないが、骨の方は遅々としており、段々くっつこうとしている感じだ。もどかしい。

 俺はというと、結局のところスルメイラにおんぶされていた。
 彼女は俺の体をしっかり支え、背中に乗せてくれている。ハーミットを発動したが、やはり触れている彼女にも効果があった。
 女性に言うことではないが、俺なんかより力があり、軽々と俺を運ぶ。

 スルメイラの背に乗り周囲の状況を静かに見守った。

「大丈夫ですか?痛くないですか?」

 スルメイラが心配そうに聞いてくる。彼女の優しい声に少し安心した。格好は残念だが、先ほどの残念な自意識過剰な発言がなくなった。
 遅いと文句を言いたいが、ようやく状況を飲み込めたようだ。

「ああ、なんとか。」

 俺は少し声を詰まらせながら答えた。周囲の音が静まり返っているのを感じ、緊張が高まる。

 ボス部屋の入口近くで周囲を伺い、誰もいないことを確認した。スルメイラの力強い腕に支えられながら、この場を去ってダンジョンの入口に向かうことにした。

「もしドサクサに紛れて変なところ触ったら落としますからね。」

 スルメイラが冗談を言ってきたが、今回は明らかに冗談だと分かる。

「そんなことしねぇよ!俺を何だと思っているんだ!」

 俺は少し焦って反論した。

「ええ、盛りのついた猿・・・って言うと思ったの?御主人様はそんな人じゃないよね?」

 彼女の言葉に思わず苦笑いしたが、すぐに真剣な表情に戻った。

 やがて、誰にも悟られることなく、ボス部屋の入口に到着した。ボス部屋の入口には誰もいなかった。

『今は関わり合いたくないな。』

 俺は心の中でつぶやき、スルメイラに静かに指示を出した。

「入口に向かって欲しい。急ごう。」

「わかりました。でも魔物の気配には気をつけてください」

 彼女は頷くと慎重に動き始めた。

 俺は彼女の背中にしっかりとつかまり、周囲を見回しながら進んだ。もし見つかれば、せっかくの逃げ道が台無しになってしまうので心臓がドキドキしている。

 見目麗しい女性の背中に背負われていてドキドキしているのではなく、見つからないかな?とだ。
 女背負われているシチュエーションは帰にしたら負けだと思う。

 30分ほどで出口が見えてきた。正確には9階層へ上がってから、最短で9階層への入口、つまり転移板の方に進んでいた。魔物と遭遇することもなく進んでいたのだ。

 無事に転移板があるところが見えてきた時には安堵の息がこぼれた。
 周囲に気を配りながら、無事にダンジョンを抜け出すことができるのか心配しながらだったから、緊張感ら来たのだ。

 そして次の指示を出した。

「さあ、急ごう!」

 俺は彼女に声をかけ、二人で静かに出口へと向かったと言えば聞こえは良いが、つまるところスルメイラに背負われている情けない男である。

 9階層の転移板にたどり着くと、直ぐに1階層に転移するとダンジョンの出口が見え、スルメイラに背負われたまま俺は安堵の息を漏らした。
 骨折はまだ完全に治っていないが、彼女のおかげでなんとかここまで来られた。外の夜風がひんやりと肌に触れるのを感じた瞬間、急に体がふわっと軽くなった。

「ん?!」

 突然の感覚に驚き、短い落下感に襲われた。支えを失った俺は前にぐらりと傾き、右手をついて体操選手のようにジャンプして華麗に着地ポーズを決めた。

「ふぅ・・・!決まったな!こんなことが出来るなんて我ながら・・・ って、そこじゃないだろ!スルメイラ!何してんだよ!」

 思わず自分に陶酔してスルメイラに毒づいたが、周囲を見回すも彼女の姿はない。ふと気になり視線を下に向けると足元にスルメイラのカードが落ちているのが目に入った・・
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