イレギュラーから始まるポンコツハンター 〜Fランクハンターが英雄を目指したら〜

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第8話 ヘルム・・・

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 俺は手に持ったカードをじっと見つめていた。カードに施された装丁というか、その表面には古風な?いかにもと言った枠が描かれており、否応なしに期待が膨らむ。
 そこには神々しさを感じるほどの美しい女性の姿が描かれていたんだ。
 少し憂いをはらんでいるが、それがまた儚げさを醸し出しており良い感じだ。
 どストライクではないけど、街を歩けば殆どの男が振り向くレベル。

 スルメイラ・・・カードに書かれている彼女の名前を読み上げ、召喚の儀式を始める。
 儀式といっても、手に触れた状態でカードに書かれている名前を呼ぶだけだ。
 憧れのファミリア、それが今俺のモノになろうとしている。
 いよいよ俺もサモナーの仲間入りだ。

 俺の知る限り、人の形をしたカードなんてこの10年はドロップしていない。
 少なくとも公にはされていないはずなんだ。
 学校の図書館には、定期購読されている週刊ハンターの雑誌が置いてあるので欠かさず見ているが、そんな記事を俺は見たことがない。

 俺はカードについて見た目にも、人の姿であり期待に胸を膨らませる。

 誰も観ていないことを良いことに、中二病を患っているような決めポーズを取りつつ叫ぶように名を告げた。

「来い、スルメイラ!」

 少し上ずったけど声を張り上げると、カードから眩い光が放たれた。
 その瞬間、女性がその場に現れた。俺の目の前に現れたのはアニメによくあるような幼女ではなく、俺好みの大人で・・・ボン・キュッ・ボン!だ。ドレスアーマーを着た彼女は、少し不安そうな表情?をしていた。
 ま、まさか・・・失敗したのか!?

「ヘルム・・・ヘルムが・・・どこに・・・!」

 彼女は周りを見回し、焦っていた。

「スルメイラ?落ち着いて!君は何を探しているの?」

 俺はつとめて優しそうに声をかけた。召喚されて混乱しているのかな!?そうだよね?

「私のヘルムがない・・・ないと・・・力が出せないの!犯される・・・」

 力が出せないの!の後は声が小さくて聞こえなかったが、彼女は困ったように言う。本当に大丈夫か?

「それなら、一緒に探そうか。きっと見つかるよ。でも、もし見つからなかったらどうするの?」

 俺は真面目に問うたけど、その瞬間、彼女は俺にしがみついてきた。
更に驚いたことに彼女は、震えながら膝を折り、この場で崩れ落ちてしまった。

「ちょっ、そこはまずいって!」

 彼女は顔を赤らめて、俺に抱きついて泣き始めた。崩れ落ちてしがみついているから、非常にまずい。

「大丈夫だよ、そんなに心配しないで。」

 俺は彼女を引き剥がそうとしたが、彼女はまだ俺のお腹に顔を埋めたままだった。あっ!股間が涙で濡れていくのが感じられる・・・ちょっ!あかんって!

「もう、恥ずかしいのに・・・顔を見ないで・・・」

 彼女は泣きながら言ったが、いやいや、貴女のお顔は股間に埋まっているから見えないよ!でもその顔をちゃんと見たい。

「顔を見ないように抱きしめるから、安心して。」

 俺は顔を見ないようにしながら彼女をなんとか立ち上がらせると、優しく抱きしめて背中を擦って落ち着かせようとした。
 これなら俺が顔を見れないから彼女も少しは落ち着くだろうと思ったんだ。

 その時になりドレスアーマーが金属ではなく、柔らかい布で出来たドレスのような服ということに気づいた。スルメイラの服はとても柔らかく、触れると心地よかった。そして女性特有の柔らかさと、甘ったるい香り?が鼻腔をくすぐる。

「これ、ドレスアーマーじゃなくて柔らかいドレスなんだね。」

 俺は驚きながら言ったが、まだだめなようだ。

「ええ・・・でも恥ずかしい・・・」

 彼女は少し顔を赤くしながらこたえたが、やっと落ち着いてきたようだ。

「さあ、一緒にヘルムを探そう。きっと見つかるよ。俺の後ろをついてきて」

 俺は彼女に優しく言ったが・・何かが違う・・・おかしい・・・

 俺の中ではこの召喚は、凛々しく格好良い女騎士が現れ、【マイマスター、御命令を】とか言って片膝をつき、【俺の背中を預けるぞ!】と主従関係を結ぶ、そのようなことを思い描いていて、決まったな!とか心のなかでどやっているはずだった・・・

 不安しか感じられない・・・美人だが、残念さん?だよね・・・
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